流氷の天使「クリオネ」とはどんな生物?
クリオネは、少し猫にも似た頭と、羽をはばたかせるように泳ぐ姿は天使にもたとえられる可愛い生き物です。虫やプランクトンなどにも見えますが、本当は何なのでしょうか?基本的な知識を見ていきたいと思います。
クリオネは分類上は貝
意外に思うかも知れませんが、実は巻貝の仲間です。貝殻がないのに?びっくりしますよね。でも実を言うとナメクジやウミウシなど貝を持たない貝類は意外といるのです。分類上は軟体動物門腹足綱裸殻翼足類ハダカカメガイ科に属している事からも分かる通り、日本語ではハダカカメガイと言います。ちょっと恥ずかしい名前ですね。
クリオネの生態・生息域
クリオネは北極・南極に近い冷たい海に分布しており、日本でも北海道沿岸などに生息しています。寿命は2~3年と言われており、孵化したばかりの時は貝殻がありますが、2週間ほどで殻を捨て1年ほどで成体になります。
翼足(よくそく)という羽のような部分を動かして泳ぎますが、潮の流れに逆らう力はないためプランクトンに含まれます。流氷と一緒に泳ぐイメージがあると思いますが、流氷があるとそのおかげで波が打ち消されて流れが弱くなるため、静かで住みやすい環境なのです。
クリオネにはいくつか種類が
実は分類上の同じ仲間は5種類います。よく水族館などで見かけるハダカカメガイのほかに、10cmにまで成長するダイオウハダカカメガイ、南極海に生息するナンキョクハダカカメガイ、オホーツク海にいるダルマハダカカメガイがいます。また、2019年4月現在正式名は決まっていませんが、2017年には富山湾で新種が発見されています。
クリオネの別名
流氷の下などで見つかる事が多いクリオネは、その見た目や泳ぎ方から「流氷の妖精」や「氷の天使」などという可憐な別名がついています。英語では裸殻翼足類の仲間を「Sea angel」と呼びます。
そもそもクリオネという呼び方は学名の「Clione limacina(クリオネ・リマキナ)」からきています。「Clione」はギリシャ神話に出てくる海の精クレイオが由来で、「limacina」とは「ナメクジに似た」というギリシャ語だそうです。
クリオネは何を食べるの?
クリオネは何を食べているか考えた事がありますか?天使や妖精にたとえられる事から水だけで生きているとか海藻を食べるなどというイメージがあるかも知れませんが、意外なものを食べて生きています。
実はクリオネは肉食!
かわいらしい見た目とは裏腹に、実際は肉食の生物です。ただ、孵化したばかりのころは植物性プランクトンを食べますが、成長するとミジンウキマイマイが主食になります。これはクリオネと同様に翼足を使用して泳ぐ巻貝の一種です。
一生に1度しか食べないクリオネも
クリオネは成体になると半年から1年ほどは何も食べずに生きられると言われています。そのため死ぬまでに1回しか食事をしないものもいます。これは、餌の数が少ないためとも言われていますが、あまり研究が進んでおらずまだはっきりとした理由や生態は解明されていません。小食なため捕食の瞬間はとても貴重で必見です。
可愛いけどちょっと怖い他の水中の生き物について知りたい方はこちら。
【恐怖】クリオネの捕食シーンを見てみよう!
天使のような可愛らしさとは裏腹に、なんと捕食の場面は悪魔にたとえられます。元々は2003年にフジテレビ系列で放送された「トリビアの泉」という番組で有名になりました。においで獲物を察知すると、頭部が割れて6本の触手が出てきて一瞬で捕まえます。この様子をまずは動画でチェックしてみましょう。
クリオネ恐怖の捕食動画①
こちらは新江ノ島水族館で撮影された動画です。ミジンウキマイマイに気づいた個体が、触手を出して捕まえようとしますが1度は失敗します。その後もう1度チャレンジし、捕獲に成功する様子が撮られています。動画の9秒のところでスロー映像が入るので、触手が出る一瞬の瞬間をよく見る事ができます。
クリオネ恐怖の捕食動画②
こちらは研究者の方が撮影した動画です。獲物を狙って触手を出そうとしている状態から、動画の12秒のあたりで触手を出すところまでをしっかり見る事ができます。こちらもはじめは失敗してしまいますが、その後無事に捕獲し、食べるまでが撮影されています。
クリオネの捕食の瞬間!バッカルコーンとは?
捕食に使われる6本の触手は正式名称を「バッカルコーン(口円錐)」といいます。これを聞くとタレントの中川翔子さんが使用するしょこたん語をイメージする人も多いかも知れません。中川さんは一時期クリオネを飼っていた事があり、響きを気に入って使うようになったようで、喜びの最上級の表現となっています。
バッカルコーンは最大で体長の半分以上に伸ばす事ができ、その真ん中にある口にはカギ状の突起があって、それを使用して餌の巻貝の殻の内部だけを食べます。動画では一瞬の出来事だったので、こんどは画像でよく見ていきたいと思います。
クリオネの捕食画像①きれいに開いたバッカルコーン
北海道紋別市にある北海道立オホーツク流氷科学センターで撮られた画像です。こちらは屋外のカニの爪のオブジェでも有名で、クリオネもたくさん飼育しています。この写真では、バッカルコーンを開いた瞬間をきれいにとらえています。触手の先とその真ん中にある口は赤い色をしているのがよくわかります。
クリオネの捕食画像②餌がなくても出すときも?
こちらは新江ノ島水族館で撮影された画像です。左上に写っている個体が触手を出しています。しかし右側に写っている個体はそのような様子は見受けられず、餌のような物も写っていません。すでに餌が逃げてしまった後か、別の物に反応してしまったかもわからないですが、餌がなくても触手を出す可能性もあるのかも知れません。
クリオネの捕食画像③普段からは想像も出来ない姿
こちらは撮影場所が載っていませんが、かなり多くのクリオネが飼われている場所のようです。触手を出している個体を2枚にわたって撮影しており、背景が黒い事もありはっきりと観察する事が出来ます。特に下の写真は元の姿からは想像もつかない姿に写っています。