絶滅したリョコウバトってどんな鳥?
まずは、リョコウバトなる鳥類の特徴を辿っていくことにしましょう。すでに絶滅してしまった現在も人々の興味を惹きつけて止まない理由は何なのか?生息していた頃のエピソードなどを元にリョコウバトに関する情報を紐解いていきます。
リョコウバトは鳥類最大の生息数
ハトは人間の生活においてごく身近な鳥類として知られていますが、その中でも約100年前の20世紀初頭に絶滅してしまった種となったのが「リョコウバト」です。現在に至るまで他に類をみないほど多くの個体数を誇ったその数は推定で50億羽もしくはその倍とする説すらあります。
リョコウバトの生態・特徴
リョコウバトの体長は約40センチでオスとメスでは見た目が異なり、特にオスの個体はハトの仲間で最も美しい羽色を持っていたことが特徴です。また飛行速度のスペックは時速100キロに近く、平均的な寿命は現在のハトと同じく10年前後であったと推測されています。
リョコウバトの生息域
リョコウバトは北アメリカ東岸を主な生息域とした鳥です。しかし夏季はカナダ国境周辺、冬季は南米メキシコへと自由に渡る習性が旅行と似ていることから「リョコウバト」の名前がついています。
ドラえもんに登場?リョコウバトの絶滅理由
絶滅に至るドラマティックな生き様が注目されるリョコウバトは、日本のアニメにも登場しています。2012年公開の「映画ドラえもんのび太と奇跡の島~アニマルアドベンチャー~」「けものフレンズ」などは代表的な作品で、後者は旅のガイド姿で作中に登場するリョコウバトのフレンズがコアなファンを魅了し続けています。
リョコウバトが絶滅に至るまでの年表
世界の人口がよくやく50億に達したのが1987年。それよりはるか昔に同レベルの個体数を維持しながら絶滅してしまった理由はどこにあるのでしょうか?次は歴史に残る記述を追いながらリョコウバト絶滅への系譜を時系列でみていくことにします。
- 1700~1800年代 アメリカ全土で推計50億羽以上のリョコウバトが棲息
- 1810 ケンタッキー州において推計22億羽以上のリョコウバトの群れが確認される
- 1838 ケンタッキー州上空を約3日間途切れることなく移動するリョコウバトの大群が目撃される
- 1867 リョコウバト保護法が制定される
- 1890年代 リョコウバトの姿がほとんど見られなくなるまでに数が激減
- 1906 ハンターによってリョコウバトが撃ち落され、野生の個体は事実上絶滅
- 1907 飼育により生存する7羽のリョコウバトが確認される
- 1910 8月 オハイオ州の動物園で生まれた3羽のうちオスの2羽が死亡しメスの個体1羽を残すのみとなる
- 1914 9月1日 最後の1羽が死亡しリョコウバトは絶滅
リョコウバトの絶滅理由①群れが大きい
では、いよいよリョコウバトが絶滅に至った核心の部分に触れていきましょう。数の上では圧倒的だったリョコウバトを数奇な運命に導いた7つのエピソードは、その大半が人間のエゴを浮き彫りにしていることに気づくはずです。
リョコウバトは大群を作る
天敵から身を守るためなどの理由から、渡り鳥が群れを成して飛行する姿は決して珍しくない光景です。しかしリョコウバトの群れの数は数十万羽という想像を絶する数であったため、多くの人間が容易に捕獲することができたと推察されます。
リョコウバトは駆除すべき対象に
「大群の影響で空が暗くなった」とか「リョコウバトが埋め尽くした重みで木が折れた」といった逸話もあるほどで、おそらくは動物特有の臭いも相当なものだったに違いありません。現に大量の糞による悪影響はリョコウバトが駆除に値する害鳥として捉えらるきっかけにもなっています。
リョコウバトの絶滅理由②肉が美味しい
鳥肉の中でも独特の臭いがあり、クセが強いとされるのがハトの肉です。その一方でアメリカの先住民族たちにとっては貴重な食料で、さまざまな方法で美味しく調理されていたこともリョコウバトの絶滅理由のひとつと考えられています。
リョコウバトは美味しかった
数が豊富で身近に入手できる存在であったリョコウバトは、筋肉が程よく発達し旨味を持つ食材であったとも言われます。生食はもちろん燻製や臭みを抜くためのスパイスを駆使するなどして食されましたが、やがてはその肉も余るようになり最終的には家畜のエサとして始末されるほどになりました。
意外と知らない?現代に通じるハト食の文化
人間がハトを食用としていた歴史は古く、古代エジプト文明にまで遡ることができます。味の良さで人々の舌をうならせたリョコウバトの絶滅以降もハト食の文化は世界中に残っており、現代の日本でもハトをおいしく食すための料理法は紹介されています。
ハトの美味しいレシピ①エジプト編
ハトを最も古くから食していたであろうエジプトでは、伝統料理のひとつとして現在もハトの料理が作られています。中にはハトの肉を高級食材として扱う店もあり、1羽丸ごと使うなどダイナミックな料理も有名です。
ハトの美味しいレシピ②フランス編
フランスではウサギなどと並び好まれているのがハトの肉です。ピジョン(=鳩)料理として人気のメニューは、ソテーや煮込みを中心にハーブなどを効かせているのがポイントで美食家たちの舌を満足させています。
ハトの美味しいレシピ③アジア編
アジアの中でもハトを好んで用いているのが中国の広東料理です。広東料理はゲテモノを美味しい一品に仕立てることでも定評があり、ハトはから揚げやスープなどによく使われています。また、日本でも注目されているジビエ料理ではハトの肉を和風にアレンジした食べやすいメニューに人気があります。
リョコウバトの絶滅理由③繁殖力の低さ
リョコウバトが絶滅してしまった理由の中で唯一人間と関りのない部分が、この種が持っていた繁殖の特徴です。その実態を知れば知るほど、数十億羽にまで増えたことすら奇跡に近いと感じることでしょう。
リョコウバトの産卵は1年に1度
ハトは1回の産卵で複数の卵を産むことが一般的です。しかしリョコウバトは1年のうち1回しか産卵せず、卵の数もわずか1個しか産むことができない鳥でした。乱獲による数の減少が加速する中で個体数の回復がいかに困難であったかおわかりでしょう。
リョコウバトは繁殖力が低かった
産卵数の少なさに拍車をかけたのがその繁殖力です。一般的なハトは年に4回程度の繁殖が可能なのに対し、リョコウバトは1年にたった1回しか繁殖しない鳥だったのです。人間はこの事実に気づくことなく乱獲を繰り返し、ヒナまで狩猟の対象としました。のちに種を保護する法律ができたものの、後の祭りだったことは言うまでもありません。
リョコウバトの絶滅理由④人口増加
リョコウバトの絶滅理由は人類の歴史とも深く関わっています。それまで人間の数を凌駕していたリョコウバトは、コロンブスのアメリカ大陸発見によって変化した人の流れの影響をダイレクトに受けてしまった被害者なのです。
リョコウバトの減少と人口増加
1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見するまで、ネイティブアメリカンと呼ばれる先住民たちによって守られていたのがアメリカです。徐々に欧米人の流入が始まり人口が増えてくると、人間によるリョコウバトの乱獲も比例して増え始めました。
リョコウバトの絶滅理由⑤電報の発明
現代のように通信網が発達していない時代において画期的だったのが電報の発明です。人々は新しい通信手段をフルに活用してリョコウバトの居場所を教え合い、列車で縦横無尽に移動しながら狩猟を繰り返すスタイルを確立すると次は市場を作り、生活の糧としてリョコウバトを商売の道具として扱うようになりました。