こんな話を聞いたことはありませんか?「マンボウは体についた寄生虫を落とすため海面上にジャンプするが、水面に着水した衝撃で死ぬ」これはマンボウの残念な死因として語られるものの中で最も有名なものです。似た話で、「水族館のマンボウは水槽のガラスに激突して死ぬので保護ネットが張られている」というのもあります。
すぐ死ぬというイメージは誤り
結論を言うと、習性として確かに海面からジャンプすることはありますが、それが原因で死ぬことはありません。このジャンプは水族館のマンボウでも見られる行動なので、観察していても、それだけで死んでしまうことはありません。
また水族館のネットの話にしても、体が大きすぎて、さすがに水槽内では小回りが利かないマンボウのために保護材が張られているのは事実で、さすがに何度もぶつかればダメージの蓄積で体が弱ることもあるそうですが、実際そこまで脆弱な魚ではなく、それらはのんびりしたマンボウの見かけから、面白おかしくついた勝手なイメージに過ぎません。
他にもあるマンボウの死因デマ
マンボウの死因にまつわる逸話はほかにもたくさんあります。もはや冗談としか思えないようなものもありますが、それらはただの誇張された都市伝説で、やはり事実ではありません。
(誤)まっすぐしか泳げないために死ぬ |
⇒(正)小回りはきかないが舵びれで方向調節可能 |
(誤)深海に深くもぐりすぎて凍死する |
⇒(正)水深800mくらいまでの深海はじゅうぶん生息域 |
(誤)仲間が死ぬと悲しみのストレスでショック死する |
⇒(正)近くに仲間がいる方が縄張り意識でストレスが増える |
(誤)皮膚が弱すぎて人間が触っただけで皮膚病で死ぬ |
⇒(正)鱗がない魚で皮膚が弱いのは事実だが、そこまで弱くない |
(誤)直射日光が強すぎて死ぬ |
⇒(正)ありえない |
Contents
マンボウの都市伝説②三億個の卵を一度に産む?
確認された事実ではない
「マンボウは一度に3億個もの卵を産むが、生き残るのは2~3匹」というのもよく言われますが、これも正確な話ではありません。海という過酷な環境で無事に成長する個体が少ないというのは事実でしょうが、2~3匹というのは統計があるわけでもなく、何となくのイメージで、専門家でも正確なところはわからないというのが本当のところです。
そして「3億個の卵」というのも、実はかなり古い1921年のマンボウについての論文にある記述が、いまだに通説として使われているだけなのです。また卵も何回かに分けて産むらしいということがわかってきており、卵の数も個体の大きさで変わるので「3億個の卵を一度に産む」ということも、現在ではあまり根拠のある説ではなくなっています。
マンボウに旬はあるの?
産地では夏が旬
一般の市場への流通量が少なく、なかなか旬のイメージがつかみにくいマンボウですが、産地では夏が旬と言われているそうです。ただ、現在は冷凍保存技術も発達しているので、マンボウの料理を名物としている地域では、一年を通してマンボウ料理を味わうことができます。
美味しいマンボウ①お刺身・肝あえ
鮮度の良いものはお刺身でも
マンボウの身は鮮度の良いものはお刺身で食べることもできます。ただ、水分が多くあまり脂のない淡白な味わいの身で、普通のお刺身のようにわさび醤油だと、ちょっと物足りなさを感じることもあるので、さっと湯がいて締めた身をマンボウの肝を和えた酢味噌で食べると、肝の風味が加わってとても美味しくいただけるそうです。
肝和えでもっとおいしく
肝の風味をより生かすため、さっと湯がいた身に、マンボウの肝を醤油、味噌、お酒などに溶かし込んだたれにからめてしまう肝和えも、とても美味しいそうです。ちょっと強めの味付けが、お酒のお供やごはんのおかずにぴったりの一品になります。
美味しいマンボウ②珍味の肝・腸・皮
マンボウのレバ刺し
身と和えて食べる肝も美味しいですが、肝単体でも食べることができます。ただし、マンボウは比較的寄生虫が多いお魚です。肝でも身でも料理店で提供されるものや、生食用とパック詰めされた市販品は比較的安全と言えますが、完全な生の状態のものを食べる場合にはある程度自己責任が伴いますので注意してください。
一番美味しい部位は腸
マンボウの腸でそのまま「マンチョウ」とも言われる腸は、焼肉のミノに似たコリコリした触感で、炒めても、焼いても、煮ても、どんな調理方法でもとても美味しい珍味として人気の食材だそうです。味付けもお好みで、実はマンボウの食用部位の中で一番美味しいのは、この腸だとも言われています。
まさに珍味の皮
マンボウは、漁の網にかかって獲れた場合、漁船上ですぐ解体され、捌かれた後の骨や皮はそのまま海に捨てられることが多いので、皮はあまり市場に出ない部位です。湯引きして酢味噌で食べたり、寒天やナタデココのような食感がするので、甘い味付けで食べる猛者もいるようですが、とりあえずコラーゲンたっぷりな不思議な味わいの珍味だそうです。
美味しいマンボウ③地域の名物料理として
マンボウ料理を観光資源に
おもに一部の地域で消費されることが多かったマンボウですが、それを逆に利用して観光資源として利用するところもあります。三重県の道の駅「紀伊長島マンボウ」では「マンボウフライ定食」を特産メニューとして売り出しています。白身魚ですが、フライにすると、イカにも似た不思議な食感で、美味しい人気メニューとなっているそうです。
マンボウが見られる水族館
一部の水族館で観察可能
マンボウは生態にまだまだ不明な点も多く、飼育も難しい部類に入るため、マンボウを飼育している水族館はあまり数は多くありません。水族館によってはマンボウの健康状態によって一時的に展示が休止されたりする場合もあります。マンボウを水族館で確実に見たいという場合は、事前に各水族館に問い合わせすることをお勧めします。
マンボウじゃないアカマンボウ
姿は似ているがまったくの別種
アカマンボウというお魚をご存知でしょうか。マンダイとも言われるお魚で、見てのとおり赤い体色のマンボウのようですが、マンボウとはまったく別種のお魚です。マンボウがフグの仲間であるのに対し、このアカマンボウはこれもまた神秘の魚リュウグウノツカイの遠縁にあたる種類で、食用としてもよく利用されています。
まとめ
マンボウの生態やよく言われている情報の真実についていろいろと見てきました。もちろん、人間にあれこれ言われていることなどつゆしらず、マンボウ本人(本魚)は、今日もまた、のんびりと世界中の海を泳いでいることでしょう。
そんなマンボウを水族館で見かけたら、ぜひその姿をよく観察してみてください。マンボウを食べる機会があったら、その不思議な味わいをじっくり楽しんでみてください。きっとマンボウの魅力を再確認できるはずです。