謎の深海生物テヅルモヅルとは?不思議生物の生態をチェック

この記事をかいた人

テヅルモヅルってどんな生き物だろう?

みなさん「テヅルモヅル」ってご存知ですか?名前だけ聞くと、「えっ何か植物のツルのようなもの?」とか、「新種の”鶴”の仲間かな?」とか思ってしまいますよね。今回はそんな謎の生物「テヅルモヅル」について迫ってみたいと思います。いったいどんな生き物なんでしょう。

テヅルモヅルはヒトデの親戚

「テヅルモヅル」は実はヒトデなどに近い生物で、海のどちらかというと深い水域に生息しています。最近で話題になったのは、2018年3月、昭和天皇が採集されて保管されていた国立科学博物館の標本の中から、新種が106年ぶりに発見されたことでニュースとなりました。それでは、「テヅルモヅル」についてもう少し詳しくみていきましょう。

テヅルモヅルの分類

棘皮動物門の生き物

「テヅルモヅル」は棘皮動物門のクモヒトデ綱に属します。って言われても「棘皮動物っていったい?」って感じですよね。「棘皮動物」は「きょくひどうぶつ」と読みます。名前のとおり身体に棘(トゲ)を持つ生き物たちです。棘皮動物門に属する5つの綱は、それぞれウミユリ綱、ヒトデ綱、クモヒトデ綱、ウニ綱、ナマコ綱となります。「テヅルモヅル」ってヒトデやウニ、ナマコに近いんだな~と思うと、「テヅルモヅル」が見た目はサンゴに近くても、れっきとした生物であることがわかります。

クモヒトデ綱?

「ヒトデならまだわかるけど、クモヒトデっていったい何よ?」って思われる方もいらっしゃられるのではないでしょうか。。。クモヒトデ(蜘蛛人手)は名前の通りヒトデと近しい間柄ですが、特徴として、5本の細く長いクモのような腕を持ちます。何か少しずつ「テヅルモヅル」の見た目に近づいてまいりました。

テヅルモヅルの分類は

「テヅルモヅル」は最終的に言うと、「棘皮動物門クモヒトデ綱カワクモヒトデ目テヅルモヅル亜目」です。厳密にいうと「テヅルモヅル亜目」の中に「テヅルモヅル科」があります。他のクモヒトデと同様に腕が5本あるのですが、その腕が幾重にも枝分かれして、見た目サンゴのような触手を形成しています。

テヅルモヅルの種類

「テヅルモヅル」の種類ですが、なんと約90種類もいます。思っていたよりもとても多いですよね!日本の近海から見つかっているのは、オキノテヅルモヅル、セノテヅルモヅルなどの十数種類が知られています。また、106年ぶりに昭和天皇の採集標本から見つかったあの「新種」は、「トゲツルボソテヅルモヅル」と名付けられました。ここでは、その新種の「トゲツルボソテヅルモヅル」など3種類について画像をご覧ください。

トゲツルボソテヅルモヅル

新種の「トゲツルボソテヅルモヅル」です。昭和天皇が御採集あそばされた標本から新種が見つかった、というのが何ともドラマ性があって、神秘的です。

サメハダテヅルモヅル

「サメハダテヅルモヅル」です。静岡県沼津市にある沼津深海水族館でみることができます。(2018年9月現在)

セノテヅルモヅル

こちらは「セノテヅルモヅル」です。腕の先がくるりんと巻いているのが特徴的ですね。紫色の体表面が神秘的ですが、同じ種類でも違った色をしたものもあります。

テヅルモヅルの生態ってどんなもの?

このように謎めいた「テヅルモヅル」。「テヅルモヅル」が属する棘皮動物自体が生態が解明されていない生き物が多いなかで、「テヅルモヅル」についてもまた、まだ判明していない事が多いのも事実です。ここでは、そんな正体不明な「テヅルモヅル」の研究で判明してきたことを中心にご紹介します。

テヅルモヅルの生態① 特徴

ゴルゴンの頭髪?蛇?

「テヅルモヅル」の代表種に「オキノテヅルモヅル」という種類があります。「オキノテヅルモヅル」は、学名を「Gorgonocephalus」つまりギリシャ神話に出てくる魔女ゴルゴンの頭を意味しています。「テヅルモヅル」は、魔女ゴルゴンの頭のように数百匹の小さな蛇が固まって蠢いているような、そんなちいさなツルが絡まっているような形状が最も特徴的です。

こちらは「オキノテヅルモヅル」です。ブルーライトと相まって、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

手蔓藻蔓(テ、ツル、モ、ツル)

「テヅルモヅル」も実際は「クモヒトデ」と同じ様に5つの腕を持っています。ただ、その腕がさらに何回も何回も枝分かれすることで猥雑になり、先の方が細くなってツルのようになってしまうのです。そのような形状から、「手蔓藻蔓」、手(腕)が蔓(ツル)のように、藻(も)のように、つまり「テヅルモヅル」と名付けられました。

特徴的な腕の形状を見ると「テヅルモヅル」の形態が際立ちます。ただ、基盤となる中心部分はヒトデの仲間だということを感じさせてくれますね。

テヅルモヅルの生態② サイズ

テヅルモヅルのサイズはどのくらい?

「テヅルモヅル」の大きさは、中心となる基盤の部分の直径が約3~10センチメートル、腕の部分の長さが12~40センチメートルです。腕は複雑に絡んでいるので一概には言えませんが、12センチと言えば大体音楽メディアの「CD」の直径ぐらいなので手のひらサイズの大きさですね。40センチと言えば、500ミリのペットボトル2本分なので、そこそこの大きさがあります。また、「腕」を広げると1メートルを越える巨大な「テヅルモヅル」も存在します。

ライトを当てると。。

「腕」を広げると本当に大きく見える「テヅルモヅル」。しかし、ライトを当てすぎるとその腕を縮こめてしまうそう。水深が5mくらいでも水深200m相当の暗さで有名なオーストラリアのバサースト湾でもこの「テヅルモヅル」は多く見られることを考えると、「テヅルモヅル」に重要なのは水深より光の減衰なのかもしれません。

テヅルモヅルの生態③ 生息域

生息している水深は?

「テヅルモヅル」が棲んでいる水深はその種類によって違いはありますが、おおまかに水深約10m~1500mくらいの間の海底で生活しています。深海生物のイメージが強い「テヅルモヅル」ですが、ごく稀にフィッシング愛好家の方に釣り上げられるのは、この広い生息域のため。さまざまな水圧等の環境に耐えうる生命力の強い生き物でもあります。

活動する時間帯は?

「テヅルモヅル」は、昼間は岩の間などの隙間で休息をとっています。つまり、「夜行性」。日が暮れて夜になると、その休息していた場所から這い出してきます。どこに行くかというと、岩石やサンゴ礁の頂上部分で海流が比較的速い場所です。そこで、その長くて入り組んだ「腕」を目一杯のばし、エサがその腕にうまくかかるように待ちます。特徴的な「テヅルモヅル」の腕は、エサを取る際に必要な形に進化してきた結果なのですね。

テヅルモヅルの生態④ エサ

何を主食にしているの?

「テヅルモヅル」がその「腕」を伸ばし、何を主食にしているのかということについては、まだその確定的な科学的見解は出ていないようです。一部の研究者の間では、その「腕」で海中のプランクトンを絡めとって食べている、と考えられています。つまり格子状に腕を張り巡らすことで、海中の動物プランクトンや微生物の死骸などを採集しやすくしているのです。

水族館などで飼育するときは?

実際の海中で何を食べているのかはまだ解明中の「テヅルモヅル」ですが、現在「テヅルモヅル」を飼育している水族館などでは、オキアミが与えてられています。そういった実物を飼育している観察からは、「テヅルモヅル」が動物系のエサを海中でも食していることは容易に推察できます。是非、今後の観察的研究の進展に期待したいですね!

テヅルモヅルって食べられる?

「テヅルモヅル」はひょっとして食べられたりするんでしょうか?「テヅルモヅル」の外見からすると決して食べられるような姿には見えないですが、海の珍味である「ウニ」や「ナマコ」の遠い縁戚なのだからもしかすると。。ある水族館では、「テヅルモヅル」の腕がちぎれ落ちていたのを見つけて、油で素揚げしてみたところ、鉄のように固くて食べられなかったよう。調理方法の工夫次第では今後わかりませんが、現段階では「食べられない」と考えておいた方が良さそうです。

というより、この形を見て食べてみようとトライした挑戦者の精神に全力で拍手したいです。

テヅルモヅルのトリビア

ナイトダイビングの草分け的存在

「テヅルモヅル」は普段は岩の隙間に小さく縮こまって隠れていますが、「夜行性」のため夜になると潮当たりのいいところに出てきて、一面に「腕」を広げます。そんな姿があまり一般的には知られていないことと相まって、ナイトダイビングの知る人ぞ知る見所の一つとなっています。

真っ白に幻想的な羽のように「腕」を伸ばしたものや、濃い紫の色をしたもの、いろいろなタイプがいて見る人を楽しませます。透過性が高めなのでライトを当てると映えますね。日本でも沖縄や奄美大島、尾鷲など各地のダイビングポイントで発見情報が多くあがっているので、近場で見ることができるのもポイントが高いですね。

「腕」の生命力

「テヅルモヅル」はその「腕」が特徴的ですが、この「腕」、意外と簡単に千切れてしまうんです。それが自分で切っている「自切」なのか、そういう構造なのかはわかっていません。驚くのが、この「腕」、千切れた後もしばらくの間は動くことができます。植物のようにかよわく見える「腕」ですが、こんな生命力もあったりします。

テヅルモヅルの生態まとめ

謎の深海生物「テヅルモヅル」。謎といわれるように、科学的にもまだまだ現在進行形で解明が進んでいるわかっていないところも多い生物です。しかし、深海生物ながらも10mほどの水深まで顔を出してくれることから、フィッシングやダイビングのユーザーたちに新鮮な驚きを与えてくれる、興味深い存在です。専門としている研究者も多くはないとのことですが、今後の生態の解明が待ち遠しいですね!

1 / 1