マンボウ基礎知識
もともとはフグから進化!?
マンボウはフグ目マンボウ科マンボウ属に属しており、陸地沿岸から外洋に進出していったフグが環境に応じて進化した種類といわれています。そのため、その姿をよく観察すると、おちょぼ口に丸い目、エラが小さな穴状、肋骨と腹ビレがない、などの骨格や外見上の特徴がフグと共通しています。
「マンボウ」は「マンボウ」の一種!?
非常にややこしいのですが、実は「マンボウ」というのはマンボウ属に属するマンボウの一種の名前で、このマンボウ属に属するのはこの「マンボウ」と「ウシマンボウ」「カクレマンボウ」の3種で、そのほかにヤリマンボウ属の「ヤリマンボウ」、クサビフグ属の「クサビフグ」などが種として確認されています。
マンボウ属3種への道のり
DNA分析が可能になる前は、形態などの特徴だけで種分類を行うしかなかったため、マンボウ属は多い時で実に33種いるとされていました。いくらなんでもこれは変だということで1951年に再検討され、今度はたった2種まで一気に分類が減ったのですが、ついに2009年にDNA解析でマンボウ属が遺伝的に3種であることが判明します。
ウシマンボウはこの時に初めて和名が命名された種で、カクレマンボウに至っては、実物の魚本体が未発見・未捕獲で姿形が不明だったのですが、2014年にニュージーランドで浜に打ち上げられた個体がそれだと判明し、2017年に発表された論文でようやく新種として加えられ、和名がつけられたものです。
マンボウの生態①体の特徴
世界最大級の大きさ
マンボウはよく知られているように非常に大きな魚で、最大3m超、体重は2t以上にもなる世界最大級の「硬骨魚類」です。「あれ、でもサメとかはもっと大きなものもいるのでは?」と思われるかもしれませんが、サメ類は「軟骨魚類」なので、いわゆるタイやマグロやヒラメといった硬骨魚類の中では最大級の大きさのお魚です。
ちなみに、大きさで言うとマンボウよりもウシマンボウの方が大きくなるそうで、マルタ共和国のリゾート地ゴゾ島で2014年にダイバーに目撃された個体は推定全長4.2mもの大きさだったそうです。
体の色や模様はいろいろ
マンボウの体の色は個体のよってさまざまです。白っぽいものから銀色、黒ぽいもの、茶色の褐色のものなどいろいろ変化に富んでいおり、なかには水玉や縞模様のようなものを持った個体もいます。
魚なのに尾びれがない!?
マンボウは各ひれが独特の形に進化しました。もともとフグの仲間なのでフグと同じように腹びれはありません。そして背びれと尻びれが体の上下に大きく発達し、尾びれは退化してなくなってしまいました。そのかわり背びれと尻びれの一部が後方に変化してできた舵びれという特殊なひれが尾びれの位置についています。
マンボウは、この上下の背びれと尻びれを振って推進力を得て、尾びれの位置にある舵びれで方向を変えながら泳いでいます。その姿から泳ぎは下手で海中をただ漂っているだけのようにも思えますが、エサを取る時などは、意外と素早く海中を移動できることが観察からわかっています。
マンボウの生態②生息地・分布
世界中の海に分布
マンボウは世界中の温帯・熱帯域の海に分布しており、比較的水深の浅いところから、最大で水深800mほどの深さまでを行き来しながら生息しています。日本でも主に北海道以南で見られ、漁の定置網にかかってきたり、マンボウの不思議な習性の一つでもある、海に体を横たえてぷかぷか浮かんでいる姿を目撃されたりします。
カツオ漁やサンマ漁のようにマンボウ漁として漁獲される魚ではなく、身も痛みやすいので、これまで一般の市場にはあまり流通せず、主に宮城県から千葉県にかけての地域と、静岡県、三重県といった一部の限られた地域で食用とする習慣がありました。
実は絶滅の危険性あり?
日本も加盟している自然保護の国際団体である国際自然保護連合(IUCN)は「はえ縄漁やトロール漁などで混獲される例が多く、世界的に個体数が減っている可能性が高い」として、2015年にマンボウをレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)の絶滅危惧II類「絶滅の危険が増大している種」に指定しました。
レッドリストは日本の環境省も1991年から独自のものを作成し随時見直しを行っていますが、海洋生物については、陸と陸水域の生物に遅れて2012年より作成が進められたという経緯があり、いまのところ日本の基準ではマンボウはレッドリストの対象外になっていませんが、今後の見直し次第では指定されることがあるかもしれません。
マンボウの生態③食性
主食はクラゲとプランクトン
マンボウの食性については、まだ不明な点もあるのですが、あれだけ大きな体をしているのですから、エサもさぞかし高カロリーなものをたくさん食べているのだろうと思いきや、現在わかっているのは、動物プランクトンやほとんどカロリーのなさそうなクラゲをよく食べているらしいということです。
マンボウの名前の由来
マンボウの由来は諸説あり
日本語のマンボウの名前の由来はその特徴的な見た目からか、「満方」や「円坊」、「円魚」など諸説あって定かではありません。またマンボウは「ウオノタユウ」(瀬戸内海)、「浮木(ウキキ・ウキギ)」(東北地方)、「マンザイラク」(神奈川)、「クイサメ」(富山県)など非常に多くの地方名を持っています。
漢字では「翻車魚」
中国語でマンボウは「翻車魚」と表し、それを当て字として日本でもマンボウと読みます。マンボウは海の上に体を横にして浮かぶ習性があり、それは体表面の寄生虫を海鳥に食べてもらったり、日光で駆除したりするためと考えられていますが、その様子をひっくり返った車輪という「翻車」という漢字で表したと言われています。
英語では太陽の魚、頭の魚
英語ではその大きな丸い姿をお日様になぞらえて「Ocean sunfish」と呼ばれたり、一見、頭だけで胴体がないようにも見えるその姿から「Head-fish」とも呼ばれます。また、学名は「Mola mola」と言いますがこの「Mola」というのはラテン語で丸い臼を表す言葉で、やはりその見た目から名付けられています。
マンボウの釣り方はあるの?
狙って釣れるものではない
残念ながらマンボウは狙って釣れるお魚ではありません。マンボウを釣り上げたという少数の例はあるようですが、海釣りの最中に偶然ヒットしたとか、たまたま小型のマンボウがいたので、ためしに針を落としてみたら口以外のところに引っかかって釣れてしまったといったようなものです。釣れるかどうかはまさに運しだいです。