二口女とは?陰陽師やゲゲゲの鬼太郎に登場する女妖怪について紹介

二口女(ふたくちおんな)とは、その名の通り“二つの口”を持つ妖怪のこと。二つ目の口は顔にあるわけではなく後頭部にあり、『陰陽師』や『ゲゲゲの鬼太郎』などの作品にも登場する妖怪です。今回は二口女にまつわる話や生まれた経緯、危険性や登場する作品など紹介します。

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二口女とは?江戸時代から存在する妖怪

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二口女とは、「絵本百物語」に描かれてる妖怪です。

絵本百物語とは、1841年に刊行された日本の奇談集です。

妖怪の名称に挿絵をつけており、怪談話と画集を融合させた作品とも言えます。
ゲゲゲの鬼太郎のお馴染みの水木しげるは、この絵本百物語を参考資料としたとも言われています。
しかし、この絵本百物語とは別に「絵本怪談揃」という本が確認されており、こちらが絵本百物語より先に出版された可能性があると言われています。

二口女(ふたくちおんな)とは後頭部に二つ目の口を持つ女妖怪

姿は人間の女ですが、後頭部に大きな口を持ち、髪を蛇のように操り、食べ物を摂取します。
そのため、人前では決して食事をせず、誰もいない隙を狙って食べるのです。

二口女の正体とは?

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不気味な二口女ですが、どのようにして生まれたのでしょうか?
不可思議なその正体を紐解いていきましょう。

二口女の正体にまつわる話は二つ存在

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実は二口女は、仏教をモチーフにしたお話なのです。
他人に対し不遜な態度をとっていると、やがては自分に返ってくるという教えを説いています。

二口女にまつわる話①『絵本百物語』

竹原春泉 絵本百物語―桃山人夜話

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絵本百物語には、下総国(現在の千葉県)に伝承される話として描かれています。
この絵本百物語は、江戸時代に桃仙人によって発表されました。

先妻の子どもを餓死させてしまった後妻

ある家に、後妻が嫁ぎました。夫には前妻との間に娘がいましたが、後妻は自身が産んだ娘ばかりをかわいがりました。ろくに食事を与えられなかった前妻の子は、とうとう飢えて亡くなってしまいます。

それから49日が経過し、夫が薪割りをしていたところ、振り上げた斧が誤って後妻の後頭部に当たり、大きな切り傷ができてしまいました。
その傷はいつまでも治らず、やがて傷口が人間の唇のようなかたちになり、歯が生え、舌ができてしまうのです。

後頭部にある口に食べ物を入れると痛みが引いた

ひどく痛むようになってしまった傷口に、食べ物を入れると痛みが和らいだため、毎日ご飯を上げるようになりました。そのうち、その口から「自分の意地悪によって、前妻の子を殺してしまった。間違っていた。」と聞こえるようになったのです。

二口女にまつわる話②『食わず女房』

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こちらは、民話系で食わず女房として知られているお話です。
各地に伝承として言い伝えられていますが、その代表的なお話を紹介します。

ケチな男の元へと嫁いだ謎の女性

あるところに、お金はあるが非常にケチな男がおり、食い扶持が増えるのが嫌で結婚せずにいました。
「働き者で飯を食わない女房となら結婚してもよい」と公言していましたが、するとそこに希望に沿った女性が現れ、二人は夫婦となります。

後頭部の口からご飯を食べる女房

女房は飯も食べず、働いていましたが、米などの食料が異常に減り始めたことに男は気づきます。
自分がいない間に飯を食べているのでは?と怪しんだ男は、仕事に出かけるふりをして屋根裏から覗いてみました。
すると、女房が大量に米を炊いて後頭部にある大きな口に、どんどん米を放り込んでいました。

この二口女の正体は、山姥や蜘蛛など妖怪が化けたものでした。
男は離縁を迫りましたが、気づかれた二口女は男を自分の家へ連れていきます。
しかし隙をついて、逃げ出した男は菖蒲(しょうぶ)とよもぎの生えた湿原に身を潜め助かったというお話です。

男が助かった菖蒲については、こちらをご覧ください。

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