波の荒い日向灘で撒き餌で捕獲され、人の手に触れることなく水揚げされるアジです。捕獲後一週間、まろやかさを増し、脂を全身に行き渡らせるため食事を断ちます。魚の重さが100g以上のものだけが活け締めされ出荷されます。
長崎県の野母んアジ、ごんアジ
野母んアジは一本釣りで水揚げされるもので体長26㎝以上300g以上のものに限り野母んアジの銘柄をつけられる。徹底管理されており釣り上げた後も人の手に触れることなく生簀に放たれ港へ持ち帰られる。ごんアジは250g以上のもので食べ応えのあるアジ。お腹の部分が黄金色に輝いているのでごんアジと呼ばれるようになった。
山口県の瀬付きアジ
まき網漁で漁獲され萩や長門、下関の港に水揚げされるアジです。瀬付きのため漁場から港までが近く、夜に獲れたアジがその日の朝には新鮮な状態で市場に並びます。徹底管理され脂質が10%以上のものが瀬付きアジとして出荷されます。栄養豊富な餌をたくさん食べて育ったアジは脂乗りが良く体つきもふっくらとしています。
島根県のどんちっちアジ
撒き餌で捕獲し浜田漁港で水揚げされる。トロにも勝るというほど脂肪分が多く贅沢なあじわいのアジです。栄養豊富なプランクトンをたくさん食べて育ったどんちっちアジはとにかく旨いと好評です。脂肪分含有量は全国でもトップレベルです。
ご当地アジをご当地醤油で
料理にも刺身にも欠かせないお醤油。お醤油を製造するメーカーは全国に約1500社あります。その中で、これまでにご紹介したアジの産地で親しまれているご当地醤油のメーカーや蔵元をご紹介します。ご当地アジをご当地醤油で楽しんでみてください。
兵庫県
揖保川の流れる町、兵庫県たつの市。醤油製造に必要な原料の生産をしていた事と水質に恵まれていたことから日本三大醤油生産地の一つ、薄口醤油発祥の地として発展してきました。この街で親しまれている醤油のメーカーは、ヒガシマル醤油、日本丸天醤油、蔵元は、末広醤油、足立醸造などがあります。
千葉県
醤油の消費量が多い江戸が近くだったこと、原料が手に入りやすかったこと、江戸川と利根川が運搬に役立ったことなどの好条件だったことで醤油の産地として発展してきました。国内の醤油の出荷量の35%を占めています。醤油メーカーにキッコーマン、ヤマサ醤油、ヒゲタ醤油、ちば醤油、蔵元は、宮醤油店、小倉醤油、タイヘイなどがあります。
大分県
明治時代に自然と水質に恵まれて醤油の製造が盛んになり栄えてきました。甘みの強い醤油が多く、有名醤油メーカーにフンドーキン醤油、富士甚醤油、フジヨシ醤油、蔵元に原次郎右衛門、太田屋醸造などがあります。
愛媛県
原料が手に入りやすく港があり運搬に適していたことから醤油が生産されるようになりました。他の地域と違い組合がなく50社近くの醤油会社がオリジナルの味を守っています。甘口タイプの醤油が多いです。マルマサ醤油、ムラヨウ醤油、タツミ醤油、森文醤油、宇和ヤマミ醤油などが有名です。
宮崎県
宮崎県の焼酎は辛口なので料理や醤油は甘いのが特徴です、刺身などにもよく合い、長友味噌醤油醸造のカネナ醤油。渡辺味噌醤油醸造。ヤマエ食品工業。マルアン醤油。谷口醸造のマルタニ醤油。竹井醸造のエンマン醤油。株式会社宮田本店などがあります。
長崎県
醤油や味噌作りに適した気候に恵まれ栄えた長崎。鎖国時代には出島から樽に詰めた醤油を輸出していた歴史があります。お刺身にもよく合う甘口タイプの醤油が多く有名メーカーにチョーコー醤油株式会社があります。
山口県
再仕込み醤油発祥の地、柳井。特産品に甘露醤油があります。旨味が強く香りが良くとろりとした濃厚な味の醤油です。柳井市内の蔵元に重枝醤油醸造場と株式会社佐川醤油店があります。他にいちまる醤油、萩醤油、ミヨシノ醤油、マルクワ醤油、日本丸天醤油などのメーカーがあります。
島根県
島根では料理によって醤油を使い分けるという家庭が多く各メーカーが取り扱う種類も豊富です。かけ、つけ醤油には再仕込み醤油。煮物には淡口醤油が使われます。また島根の醤油は熱に強いと言われ焦がし醤油などにも適しています。有名メーカーに松島屋、井上醤油店、森田醤油、矢田醤油、紅梅醤油などがあります。
そのほかの種類のアジの旬
ここまでは真アジの生息地や生態、味などについてご紹介してきましたが、アジにはまだ多くの種類があり、その種類は約50種類です。ここでは真アジ以外のアジの旬や特徴、味などをご紹介します。
シマアジの旬
シマアジは別名ヒラアジと呼ばれています。東部太平洋以外の亜熱帯から温帯の沿岸海域に、日本海側では新潟県以南、太平洋側では三陸以南から沖縄あたりの沿岸の岩礁や砂底近くに生息しています。食性は肉食で小魚などを食べます。日本南部での産卵の時期は11月から2月頃です。40時間ほどで孵化する浮遊卵を産みます。
天然物はとても希少
シマアジはある程度大きくなるまで体に黄色い縞模様があります。体長は大きいもので120㎝を超えるものもいます。天然物はほとんど獲れず稀少で高級食材となります。普段、市場に出回っている物はほとんどが養殖です。真アジと比べて体高は高く、真アジと同じように胸ビレの付け根あたりに黒い斑紋があります。
シマアジの味
天然のシマアジは、漁獲量の少なさから幻の魚、アジの王様と呼ばれるほどの高級な魚です。お刺身で食べる事が多く、身は上品な白身で味わい深く高値が付くのも納得の美味しさです。養殖物もかなりの美味しさですが天然物には劣るという評価があります。
シマアジの旬は夏から秋
シマアジは旬は夏から秋。6月から8月頃です。冬の産卵期に向けて脂がのってきて美味しくなります。伊豆諸島、三浦半島、鹿児島県、高知県など太平洋側地域などが天然シマアジの主な産地です。養殖物は年中出回っています。
メアジの旬
メアジは体が銀色なのでギンアジとも呼ばれています。暖かい水温を好み秋から初冬には漁獲量が増え比較的安価で手に入ります。真アジより匂い、クセなどが少なく様々な料理に合います。沖縄では真アジが獲れないので食用魚として重宝され一年を通して食べられています。
頭の半分ほどある大きな目
真アジと比べて目が大きくぜいごは柔らかめです。全長は約30㎝で体の上部に黄色い帯があるものと無いものがいます。エラ蓋を開くとエラの下部に突起があるのが特徴です。食性は肉食で沿岸から沖合にかけて群れで生息しています。
メアジの味
メアジはクセや匂いが少なく、刺身や煮つけ、フライ、塩焼き、ムニエルと様々な料理に利用されます。また良い出汁が出るので汁ものなどにも向いています。沖縄では刺身を酢みそで食べたり味噌汁にして食べられています。
メアジの旬は夏から秋
関東では秋から冬に旬を迎えます。伊豆から小笠原諸島や千葉県から九州の太平洋沿岸、東シナ海沿岸等、沖縄などで漁獲されます。新鮮なものは目が黒っぽく、出血がなく体も青っぽく張りがあり、ぜいごや鱗がはっきりとしています。
ロウニンアジの旬
ロウニンアジはアジ科の中では最大級の大型の肉食魚です。沖縄や宮古島ではガーラと呼ばれ、釣り人やダイバーたちからはGiant trevallyを略しGTと呼ばれています。関東や関西ではあまり出回っていません。
ロウニンアジは食欲旺盛
老成魚になると全長は約160㎝を超える大型の魚です。真鯛のような顔をしており、体の色はいぶし銀のような色や黒っぽいものがいます。食性は肉食で甲殻類などを主に食べていますが、鳥を襲って食べることもあり非常に貪欲です。
ロウニンアジの味
ロウニンアジは透明感のある白身で主に刺身にして食べます。とろみと甘みがあり加熱しても硬くならないので、焼き物、煮物、揚げ物料理にも向いています。強い旨味があり汁物にするのもおすすめです。食用には4〜5kgのものが最も美味しいです。生息地により違いますが大きすぎるものはシガテラ毒を持っている場合もあるので注意が必要です。
ロウニンアジの旬は夏から秋
ロウニンアジは一年中脂がのっていて美味しいですが、秋から冬の時期は特に脂のりがよく美味しいです。釣りや定置網で捕獲されますが、食用に適したサイズの漁獲量は少なく産地である沖縄や鹿児島以外ではあまり出回っていません。ロウニンアジについてもっと知りたい方はこちらの記事も読んでみてください。
アジの上手な捌き方
開いたり、おろしたり、美味しいアジの上手な捌き方を動画とテキストでご紹介します。捌き方をマスターしてお料理の幅を広げましょう。食中毒予防にまな板や包丁は使用前後には清潔に保ち怪我に気をつけて、挑戦してみてくださいね。
- 鱗を尻尾側から頭側へ向かってとる。反対側も同じように鱗をとる。包丁を内側に傾けるのがポイント。
- ぜいごを丁寧に取り除き、頭を落とす。
- お腹を開き内臓や血合いを取り除き、丁寧に洗う。血合いはブラシなどを使うときれいにとれる。
- お腹、背中、背中、お腹の順に包丁を入れ三枚におろす。
- 逆さ包丁ではお腹の身をそぎ取る。
アジの干物の作り方
安価で美味しいアジがたくさんあるときは干物にするのがおすすめです。長期保存が可能でいつでも美味しく食べることができます。ここでは自宅でできる美味しい干物の作り方や注意点をご紹介します。
手作り干物の作り方
- アジのうろこをとり腹開きにする。
- 身を傷つけないように流水で血や汚れを優しく洗う。
- 水1リットルに対して塩30gの氷水につける。
- 10分したら水から上げてペーパー等でしっかりと水気をとる。
- 水1.35と塩200gの塩水に酒90ccのつけ汁を作り30分ほど漬ける。
- ペーバータオル等で軽く水気を取る
- 干物ネットなどに入れ風通しの良い日陰で4〜5時間干す。
できた干物は一つづつラップに包み冷凍庫で保管してください。真夏や梅雨の時期は気温が高すぎる等のため干物作りには向きません。
アジの旬を知ってうまく食べ分けよう
良質のたんぱく質やミネラル、ビタミン類を豊富に含むアジ。EPA、DHAも多く含みタウリンも豊富で美味しいと、いいこと尽くしのアジ。旬を知り様々な料理で楽しみましょう。たまには市場などに出向き珍しいアジを探してみるのもいいですね。
アジの釣り仕掛けに関する記事はこちら
ロウニンアジに関する記事はこちら