そうして一人憑り殺すたび、一人の亡霊が成仏し、入れ替わる構造になっています。だから彼らはずっと「七人」のままなのです。
水と女性の関わり
濡れ女だけでなく、磯女、濡れ女子、ローレライ、マーメイド…。国境を選ばず、水辺には女性の怪異が多いものです。
女性に秘められた神秘性、出産や月経など、自然のリズムに大きく左右される機能、人に恵みと豊かさをもたらすイメージからくるものでしょう。そしてそれは水の性質とさくさんの共通点を持っています。
生命を生み育む
女性という性別の最大の特徴は、妊娠そして出産です。新たなる生命を育み、生み出すことのできる存在。水もまた古来より生命の源であり、命を繋ぐ重要なものであるとされています。
水を連想させる怪異が「母」の性質を持つのも、羊水や母乳を含め、水の連想からくるものでしょう。また清らかなイメージから、若い女性であることがほとんどです。
両者の持つ二面性に共通点がある
水のもたらすものは良いことだけではありません。たとえば豪雨や鉄砲水で、人の生活を一瞬にして破壊しつくす激しさも持ち合わせています。
女性もまた同じで、豊かで美しい反面、怒りや恨みを抱いた時の恐ろしさ、苛烈さは凄まじいものです。その極端なまでの二面性は、まさに怪異にふさわしい特徴といえます。
蛇は水をつかさどる生物
また、水と蛇との関わりです。蛇は世界各地で豊穣の象徴として信仰されてきました。人々は脱皮を循環するエネルギー、再生、生命と考え、またうねる姿を川や水の流れそのものと重ねてきました。
蛇は陸生生物でありながら泳ぎ、また海には海へびがいることもあって、水の怪異と強く関連づけられることになったのです。
他にもあった!日本の蛇妖怪エピソード
妖怪といっても決しておそろしいだけではない、中には人間に深い愛情を示してくれる怪異も。半人半妖ばかりでなく、いろいろな外見的特徴を持っている点にも注目です。
蛇帯
蛇帯と書いてじゃたいと読みます。これは帯に宿った女性の嫉妬心が転じたもので、中国からの伝承がルーツとされています。
嫉妬の対象となった男性を絞め殺そうとする、女の狂おしい心そのものから生まれた怪異です。この帯を枕にして眠ると夢に蛇が出てくるといいます。
波蛇
龍であるとも言われる妖怪・波蛇。その正体は荒れ狂う波そのものです。人の恨みつらみをきっかけに生まれたものでなく、自然現象から生まれる絶大なエネルギーが生命を持ち、怪異となりました。
突如現れ大波で船を沈めてしまうとされていますが、それは人間に悪意を持っているからでなく、ただそういう現象であるというだけなのです。
蛇女房
昔、そうとは知らず化け蛇と夫婦になった男がいました。子が生まれた後に正体がばれ、蛇は家を去るものの、子は母を恋しがって泣き続けます。
困った男が蛇の住処を尋ねると、妻はこれを与えてくださいと自分の目玉をくりぬいて渡しました。子は母の気配に喜んで泣き止みます。夫は妻に感謝し、方角と時が分かるようにと寺に鐘を奉納しました。
手負蛇
自分を傷つけた者を決して許さず、どこまでも追い続けるという怪異、手負蛇。ですが執念深い反面、子供の悪意なき所業は許すなど広い心の持ち主でもあります。
ただその場合も腹は立つのか、近くで見ていた大人を「なぜお前が止めなかったのだ!」と八つ当たり的に恨むことがあるそうです。情が深くてどこか人間臭いところが魅力の妖怪です。
水辺で女性を見かけたらそれは濡れ女かも
もしそうなった時、どういう対処をすべきかちゃんと覚えましたか?…充分に警戒しておきましょう。妖怪なんていないと言い切るにはこの世の影は広すぎます。