そもそも「オヒョウ」とは?
オヒョウとはカレイ目カレイ科オヒョウ属に属する魚の一種で、最大で4mほどにも成長する世界最大のカレイの仲間です。英語ではhalibut(ハリバット)といいます。平たい形で両目は体の右側に寄っており、大きな口が特徴です。聞きなじみはないかもしれませんが、身はおいしく、実はよく食べられている魚です。
そもそもオヒョウとは北海道で呼ばれていた名前で、漢字では「大鮃」と書きます。「鮃」は「ひらめ」と読みますが、昔はヒラメとカレイが厳密に分けられていなかったためついた名です。また「大兵」という字もあり、これはオヒョウの獰猛な性格からあてられた字です。地方によってはオガレイ、マスガレイなどとも呼ばれています。
オヒョウの生態は?
オヒョウはオスが1~2m、メスは3~4mほどにまで成長する非常に大型の魚です。カレイの仲間では最大級で、泳ぐ様子は布団が泳いでいるようだともいわれます。なぜここまで大きくなるのか、オヒョウの生態を生息域・エサ・生活パターンの3つの要素から見てみたいと思います。
オヒョウの生態①:生息域
オヒョウは主にオホーツク海、ベーリング海、アラスカ湾などの北半球の冷たい海に生息しています。日本近海では青森県、日本海側の石川県以北などでも見られますが、いちばん多いのは北海道東部・北部です。水深30mから2000m程度の海底に生息しており、特に400mより浅い場所に多いようです。
オヒョウの生態②:エサ
オヒョウは肉食魚(フィッシュイーター)で、非常に食欲旺盛な魚です。小さいときはプランクトンや甲殻類、タコなどを食べますが、大型のものになるとマダラやスケトウダラなども襲って食べます。水鳥を食べてしまうこともあります。釣りでは魚の切り身やイカなども餌に使われます。
オヒョウの生態③:生活パターン
オヒョウは10月から翌年2月ごろに、水深200~500mほどの深い海域で産卵します。そして夏には水深約30~300mの浅い海域で活発にエサをとります。冬は深い場所のほうが水温が安定していることが多いので、寒い時期になるとやや深い場所へと潜っていきます。
1年で10cmほどしか大きくならず、成長は比較的遅い魚ですが、寿命が約30~40年と長いため巨大に成長します。150年以上生きているオヒョウが捕獲されたこともあります。ちなみに、メスのほうが成長が早く、寿命も長いようです。
オヒョウの食味は?
オヒョウは巨大ですが、普通サイズのカレイと同じく食べることができます。肉食魚ですがよく泳ぎまわるため淡白な白身で脂が少なく、身が締まっているのが特徴です。アラスカをはじめとするアメリカやカナダ、ヨーロッパ北部などでも獲ることができ、様々な国で食用にされています。
世界的には良好な評価
オヒョウは様々な国で食べられている食材ですが、どの国でもおいしいと評判の魚で、やや高級魚として扱われることが多いようです。イギリスなどではフィッシュアンドチップスの白身魚にオヒョウが使われることもあります。タラやカレイなども使われますが、オヒョウも人気です。
日本では大味と評価され、市場価値も低め
日本においてはオヒョウが水揚げされることはあまりありません。北海道では時期によってはスーパーに売っていることもあるようですが、関東以南で市場に出回ることはほぼないと言ってよいでしょう。
そのため日本では主要な食用魚という扱いではなく、他国と比べると評価は低めとなっています。味も脂が少なく淡白すぎるせいか大味とされていて市場価値も低く、他のカレイやヒラメ類と比べて安いことが多いです。
オヒョウがエンガワとして提供されてる?
エンガワといえば、そのコリコリとした食感で人気の寿司ネタですが、エンガワとはそもそも何なのか知っていますか?そういう名前の魚がいるわけではなく、一般的にはヒラメのひれの付け根の部分の身のことなのです。ひれは良く動かす部位なので筋肉が発達しているために食感がよく、そのうえコラーゲンもたっぷりです。
エンガワはヒラメ1匹から4貫ほどしか取れないため、一般的には高級ネタとして知られています。しかし100円の回転ずしでも見たことある方もいるのではないでしょうか。実はそれにオヒョウをはじめとするカレイが使われているのです。オヒョウは巨大なため1匹から大量のエンガワが取れることから、安価に提供できる秘密となっています。
オヒョウを刺身で食べるのは難しい
オヒョウは刺身で食べると淡白で噛むほどにうまみが出ておいしいそうです。一方で脂や赤身のうまみなどが好きな人には物足りないという意見もあり、食べてみたいところですが、オヒョウはやや鮮度の劣化が早い魚で、生の刺身で食べられるのは稀です。そのため基本的には冷凍品が流通しており、エンガワのお寿司も解凍品であることが多いです。
カレイの切り身も実はオヒョウ?
スーパーで売っているカレイの切り身も実はオヒョウである可能性があります。オヒョウは国内では主に北海道で獲れ、北海道ではオヒョウとして店頭に並ぶこともあるようですが、本州以北でスーパーで見かけることはほぼありません。
しかしアメリカ(アラスカ)、カナダ、グリーンランドなどから輸入されたものは販売されていることがあるため、鮮魚売り場で切り身が売っていたり、お惣菜として食べていたりする可能性があり、オヒョウを知らないという人も実は口にしている可能性が高い魚なのです。
オヒョウの調理方法を解説!
ここからはオヒョウのおすすめの調理方法をご紹介したいと思います。オヒョウは脂が少なく淡白な味なのでどんな味付けにもよく合いますが、油と一緒に調理したり、うまみの強い食材と合わせたりするとよりおいしく食べることができます。そのため、ムニエルやフライ、煮つけが最適です。
オヒョウの栄養は?
オヒョウの主成分はタンパク質です。脂肪が少ないので大変ヘルシーな食材といえます。また、美肌や目によいレチノール、代謝を支えるビタミンB1・B2、貧血を予防するビタミンB12や葉酸などのビタミン・ミネラルも含んでおり、特に女性や子どもなどにぜひ食べてほしい食材です。
オヒョウの調理方法① 唐揚げ野菜あんかけ
オヒョウは唐揚げにするだけでも十分おいしいですが、ひと手間加えて野菜入りのあんをかけてみましょう。野菜でボリュームも栄養も満点になるうえ、とろりとした甘辛いあんが絡まり、絶妙なおいしさになります。
オヒョウの唐揚げ野菜あんかけに必要な材料は?
- オヒョウ 2切れ
- 塩 少々
- 小麦粉または片栗粉 適量
- 揚げ油(サラダ油) 適量
- お好みの野菜(にんじん、玉ねぎ、しいたけ、ニラ、ピーマンなど)
- だし汁 1カップ
- 砂糖 大さじ1/2
- 酒 大さじ1/2
- しょうゆ 大さじ1+1/2
- 水溶き片栗粉 大さじ1(様子を見て加減)
オヒョウの唐揚げ野菜あんかけの作り方は?
基本的には唐揚げを作り、同時進行であんを作り、ふたつともできたら唐揚げにあんをかけていただきます。唐揚げのサクサク感と、オヒョウの身のふわふわ感があんのとろみと相まって非常においしいです。
オヒョウの唐揚げ野菜あんかけ作り方① あんを作る
まずはお好みの野菜を切ります。千切りまたは薄切りにして、大きさをなるべく揃えると火の通りがよく、出来上がりが美しくなります。そして鍋にだし汁を入れ、硬い野菜から順に入れて柔らかくなるまで煮ます。
その後砂糖・酒・しょうゆを入れてひと煮立ちさせた後、水溶き片栗粉を入れてお好みのとろみにします。お玉などであんをかき混ぜながら、中心の1点に水溶き片栗粉を落とすようにするとだまにならずにうまくできます。
オヒョウの唐揚げ野菜あんかけ作り方② 唐揚げを作る
オヒョウは塩少々を振ってしばらくおき、出てきた水分をよく拭きとってから小麦粉または片栗粉をまぶします。揚げ油を160℃ほどまで熱し、粉をまぶしたオヒョウを入れてきつね色になるまで揚げます。オヒョウに骨がついていた場合も、じっくりと揚げれば骨も食べられるようになります。
オヒョウの唐揚げ野菜あんかけ作り方② 盛り付け
唐揚げができたらお皿に乗せ、その上からあんをかけます。たっぷりかけるか、かけない部分を作るかはお好みで。あつあつのごはんと一緒にいただきましょう。お好みでコショウや山椒などを振ってもまた少し香りが変わっておいしいです。
オヒョウの調理方法② トマト煮
オヒョウは様々な味付けに合いますが、少し変わったレシピとしてトマト煮をご紹介します。トマトはうまみ成分が多い食材なので、オヒョウの淡白な味にうまみとコクをプラスしてくれます。パンやワインと一緒にいただきましょう。
オヒョウのトマト煮に必要な材料は?
- オヒョウ 2~4切れ
- 塩コショウ(あればハーブソルト)少々
- オリーブオイル 適量
- カットトマト缶 1缶
- 玉ねぎ 小さめ1個
- にんじん 1/2本
- しめじ 1/2株 その他、キャベツやナスなどお好みの野菜を入れてもOK。
- にんにく 1かけ
- コンソメ 1個
- ソース 大さじ1
- しょうゆ 小さじ1
- 塩コショウ お好みで
オヒョウのトマト煮の作り方は?
まずオヒョウをソテーした後、トマトソースを作ってその中で煮込みます。短時間で煮るとオヒョウのしっかりとした身が味わえ、しっかり煮込むと身がほろほろになって、どちらもおいしいです。トマトソースが余ったらパスタなどに絡めるとおいしいアレンジレシピができます。