市場には出ない魚?カワムツの生態、釣り方、飼育方法について紹介

分布している地域

「カワムツ」が分布しているのは、西日本と東アジアと言われています。日本の分布をもう少し厳密に言うと、静岡県天竜川水系から富山県のラインを結んだ線から以西の淡水域です。近年、アユの放流にこの「カワムツ」が混じってしまい、その他の地方からも発見されることがあります。

カワムツの生態ってどんなもの?

市場に出回っていないことからあまり名前を聞かれない、けれど古来から生息していてさまざまな名前で呼ばれる「カワムツ」。実際の生態ってどんなものなのでしょうか。ここでは、特徴や生息環境を中心にその生態に迫ります。

カワムツの生態① 特徴

「カワムツ」の特徴としてあげられるのは、まずは身体の色ではないでしょうか。「コイ」というより「サケ」に近い、赤っぽい色が頭部の下面から腹部に見ることができます。これは成熟した「カワムツ」の特徴で、まだ小さいころはありません。基本的には褐色の背面、腹部の白っぽさ、そして身体の側面に暗色の幅の広い縦縞が特徴的な身体です。

オイカワとの区別の仕方

「カワムツ」と身体付きが似ている魚として、「オイカワ」があげられます。「オイカワ」との区別の仕方は、身体の側面にある縞模様。「オイカワ」は身体の側面に7~10本もの横縞が並んでいるのに対し、「カワムツ」は縦縞が1本あるだけなので、見分けがつきやすいです。

上記の画像は「オイカワ」。色と縦縞が「カワムツ」とは違います。

カワムツの生態② 生息環境

「カワムツ」は川の上流から中流域までの比較的水質がよく、流れの緩やかな場所に多く棲息しています。川岸の植物が覆い被さったような淵を好み、人や「オイカワ」などの他の魚があらわれると茂みの影へ逃げこんでしまうことから、少し臆病な性質がうかがわれます。

食べるものは

「カワムツ」は雑食の肉食性の魚で、小さな昆虫や水底に棲む底性動物、小魚といった動物質のものを好んで食べます。また、水草や石についた苔などの付着藻類といった植物性のものも食べるたりします。

カワムツの生態③ 生活史

「カワムツ」の寿命は飼育生活という刺激の少ない環境下で7年ほど、自然界においては3~4年ほどです。ここでは、各ステージにおける「カワムツ」の生態について見ていきます。

産卵期

「カワムツ」の産卵期は5月の中旬から8月の下旬頃の間で、順位の高い雄とそれに連れられた雌のつがいで行動し、流れの緩やかな浅瀬などに卵を産みます。産卵は日中に行われるのですが、これくらいになるとオスの身体にはきれいな婚姻色が現れてきます。頭部の下の部分や腹部、そして背ビレや腹ビレの縁の部分も鮮やかなオレンジ色となってきます。

仔魚、稚魚のあいだ

「カワムツ」は仔魚の前期の間は自分が生まれた産卵地の近くで棲息しています。これが、仔魚の後期、あるいは稚魚くらいになると、川の淵の部分、あるいは石や植物があり流れがゆるやかになっている部分を棲みかとし、流れてくるエサを待ち構えて棲息しています。この期間が生まれてからおおよさ2~3ヶ月くらいの間となります。

未成魚として成長するあいだ

「カワムツ」がまだ成熟しきらない未成魚として生きるのは、比較的長く1年~1年半くらいの間です。これぐらい成長してくると、川の瀬のかなり深いところまで掘れているところや、川の淵よりの植物の垂れ下がったところくらいまで出て棲息しています。しかし、まだ川の拓けたところまでは出で来ず、その行動範囲もまだ狭いままです。

そして成魚に

「カワムツ」は成魚になると、特にオスの身体がメスよりも大きくなります。さらに、オスの目の周囲などの頭の部分、尻ビレや尾ビレの部分などには「追星」が生じてきます。この「追星」もまた婚姻色の一種で、「カワムツ」の追星は白こぶ型のかたちをして現れます。生活環境は川の開けたに出て来はじめますが、流れのゆるやかなところを好む特徴はそのままで、基本的に川に落ちてきた昆虫や水生の昆虫を食べる肉食性ですが、そのような食べ物が少なくなってくると、川底の藻類も食べ始めます。

カワムツの釣り方について

「カワムツ」はどちらかというと渓流釣りにおける「外道」として知られ、他の狙い、例えば、「オイカワ」や「ウグイ」などを狙った渓流釣りをしているときに釣れることが多いです。ここでは、渓流釣りの王道であるルアーに毛ばりを使った「テンカラ釣り」を中心に、さらにエサを使った「ウキ釣り」をご紹介します。

カワムツの釣り方① テンカラ釣り

テンカラを使った渓流釣りがとてもシンプルでベーシックなものです。使われるタックルも竿、ライン、ハリス、毛ばりの4つで構成されます。ラインの重みを利用して軽い毛ばりを飛ばすので、竿はテンカラ専用のものを使います。また、テンカラ用のラインには、「レベルライン」「テーパーライン」「ストレートライン」などの3種がありますが、いずれも通常の釣りで使用するハリスよりも重みがあります。

テンカラ釣りで使われるハリスや毛ばり

「テンカラ釣り」で使われるハリスにはナイロンとフロロカーボンの2種類が使われていますが、フロロカーボンがおすすめです。フロロカーボンは糸の質に張りがあり、直進性に優れています。「毛ばり」の種類については様々なものがあり、それぞれに一長一短ありますのでユーザーの好みが分かれます。ただ、大きさについては、フライフック換算において12番くらいを標準として用い、食いが鈍いときにそれより小さな番手を用いるのがよいでしょう。

アタックのしかた

テンカラ釣りで重要なのはキャスティングにあります。特に、竿を振り上げて後方に移す動作である「バックキャスト」が重要です。肘を使って竿を時計の針の12時まではやすぎず、おそすぎず立て、そして力を入れすぎずに竿の弾力を使ってキャストします。アタリの見分け方は経験と慣れが必要となりますが、アタリから一呼吸おいて合わせることができればこちらのものです。

カワムツの釣り方② ウキ釣り

ウキ釣りは釣りの基本型とも言える仕掛けです。竿からラインを通し、ウキを繋げた後にハリス、針と繋げます。「カワムツ」は夜間もエサを補食しながら行動しているので、一日中狙うことが可能です。釣り場としては河川の上流から中流にかけてが多いのですが、とても警戒心が強く、人影を見つけてしまうと素早く逃げてしまうために注意が必要です。

カワムツの飼育方法

「カワムツ」は成魚となってもそれほど大きくはならず、また鮮やかな婚姻色を出すなど見た目も変化に富んでいるため、ご家庭の水槽で飼育されることも多くあります。ここではその飼育方法についてご紹介します。

飼育環境

「カワムツ」は比較的泳ぐ力が強く、水槽内を素早く動き回るので水槽は60cm~90cmの大きめの水槽が適しています。また、清流に棲息している種類ですので、水をきれいに清掃するろ過装置は必須です。ろ過装置のなかでも、外部フィルターや上部フィルターといったろ過能力に優れたフィルターを使う必要があります。

エサ

「カワムツ」は雑食性なので、何でもよく食べてくれる手軽さがあります。金魚用のエサでも十分に食べてくれますので、楽に飼育できることがこの魚が観賞用飼育に向く利点です。ただし、臆病な魚のため、あまり大きな物音や大音量の音楽などを日常的に使用する環境では、エサを食べてくれなくなることがあるので注意が必要です。

カワムツの味

「カワムツ」は市場には出回らないですが、ところによっては食用とされています。天ぷらやカラアゲ、佃煮などにされますが、雑食性からか同じような種類の「オイカワ」などに比べると味はおちますが、取り立ての「カワムツ」の天ぷらはとても美味しいです。知名度の低さからどうしても渓流釣りなどでは「外道」として扱われやすいですが、とてももったいないですね。

カワムツの生態、釣り方、飼育方法のまとめ

市場に出回らない魚「カワムツ」は、しかし西日本を中心に全国に見られ、多くの人に親しまれてきた魚です。食卓に登らないため、どうしても認知度の点で多くの魚に遅れをとりますが、渓流釣りなどではポピュラーな魚でもあります。また、雑食性であるため手軽に飼育できるので、観賞用の魚としても認められてきました。みなさんお近くの川に出向いて、この「カワムツ」ともっと親しんでみませんか?