世間を賑わせたスタンフォード監獄実験。実験内容をモチーフにした映画がある?

実験中断の前日には襲撃事件なども発生(暴力は規則で禁止されていた)。この実験について、ジンバルドー教授は後に「自分自身が危険な状況で有るとも把握できないほどに、その状況に飲み込まれていた」とコメントしています。また、看守役の人間は「聞いていた話と違う、実験を続行したい」と強く反論してました。

実験の結果は?

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このブロックではこの実験から読み取れる心理効果を詳しく見ていきます。この実験は当初2週間を予定していましたが、6日で中断となってしまっています。そこには権力の暴走がありました。権力を持つ人間は持たない人間の自尊心を傷つけていたのです。そこには「権力への服従」「非個人化」という心理効果が有りました。

権力への服従

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権力を持つ人物は、持たない人物の人権を無視した行動に出るようになります。今回の実験でも独房に見立てた倉庫に一人だけ監禁し、バケツをトイレ代わりとして、そこから一切出さないようにしたのです。他にも連帯責任で腕立て伏せ、周りと徒党を組もうとした囚人役を看守役複数人で詰める、という事も行われました。

役割の違いだけで、囚人役の自尊心を傷つける光景は異様とも取れます。しかしこれこそが、この実験で証明したかったことなのです。権力の格差がその空間を支配しているとき、権力を持つ人間も自分の権力へ服従してしまいます。そこには完全な縦の関係ができあがっていて誰も反抗することができません。

非個人化

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権力を持つ者の元々の性格はほどんど関係なく、権力をもっただけで誰でも変貌してしまう。これを「非個人化」と言います。今回の実験で例えると、看守役と囚人役はくじ引きで決定しました。サディストな性格の者、人種差別意識が強い者は実験から外していました。つまり、至って普通の大学生たちがフラットな気持ちで参加したのです。

それにもかかわらず、権力の暴走を起こしてしまい、囚人役の自尊心を傷つける行動をとったのはなぜなのでしょうか?それは看守役という権力が、看守役の一人の人間の個性を殺してしまったからです。役割を与えられ、環境を与えられることで自分の個性や感性を捨てて、役割に徹してしまうというのが、この「非個人化」なのです。

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この「非個人化」は今回の実験だけでなく、歴史的なホロコースト(大量虐殺)の場でも多く見られる現象です。もっと身近なところに置き換えることもできます。職場や学校で、状況によって言われたとおりにする。または言われた通りの指示を出す、ということを繰り返すと自分の”個人としての個性”がなくなってしまうのです。

実験を行った「フィリップ・ジンバルドー」はどんな人物?

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この実験の責任者であるフィリップ・ジンバルドーは1933年に生まれて、現在86歳になります。思春期には南ブロンクスというニューヨーク都心部のスラム街で育ちました。学歴はブルックリン大学卒業、イエール大学大学院修了です。現在スタンフォード大学の名誉教授です。社会心理学に関する書籍を執筆しています。

彼の研究内容は?

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彼の研究を一言で言ってしまえば「善と悪」の研究です。この「善と悪」に対し、人はなぜ悪に染まってしまうのか?どこからが悪なのか?怪物、または英雄になる要因とは何なのか?というテーマを役割・権力・環境という視点から分析を研究内容としています。こちらの動画もご覧ください。

「普通の人物がどうやって怪物、または英雄になるのか?」という公演を行っています。善悪の根本を研究し、人は環境によって悪魔になりえてしまうのか。という研究です。スラム街で育った彼は、周りの友人達がドラッグをやり、トラブルに巻き込まれていく姿をとても近くで見ていたと言います。

そこから良い友人が悪い方向に誘い込まれるのを何度も見て、善と悪とは何なのか?その境界線はどこなのか?ということを考えるようになり、それが生涯の研究テーマとなります。堕天使「ルシファー」からルシファーエフェクトという言葉を定義し、書籍を執筆しています。

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