水戸事件とは?事件の概要と赤須正夫社長や会社のその後について紹介

水戸事件をはじめとするこの時代の虐待事件には、「これは虐待だ」という明確な基準が定められていなかったがため、企業や施設内で過度な暴力行為が行われていても、それを行政などに報告する者が少なかったのです。

仮に報告できても、行政が加害者側に事実確認して「指導に為」「問題行動があった」などと言ってしまえば、それ以上追求することもしなかったのです。

保護者の判断も重要

geralt / Pixabay

例えば今回のように知的障害者とともに生活しているような場所で虐待行為があり、その報告を受けて訪問指導などが入っても、保護監督者が事実を隠蔽すると、虐待の事実を確認することができません。

そして家族がこの事実を知っていたとしても、この受け入れ先がなくなってしまった場合、ここに見捨てられたら他に行き場がないと悩み、目を瞑ってしまう場合もあるのです。

後遺症で悩まされる

stevepb / Pixabay

長い間虐待を繰り返し受けた知的障害者は多くの後遺症に悩まされています。救済やケアが遅れると、その傷が深くなり、癒せなくなります。特に1番問題なのは、心の問題です。

危険な自己喪失

虐待や抑圧状態から自己喪失してしまい、自傷行為を始めたり、逆に加害者側に転じてしまう場合もあります。そうならないために自己と戦い、もがいている障害者も大勢います。

水戸事件を受けて「障害者虐待防止法」が成立された!

JillWellington / Pixabay

障害者を食い物にし、不正に金銭を受給、そして虐待によって悪の限りを尽くしたともされる水戸事件を受け、2011年、ようやく「障害者虐待防止法」が成立したのです。

全国の市町村で障害者虐待防止センターの設置が義務となった

MichaelGaida / Pixabay

水戸事件のような障害者に対して差別や虐待を無くすために障害者虐待防止法が成立し、2012年の10月には施行されました。そして現在では、全国の市町村に障害者虐待防止センターの設置が義務づけられています。

障害者虐待禁止法内の保護の対象は、全部で3パターンあり、身体障害や知的障害、精神障害を負う人たちが含まれています。そして反対の虐待者は家族を含めた養護者、施設の職員、職場の上司や同僚などが含まれます。

虐待を発見した国民には通報の義務を課した

Alexas_Fotos / Pixabay

主な虐待の種類は、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待のほか、ネグレクトや経済的虐待も含まれます。実際にこういった事案が社会問題化した事で急ピッチで進められました。

こういった虐待を根絶するには、社会全体で取り組まなければ不可能なため、万が一家庭内や企業内で虐待を発見した場合は、通報する義務を課したのです。そして通報者がその後不利な扱いをされないようにもしました。

通報を受けると家族などの許可なしに調査することができる

Tumisu / Pixabay

なかなか外の世界に明るみになりにくい家庭内での虐待に関して、万が一近隣の住人から虐待の疑いで通報があったとしても、今までは、家族が調査を拒めばそれ以上の調査は不可能でした。

ですが、この法案が可決した後は、家庭内での虐待の通報があった場合、家族の許可なしに調査ができるほか、企業内での虐待であれば都道府県が調査を行うことができます。

水戸事件をモデルにしたドラマ『聖者の行進』について紹介

Free-Photos / Pixabay

主演にいしだ壱成を迎えた野島伸司監督の1998年のヒットドラマとなった聖者の行進は、水戸事件が元になっており、キャストの高い演技が評価されるとともに、その過激な表現に物議を醸しました。

水戸事件を元にしたストーリーとなっている『聖者の行進』

聖者の行進 Blu-ray BOX

Amazonで見る

水戸事件をベースに作られており、社長から知的障害者に対する残虐な虐待や、少女に対する強姦、そして障害者側の証言が認められず、加害者が罪に問われなかったなど、本物の事件にあまりに酷似していました。

放送当時、そのあまりに過激な暴力シーンや卑猥なレイプシーンが多用されており、世間からは賛否両論あり、非常に問題作扱いされてました。

『聖者の行進』では暴力や強姦などの過激なシーンが多い

intographics / Pixabay

通常ドラマが表現する範囲としては、実際に被害にあった人がフラッシュバックしない程度でかつ視聴者から批判されない範囲でギリギリの表現にとどめたりします。

ですが、このドラマの放送当時、そのあまりに直接的で過激な暴力シーンや卑猥なレイプシーンがそのままダイレクトに表現されており、世間からは賛否両論あり、非常に問題作扱いされてました。

苦情が殺到・スポンサーが降りるなど問題作だった

RobinHiggins / Pixabay

当時スポンサーだった現在の三共ヘルスケアは、薬で暴力を肯定できないとの理由で降板し、トヨタ自動車の場合はCMこそそのまま放送されたが、放送期間中のクレジット表記は表示を自粛しました。

そのストレートな演出で人気を誇っていた野島伸司監督の作品の中でもひときわ過激であったこの作品は、その演出方針に多くの疑問の声が上がってました。

この作品のように、大変痛ましい残虐な事件が、のちにそれを元として作品化された事件が多数あります。その中の一つはこちらから確認できます。

水戸事件のような事件は他にもあった?類似事件について

stux / Pixabay

今回の水戸事件のように、虐待がありながら起訴できなかったり、社会の障害者に対する理解や制度がなかったがために悲劇を産んでしまった事件が他にもありますので紹介します。

水戸事件に似た事件①サングループ事件

geralt / Pixabay

1996年に滋賀の肩パット工場「サングループ」内で起きた虐待事件のことで、社長である和田繁太郎は、アカス紙器同様多くの知的障害者を雇用し寮に住まわせていました。

ですが、やはり目的は国からの助成金で、多額の金を着服し、知的障害のある従業員に対して日頃から多くの虐待行為を働いていました。

水戸事件との類似点と違う点

Maklay62 / Pixabay

和田繁太郎社長は、障害のある従業員の銀行口座も管理しており、障害者年金が振り込まれると、それも無断で引き出し着服していた上に、それを担保に複数の融資を申し込み、従業員に借金を追わせていました。

和田社長は逮捕され、実刑判決により1年6ヶ月ほど服役しましたが、それはあくまで横領の罪によるもので、虐待行為においては認められませんでした。

水戸事件に似た事件②白河育成園事件

qimono / Pixabay

こちらは福島県で起きた事件で、水戸事件同様、日頃から多くの虐待行為が繰り返し行われていたほか、手がつけられない入所者には、医師免許を持たない理事長が、大量に薬を投与し眠らせていたことも発覚しました。

当時まだこういった施設が少なく、入所者のほとんどが東京出身でした。そこからも分かる通り、重度な障害者の受け入れ先が少く、多少問題があっても家族としては我慢せざるを得ない現実があったのです。

この事件の異常性

werner22brigitte / Pixabay

この施設の施設長兼理事長の所業はとても常人では理解し難いもので、入所者を薬漬けにしたり、性関係の強要や入所者の所持金を横領したり、なんと保護者に対しても寄付金を強要していました。

その上で日々暴力行為を繰り返し、それをまた施設の指導方針として有効性や正当性を主張していました。ですがその後、この園は入園停止命令後、入所者が退園し、運営困難により廃園しました。

NEXT 水戸事件のような障害者差別はあってはならない