【ヒルコ】障害を持ち生まれ、恵比寿神となった神の神話、解釈、考察など

炎と鍛冶の神・ヘパイストスの神話

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ヘパイストス(ヘーパイストス)は、ギリシャ神話に登場する、炎と鍛冶を司る神。ギリシャ神話における主要な神々「オリュンポス十二神」のなかの一柱でもあり、最高神ゼウスと、その姉であり正妻でもある女神ヘラとのあいだに生まれた最初の子どもでした。

しかしヘパイストスは、生まれつき足が湾曲しており、このことに怒った母ヘラによって、海に打ち捨てられてしまいます。ですが運良く、ヘパイストスは海の女神テティスとエウリュノメに拾われ、その後長じて、さまざまな魔法の道具を製作する、優れた職人となりました。そのことを認められ、オリュンポス十二神に名を連ねることとなったのです。

洪水型兄妹始祖神話

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「洪水型兄妹始祖神話」とは、世界的規模で存在する神話の類型の一つです。太古、大洪水が起こり、ほとんどの人類が滅亡してしまった後、極めて少数の男女だけが生き残り、その男女が婚姻して子を為し、今の人類が繁栄した、とするものです。そしてその際、生き残った男女が、兄妹、あるいは母子とされる場合があるのです。

そしてこのとき、兄妹などが生んだ最初の子が、人間ではなく、蛇や蛙であった、とするパターンが多く見られます。こうした伝承は、日本の八丈島や、八重山諸島の鳩間島、さらに台湾のアミ族などに伝わっています。

ヒルコがモチーフとなった作品

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『古事記』などに見られるヒルコの伝説は、学術的な研究の対象となるのみならず、後世の作家や芸術家たちにも、多くのインスピレーションを与えてきました。ここでは、そうしたヒルコをモチーフにした作品の例をご紹介いたしましょう。

映画「ヒルコ/妖怪ハンター」

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『ヒルコ/妖怪ハンター』は、1991年公開のホラー映画。漫画家・諸星大二郎の人気シリーズ「妖怪ハンター」中の数話をベースとしたもので、主人公の考古学者・稗田礼二郎を沢田研二が演じています。この作品において、ヒルコは古代の古墳に封印された妖怪であり、登場人物に取り憑いて怪物化させてしまうモンスターとして描かれています。

原作を大胆に翻案したこの映画は、当時大きな話題を集め、高度な特撮技術や、鬼気迫るスリリングな展開も高く評価されました。その他、ヒルコに関連があるとされる妖怪にご興味のある方は、以下の記事をご参照ください。

ヒルコ研究の諸相①:言葉を巡って

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では次に、謎多きヒルコに関して、今日に至るまでどのような研究がなされてきたか、そのいくつかの例をご紹介しましょう。まずは、「ヒルコ」という名前そのものを巡って繰り広げられた研究についてです。前節では、「ヒルコ」を漢字で表した場合の解釈について取り上げましたが、さらに別の視点も存在しています。

①古代琉球語「ビールー」説

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「ヒルコ」という名前は、「不具児」を意味する古代琉球語「ビールー」と関連しているのでは、という説です。なぜ日本で編まれた歴史書である『古事記』のなかの記述を、古代琉球語によって読み解くのか、という疑問もありますが、このように神名の解釈に古代琉球語を用いるのは、ときどきあることです。

その理由としては、現在は失われてしまった古代日本語が、古代琉球語のなかに保存されている、という現象が起こっているからです。これは「方言周圏論」と呼ばれる説で、方言はあたかも同心円を描くかのように広がっていくという仮説であり、著名な民俗学者・柳田国男の『蝸牛考』などにも見られる説です。

②病名説

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「ヒルコ」とは、かつての病名に由来する名前なのではないかという説です。これは平安時代の漢和字典である『新撰字鏡(900年ごろに成立)』『倭名類聚鈔(930年ごろに成立)』の記述に基づく仮説です。これらの漢和字典の中には、それぞれ以下のような項目が記載されています。

「痿、痺也。不能行歩也。足比留牟。」(引用:『新撰字鏡』)

「痿痺…… 俗云比留无夜末比。不能行也。」(引用:『倭名類聚鈔』)

このうち、『新撰字鏡』の「比留牟」は「ひるむ」という当て字です。また、『倭名類聚鈔』の「比留无夜末比」は「ひるむやまい」という読みであり、いずれも「痿」という字の解説として「ひるむ」という言葉を載せています。この「ひるむ」が「ヒルコ」の語源となったのではないか、とする説です。

ヒルコ研究の諸相②:「哀れ」なるヒルコ

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続いては、奈良・平安期にすでに行われていた『古事記』及び『日本書紀』の研究の流れと、そうした研究及び同時代の文学作品などにおいて、ヒルコの存在がどのように受容されてきたか、という変遷についてご説明いたしましょう。

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