それでは、幼虫はどのように駆除を行えば良いのでしょうか?効果的な駆除方法としては、「掻き落とす」、「潰す」、「焼く」、「箸などで摘まむ」、「薬剤を撒く」などが考えられます。
例えば、果樹や街路樹では秋から早春にかけて、樹木に貼りついた卵の塊をみつけて駆除するか,叩きつぶ すのが有効です。又、 春から夏にかけて、幼虫や繭をみつけたら,駆除して土に埋めるのも効果的です。
薬剤を散布する場合には周囲の環境に配慮すること
又、薬剤使用については、人間の身体への影響など少し心配があります。特に無農薬栽培農家であれば、なおさら、手作業での駆除を行うことが多いようです。しかし、この駆除方法では大量発生による甚大な被害を食い止めるには非力です。
農薬による駆除が必要と判断される場合は,クスサン用の農薬として樹木用の「DEP乳剤」があります。農薬は取扱説明書に従って使用し、薬剤散布にあたっては通行人や近くの住民等に十分配慮する必要があります。
ラ・スカイファームのイベント中止事例
広島県の観光農園で、大量発生したクスサンの食害のために、毎年秋季恒例の「栗拾いイベント」が中止となったことがありました。この農園では、完全無農薬を売りにしていたことから、クスサンの幼虫駆除のための薬剤使用を避けていました。
クスサンの幼虫に毒性はある?
一般的な毛虫のイメージ同様に、クスサンの幼虫の毛に毒性があるのではないか?刺されて痛いのでは?と心配されますがどうなのでしょうか。
クスサンに毒性はない!触れても大丈夫
この幼虫の毛に毒性はありませんので、触ってもかぶれたりすることもありません。又、その他の皮膚症状などが発生することもありません。ついでに言えば、成虫にも毒性はないため、完全に人畜無害の昆虫と言えます。
クスサンの毛は硬いため触ると痛みを感じることも?
クスサンの幼虫の毛は硬いため、触れるとチクリとした痛みを感じることもありますが、毒性によるものではありません。又、幼虫の排泄物については、毒性ではありませんが、直接触ることでかぶれる恐れがある為、安易に触れないようにしましょう。
注意したいチャドクガ
実は、日本に生息する5000種の蛾の中で毒性のものは10種程です。注意を要するのは、お茶の木の害虫と言われる「チャドクガ」です。但し毒性といっても、死んでしまうような毒性ではありません。チャドクガの「毒」は全身にある「毒針毛」が犯人です。
この幼虫にふれると、毒針毛が皮膚にはいり猛烈に痒くなります。その場合、患部を水で洗います。それでも痒くなった場合には、ヒスタミン系の軟膏を塗ることです。いずれにしても、この蛾は、茶や、ツバキ、サザンカといった木の近くにいる場合が多いので注意しましょう。
クスサンはふぁっとした感じがかわいいとウワサに?
クスサンは、幼虫でも成虫でも、モフモフでファッサファサでかわいいという意見が多いです。一般に蛾の幼虫のイメ-ジと違い、黒っぽさやトゲトゲしさがなく、白い毛でフサフサした感じになるのが理由のようです。
モフモフ感が猫っぽくてかわいいという声も?
蛾というだけで嫌われる節もあるが、このモフモフ感が猫を連想させるため好きな人も多いようです。加えて飛ぶのがめちゃくちゃ下手。勝手に地面でパタパタ音を立ててバタついているものをよく見かけますが、この不様さが可愛げを誘っています。
他にも「顔がかわいい」「幼虫もかわいい」と一部で話題に
成虫はモフモフでうさぎに似た顔でかわいいという意見が多いです。又、幼虫でも、手に乗せるときに指を手繰り寄せてくることがかわいいと言います。
クスサンの天敵は?
一番の天敵はきっと人間なのでしょう。但し、自然界にもクスサンにとって恐ろしい敵は存在します。幼虫時代と成虫時代に分けて調べてみます。
幼虫の天敵 ヤドリバチ
クスサンの幼虫は白くて長い毛を持っています。触れると痛いですが毒性はありません。しかし
この毛は天敵のヤドリバチが近づくのを防いでいるのです。
成虫の一番の天敵は狸?
成虫にも一応、天敵対策はあります。エサを求めて野鳥が近づくと、普段は隠している後翅をいきなり広げます。そこに大きな目玉のような模様が出現します。大抵の鳥はこの眼玉模様に驚きますが、その隙にクスサンは逃げます。鳥が恐れるのは、彼らの天敵のハヤブサの眼と間違えるからと言われています。
しかし、この手が効かない手ごわい天敵がタヌキです。クスサンの体が大きいためタヌキの好物になっています。鳥には効き目のある目玉模様も、タヌキには効き目がありません。クスサンの威嚇もお構いなしに、タヌキは器用に食べてしまいます。
クスサンと人の暮らしの関わり
クスサンはその幼虫の大量発生から葉っぱを食い尽くし「栗拾いイベント」を中止に追い込むなど駆除すべき悪いイメ-ジが強いですが、ここでは人の暮らしに役立つ面もあることを紹介したいと思います。
クスサンの繭をどう使う?
クスサンの繭は繊維がきわめて丈夫で、手では簡単に壊せないくらいの強度があることは既に紹介しました。そしてこの強度を利用し、昔から釣り糸として使用されるテグスの原料とされていたそうです。
酢に食塩と水を混ぜた溶液を作って、そこに幼虫の体の切断片を入れてみると、そこから糸が出てきます。引き延ばして乾燥させるとナイロンのような釣り糸になります。こうして釣り糸を作っていたようです。
クスサンは食べられるの?
世界では蛾のサナギを食用とするのは常識です。その一つに日本のカイコも入りますが、野蚕とも言われるクスサンも同類で食用になると思われます。サクサンと呼ばれる種類では、日本でも食用として購入することができますし、居酒屋でつまみとして出しているところもあるらしいです。
クスサンも何の葉を食べているかで味も変わるらしいです。又、蛹の皮が固いので、煮たり揚げたり調理法に工夫がいるのが難点です。関連プログ記事も出回っているようですので、関心ある方はお試しください。
その他にも意外な利用法が
クスサンの繭を指サックにしてバンドエイド代わりの使い方をする手もあるようです。ちょうど指の太さくらいであり、丈夫で通気性があり、且つ柔軟性もあるのだから、この使い方は頷けます。
幼虫も成虫も特徴的な蛾のクスサン!
クスサンは成長のどの段階にあっても、それと分かる特徴を持っています。幼虫時代には、真っ白な毛を生やし、モフモフした感じになるのが特徴ですし、作る繭も薄いベ-ジュ色の網目細工の様に個性的で目立ちます。
成虫はその体の大きさに加え、後翅にある大きい目玉模様が人目を引きます。クスサンは時に威嚇のため、この目立つ後翅の眼状紋を見せるような行動をします。このようにクスサンは、幼虫から成虫に至る各段階で見つけやすく、又可愛さも持ち合わせる昆虫ですので、あなたも一つ注意して探してみてはいかがですか?
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