象皮病とは
日本ではそこまで聞かなくなった病名、象皮病(ぞうひびょう)はリンパ管にフィラリアが寄生した後に起こる後遺症です。
「フィラリア」も聞きなれない言葉です。一体どのような後遺症が出るのでしょうか。病名に象がという文字がつくのは、とても珍しく感じます。
象皮病になると身体の一部がゾウのように巨大化!
象皮病になると、皮膚や皮膚組織がどんどん硬くなり大きく肥大します。
表面が硬くなり見た目にも変化があらわれ、ひび割れたような形状から象皮病、または象皮症と呼ばれています。
症例は少し、画像が痛々しいので記載は控えます。
東アフリカでは、裸足で出歩く習慣がありますが似たような症例がありました。
しかし、そこは標高が高く蚊の生息地ではなかったため、調べると火山から噴出される鉱物を踏むことが原因の「ポドノコシス」という病だと判明したのです。
似たような病もあるので、判断がとても難しいのです。
象皮病になる原因とは
皮膚や皮膚組織が硬くなり、どんどん肥大すると言われても、想像出来ないでしょう。
後ほど実例も交えてどのような症状になるのか詳しく説明します。どのように象皮病にかかるのか、原因も気になります。
象皮病の原因は寄生虫フィラリア
病の発端となるのは寄生虫のフィラリアです。先ほども出てきた名前の寄生虫は、実は「蚊」を通して人や他のものに入り込み、感染します。
感染するとリンパ管にはバンクロフト糸状虫が、恐ろしい事にリンパ管の中で炎症を起こすのを繰り返すのです。
日常でも、蚊に刺されたことのない人はおそらくいないでしょう。それくらい当たり前にいる環境下で病にかかるのです。
手術や外傷によってなる場合もある
象皮病にかかる原因は「フィラリア」には限りません。その後に起こるリンパ管の炎症を何度も繰り返すことにより破裂し、浮腫(むくみ)が起き原因を作り出すのです。
他に、乳がんの手術や外傷などでも象皮病にかかった症例があります。特にがんの手術はリンパ節を切除する手段が多く見られ、その後に浮腫ができる原因を作ります。
象皮病になるとリンパ管が破壊され皮下組織が増殖
どのようなことが起こるのか経緯を説明します。まずは蚊が人を刺すことで、感染の原因となる幼虫が体の中でリンパ管に入り込みます。
幼虫が体の中で成虫になると、バンクロフト糸状虫になり「リンパ管の炎症」を起こすのです。炎症を何度も繰り返すと、リンパの管が閉塞や破裂を起こし、体の循環がうまくいかなくなり、浮腫ができます。
リンパ浮腫と呼ばれ、手術で切除した場合にも起こりえます。その後、皮下組織の結合組織が増殖し、部位が巨大化するのが象皮病です。
象皮病にかかるとどうなる?症状は?
今までに聞いたことのなかった未知の病、象皮病にかかったらどうなってしまうのでしょうか。
蚊による感染だと防ぎようがなく、怖い一面もあります。また、がん治療でも起こりうる病気だと知ると、なかなか、がん治療にも前向きに進めなくなります。
日本の場合は手術に向けて後遺症の説明は必ずされるので、気になる方はその時に確認するのも良いでしょう。ここでは一般的な症状について見てみましょう。
感染した当初はわからない場合が多い
感染初期と呼ばれ、かかった直後に症状が現れるわけではないので、象皮病の疑いがあっても外見が変わらないため、気づく人は少ないと言われます。
さすがに蚊に刺された後からすぐに気づく人も少ないでしょう。体の中で、どんどん病が成長し、小さい時に感染したのを成人してからやっと気づく人が多いようです。
象皮病にかかると熱や悪寒、痛みが出る
実際にリンパ管の閉塞、破壊で体内のリンパ系組織に障害が起き、発熱や悪寒、痛みが出始めます。
子供の頃に感染しているので、当の本人は全く覚えがないことも有るようで、いきなりの症状に戸惑う人も大勢いるようです。
事前に体の異変に気づけないのは辛く、発熱や悪寒の後に待っているのがさらなる脅威です。
象皮病にかかった部分は変色し、皮膚が硬化、肥大化する
リンパ浮腫が現れ、皮下組織が増殖を始め象皮症の症状が現れた部分は肌の色が変色し、表面が固くなり、肥大化する性質があります。
異常なほど肥大化するため見た目にも分かりやすく、外観が変わってしまうと精神的にも追い詰められてしまう人も多いようです。
すぐに病院に行く決断ができれば、それに越したことはありません。しかし、遅くなればなるほど外には出られなくなる状況に陥ります。
象皮病で腫れた部位は強烈な悪臭を放つ
特徴の一つとして、最も困るのが、肥大化した部分は特有な匂いを発します。強烈な悪臭を放つため、外に出れなくなってしまう懸念点が拭えません。
勝手な判断で、原因を突き止めてしまうと思わぬ結果に見舞われます。清潔に保たない場合、部分切除の可能性もあるため、早めに医師に診断を求めたほうが良いでしょう。
放っておいたため、切断になった症例もあります。
象皮病の症状は陰茎や乳房、脚や腕などに現れる
主に出やすい箇所は、脚と言われています。しかし、手術や、蚊に刺された部分に寄っては、陰茎、乳房、腕などにも症状は出るようです。
脚や腕などは病院にかかりやすいかもしれませんが、乳房や陰茎などはいつもは人に見せません。病院の受診に躊躇してしまう人もいるでしょう。
見た目がどんどん変わっていく恐怖は、痛みや発熱よりも怖く感じるのではないでしょうか。また、肥大するという点では巨乳症という病気があります。詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
象皮病の海外での症例紹介
象皮病の発症が見られるのは熱帯や亜熱帯の73カ国です。脚や、陰茎、乳房や腕などに症状が現れる病気は、他の各国では現在でも恐れられている病気です。
日本からはだいぶ離れている国ですが、大切な症例を少し紹介しましょう。
海外の象皮病症例紹介①靴を履けない女性
女性にとって靴はとても素敵なファッションの一部です。インドのカシミール地方にソイ・パスリーさんは住むまだ若い女性は生まれたときから、脚がむくんだように腫れていたようです。
取材時の2018年、21歳の彼女の脚は長さ28センチ幅は18センチもある状態だったと言います。アメリカンフットボールがこれくらいの大きさと言われています。
女性なので外見は大切なもの、14歳の時に大きくなった脚を小さく見せようと手術に踏み込みますが、脚の指を切断するという安易な手術でした。
脚の肥大化は止まりましたが、肥大化はふくらはぎまで侵食し、歩行が困難な状態に陥っているそうです。生まれたときから症状があるのであれば、蚊から発生したわけではなさそうです。
海外の象皮病症例紹介②体重500キロの世界で一番重い女性
エジプト人のエマン・アフメド・アブド・エル・アティさんは、世界で最も体重が重いと有名な女性です。一時は、500キロ近くの体重がありました。
体重のせいで20年以上自宅から外に出られない状態だったと言います。エジプトのアレクサンドリアから、インドのムンバイに行き手術を受けることになります。
彼女は太りたくて太ったわけではなく、子供の頃に四肢のなどが象皮病と診断されており、だんだんと体が動かない状況に陥ったそうです。
減量手術を受け、体重が半分になりました。その時の嬉しそうな彼女の写真もニュースで流れました。しかし残念ながら、心不全、腎不全のため2017年9月に亡くなっています。
海外の象皮病症例紹介③脚が3倍以上に肥大した女性
中国人女性も象皮病で両脚が通常の3倍にも膨れ上がり、台湾で手術をした症例もあります。中国国内での病院で治療法はないと言われてました。
彼女は普通に女の子としての人生を送ることも諦めていました。彼女の家庭は生活保護を受給しているほど貧困だったのです。
彼女に救いの手を伸ばしたのは台湾の宗教派「仏光山」でした。手術費用は病院が持ち、渡航費用や雑費は「仏光山」が補い、彼女は手術に踏み込めました。
また、彼女の感染経路は蚊ではないとされ、原因が不明とされています。
海外の象皮病症例紹介④陰茎が90cmまで肥大した男性
近隣の男性が起点を聴かせてFacebookで助かった男性がケニアにいました。彼は陰茎が10歳から膨れ上がり、15歳にはズボンを履くことができずに学校も退学しています。
耐え難い痛みと陰茎の腫れた部分の重みで、歩く、座るのも困難で寝たきりだったと言います。学校にも行けなくなってしまった彼は、この世を恨んだことでしょう。
症状に苦しむ姿を見かねて、近隣の男性がFacebookで呼びかけた所、偶然地元の知事の目に入り寄付により手術がなされ、一般的な陰茎に戻ったようです。
このようにFacebookで呼びかけるだけで、一人の人生も変化し、病気に関しての知識も広がるのはとても勇気づけられる例でしょう。
ここまでは、生まれつきだったり、原因不明でかかった人が多く見られます。まだまだ、様々な要因も隠されているのかもしれません。
金正恩が象皮病である噂も
憶測と噂の域は出ませんが、北朝鮮で最も権力のある金正恩が象皮病と囁かれています。
彼がメディアに登場するときのズボンに着目すると、通常の2倍はあるかと思われるズボンを常に履いています。
ズボンの太さが、象皮病を疑われる原因となりました。真相は分かりませんが、ズボンの中身が余っているようには見えなかったのも、象皮病を疑われた原因のようです。
象皮病に感染している人は1億人以上いる!
実際に、象皮病の患者は世界にどのくらい存在するのでしょうか。2016年のWHOによると2000年には1.2億人が感染していると推測されています。
これは世界で考えた時の人数なので、日本の人口ではありませんが、まだまだ病に苦しんでいる人はたくさんいます。
死亡例はほぼないとしていますが、肥大化とともに、行動が制限されるため、他の病気を患いやすく、恐ろしい病気に変わりはありません。
象皮病は熱帯地域に多い病気
主に象皮病の幹線リスクのある国は、アジア、アフリカ、西太平洋など一部の熱帯地域に見られます。
その数73カ国と言われており、その中でも東南アジアでは、感染者が65%と集中している地域です。暑い所に蚊は繁殖しやすい傾向があります。
深刻な問題と考えられており、様々な製薬会社が治療のために、資金や専門知識を提供し取り組んでいます。
象皮病の日本での症例紹介
日本でも症例があるの?と驚いた方もいるかも知れません。今回紹介するのは一昔前の江戸時代の日本の症例になります。
もちろん、現在の日本で象皮病にかかるリスクはゼロではありません。それは、日本から各国に旅行や仕事で行く人がいる以上防ぎようのないものです。
そして、誰もが知っている日本で活躍した西郷隆盛が、象皮病を患っていました。
日本の象皮病症例紹介①西郷隆盛
日本維新に大きく関わり、今の日本を築いてきた西郷隆盛が象皮病を患っていたという話が残されています。
不思議な点が、西郷隆盛は写真を一枚も残さないことで有名です。どのように西郷隆盛が患っていたのが伝わったのでしょう。
西郷隆盛は象皮病で陰嚢が肥大化していた
西郷隆盛は鹿児島の出身です。南方の諸島にも島送りに2度された経歴があります。最初は身近に着いていた藩主の死で失脚し奄美大島へ流されました。
2度目は最高権力者の島津と合わずに、沖永良部島へ流罪(島流し)にあうなど、本人の意図しないところで、過酷な状況に追い込まれたようです。
西郷隆盛が象皮病に侵されたと推測されるのは2度めの流罪の時との説が有効で、症状の出た部分は陰嚢だったようです。
陰嚢とは陰茎の下にある精巣を収めている場所です。陰茎と同じくらい発症も多く見られるようです。九州南部で風土病として、象皮病は横行し西郷隆盛にも迫っていました。
最終的には一人で歩くのもままならないほど病状は悪化し、最終的に陰嚢は人の頭ほどになっていたと言います。
遺体を西郷隆盛と断定できたのは陰嚢だった
最終的に西郷隆盛の死を確認した時に、陰嚢の腫れが大きな役割を果たしました。もちろん、右肩の傷や体型なども特定した一因です。