このように、昔から胸を強調する技法や衣装は存在していました。現代になってそれがいざ衆目に晒されると、また別の側面も出てきます。次の項目では、現代に現れた「乳袋」はどういう目で見られているのかを解説してきます。
乳袋は性的な表現として批判されることも
現実ではありえないからこそ批判される、という点は先述しましたが、中には「現実的ではない」という意見以外の批判も存在しています。一体どういうことなのか、実際にあったことも交えて見ていきましょう。
乳袋を不快に思う人も多い
乳袋はイラストや被写体をより美しく見せる、という表現技法のうちの一つである、ということはお話しましたが、逆にその「美しく見せるための不自然な表現」に不快感を覚える人も一定数存在します。批判的な意見は、大きく分けて二つあります。
不自然すぎる表現が嫌い
こちらは何度か述べていますが、現実的ではないその不自然さこそが不快感の元である、という意見です。具体的には「下着のサポートが行方不明」「生地の素材感が台無し」といった現実感を重視する人からの声が多いです。
性的な特徴の強調
胸部の異常な強調によって、女性の性的搾取に繋がるのではないか、という意見です。非常に長くなるので簡潔に説明しますと、「性表現が強調されることによって女性を客体化、つまり性的な道具として表現してしまうのではないか」ということですね。
人気バーチャルYouTuber「キズナアイ」も性的な表現?
バーチャルユーチューバーのキズナアイがノーベル賞の解説としてNHKの「ノーベル賞 まるわかり授業」という特別サイトに登場したことがインターネットで話題となりました。しかし、この事は後日まったく別の方向でもう一度話題となりました。
女性弁護士の方がTwitter上で、性的に強調されているイラストのキズナアイをNHKのノーベル賞サイトで使用することに苦言を呈し、そのことが引き金となって「キズナアイのイラストを利用した性的搾取ではないのか」と議論になりました。
性的な表現の線引きは難しい
実際のところ、「乳袋が性的な表現を強調する」という見方は正しいものです。技法としての意図がまさしくそれに当たります。しかし、「乳袋が描かれている全てのイラストが性的搾取を促すか」と問われればそうではありません。
古代ギリシヤの彫像の解説でも述べましたが、技法を使用する目的はあくまでも「美しく見せる事」にあります。技法によって被写体の性的な表現が強調されていたとしても、それは基本的に画家や彫刻家達による「美しく見せるための努力」なのです。
乳袋がついた服が現実になった!HEART CLOSETが開発
アパレルメーカーの「HEART CLOSET」が乳袋が付いたシャツを販売する、として話題になりました。ここまで「現実にこんな服が存在するわけない」と言われていましたが、ついに現実に登場することとなった訳です。
クラウドファンディングから始まった
元々「HEART CLOSET」はファッションに悩む胸の大きな女性のための服を作るために、クラウドファンディングで資金の募集を始めました。その結果、目標金額の30万円に対してなんと270万円もの募金が集まりました。同じことで悩む女性は多かったようです。
メーカーは乳袋という言い方はしていない
コスプレイヤーの方の中にも、「乳袋シャツ」を愛用している方は多いようですが、「HEART CLOSET」は乳袋という呼称は用いていません。あくまでも、乳袋という呼び方はインターネット発祥の用語である、ということをお忘れなく。
批判されながらも愛され続ける乳袋
「乳袋」という言葉が世の中に登場してから約8年、インターネットのイラスト界隈で親しまれる一方で、批判する意見もありました。しかし、技法としての乳袋は古代ギリシアの時代から存在する「美しく見せるための努力」です。「綺麗に見られたい」という二次元と現実の変わらない想いを叶えるために「乳袋」という技法は存在しているのです。