禁止はされたが問題は続いた
1950年に、この治療法は禁止され、その後、精神科医も病院も増えました。これにより、多くの患者が治療を受けられるようになりました。
ですが、症状が落ち着いても社会に参加できず、家に戻れない精神障害の患者もいました。その多くが病院に戻り、入院せざるを得なくなりました。
結局、昔の座敷牢のような暗闇に押し込まれていたのが、今度は病院に変わっただけで、患者にとって幸せな選択ではなかったというのが現状です。
精神病院で起きた事件は他にもあった
日本では、戦後になって精神病院の不祥事が急増しました。その内容のすさまじさに同じ人間のやることとは思えない所業がありました。今回はその中で3つの事件をまとめました。
宇都宮病院事件
この事件は、統合失調症とアルコール中毒の患者2人が職員から暴行を受けて死亡したことが発覚し、国際問題にまで発展した大事件です。
退院した患者の告発により、過去3年間で延べ220人の患者がなくなっていたことも発覚し、そのおぞましき実態が次々に発覚しました。
反抗的ならリンチ
統合失調症の患者は、ご飯を食べたくないと言い、捨ててしまったことに職員が腹を立て暴行し、相手が抵抗して来たため、複数人でリンチし殺してしまったといいます。
アルコール中毒の患者は、こんな病院出たいと家族に話していたため、椅子やモップの柄の部分で殴り続け死亡させました。
日常的に鉄パイプや電気ショックなども行われており、リンチをする職員たちの中に別の障害者を加えることもあったそうです。
軽すぎる判決
この病院の院長である石川は、暴行の他、違法に患者の脳を収集したり、金銭を横領、行動を監視、満足な食事を与えないなど、数々の罪が発覚し、職員たちとともに裁判にかけられます。
ですが、暴行やリンチ殺人を繰り返して来た職員は、最高で懲役4年、最低で1年6ヶ月の執行猶予付きでした。そして院長はたったの懲役8ヶ月でした。
人権を全くもって無視し、非道の限りを尽くした上、私腹を肥やしていたにもかかわらず、あまりにも軽い刑罰で幕を下ろしました。
北全病院ロボトミー事件
こちらの事件も桜庭同様、望まないロボトミー手術をされた事で廃人化してしまい、全くの別人と化し、人生を破壊されてしまった被害者が居ました。
昭和48年に、アルコール中毒の患者が、北全病院を紹介され、その院内での診察により、アルコール依存症に加え、精神病質であると診断されたため、閉鎖病棟に閉じ込められました。
そこで大量に薬物投与されましたが回復しなかった事で、ロボトミー手術を強行されてしまい、結果、全くの別人格になり、廃人化してしまったのです。
虐待という名の作業療法
この病院には看護師が少なく、作業指導員が注射などを行なっていました。その他の食事の配膳や院内の掃除、洗車などを患者にやらせ、死体の処理までやらせていました。
脱走し告発したうちの1人は、内科のつもりで受診し、いつの間にか精神科の閉鎖病棟に入院させられており、脱走を試みたことがあります。
その際に職員に捕まり、拘束衣を着せられ、口に手ぬぐいを押し込まれ、頭から電気ショックを受けました。体が痙攣し、すぐに意識が飛ぶほどの衝撃でした。
12年に及ぶ裁判
本人の同意なしにロボトミー手術が行われたことに対して裁判が行われ、被害者側には三人の弁護士と三人の医師が付きました。
カルテの書き換えや被害者が誘拐され、マンションに押し込まれるなど、紆余曲折を経て、院長と執刀医合わせて3000万円で和解が成立し、幕を下ろしました。
今回も他の事件同様、狂った非人道的な事件で、中々虐待やロボトミー手術の問題は認められませんでしたが、この事件は、全面的に認められたのです。
名古屋Mさんロボトミー裁判
1968年当時、生活音などの騒音により不眠で悩まされていたMさんが、警察に相談したところ、からある病院に強制的に入院をさせられました。
その後退院依頼を弁護士に書いたところ、それを病院側に見つかってしまい、懲罰として、保護室に拘禁されてしまいます。そして二度にわたるロボトミー手術を強行されてしまいました。
この事件には疑問点しかないのですが、もしかしたら警察側と病院側がつながっており、ロボトミーの実験体を探していたのではないかと考えられます。
手術自体は合法である
結局、本人の同意なしに手術したことと、十分な治療をしなかったことに関しては認められましたが、手術自体に問題はなく、むしろ合法だとされました。
ですがやはり手術後の後遺症はひどく、うまく歩行できずによろけて倒れたり、体重が急増したり、高血圧にもなっていたため、生活状態は良くなく、和解を求めていました。
8年の長期裁判は支援者らの協力もあり、弁護士費用や370万ほどの逸失利益、500万の慰謝料は支払われたが余生を保証されるほどの金額は請求できなかったのです。
ロボトミー殺人事件の犯人・桜田障司の人生は不遇だった
今回のロボトミー殺人事件の犯人である桜庭は、元々は問題児ではなく、少し神経質ではありましたが真面目で正義感が強い性格でした。
ですが、悲劇が重なり不幸に振り回された人生を歩むことになり、ロボトミー手術によって完全に人生を奪われてしまいました。
非道徳的なやり方を正当化していた当時の精神科の医療行為は、そのほとんどが現在では禁止されています。二度とこのような行為が行われないことを願います。