イモガイとは?
イモガイは、大きさが10~20cm前後ほどで、23cmもの大きさもある個体もいます。貝殻の形は円錐型であり、殻口が非常に狭いのが特徴です。鮮やかで複雑な美しい模様の個体が多く、アートや装飾品などコレクターの間では人気のある貝類です。
イモガイ科の貝類の総称
イモガイというのは、「イモガイ科」の貝類の仲間、または貝殻が「イモガイ型」の形をしている貝類の仲間の総称です。ミナシガイともいわれます。海に生息しており、浅瀬から深海までと広く生息しており、サンゴ礁の周辺や岩場、砂浜など人目につきやすい場所でも見かけることがあります。
猛毒をもつ
イモガイは一見どこにでもいる普通の貝ですが、実は見た目とは裏腹に強力な毒をもっています。それを知らずに不用意に拾い上げて毒を刺されてしまったり、刺されたとしても初期症状はほとんどないので危険視することなく、放置してしまったために大事になってしまうことが多いです。
イモガイの種類
イモガイは、現在約500種類もの種類があるとされています。種類によって食べるものが違ったり、獲物を狩る時のスタイルにも違いがあり、毒性の強さもそれぞれ違います。全体の特徴としては、非常に緩慢な動きをしており、岩陰や砂浜などでじっとしているところを発見することが多いです。
日本には100種類以上存在
現在イモガイは、日本近海だけでも約120種類の生息が知られており、全種類共通して肉食ですが食べる動物に違いがあり、小魚などの脊椎動物を食べる種類・貝類など軟体動物を食べる種類・ゴカイなどの多毛類を食べる種類の3グループに分けられ、世界も含めた全体のおよそ8割がゴカイなどの多毛類を食べる種類です。
魚を捕食するものは特に危険
イモガイの毒の強さは、食べるものによって変わってきます。なかでも小魚などを食べる種類は非常に強い毒性をもっており、小魚程度ならば即死してしまうほどの強力な毒性をもっています。ほかにも、一部の貝などの軟体動物を食べる種類のイモガイも、強力な毒性をもっています。
イモガイの生息地
イモガイは、熱帯・亜熱帯などのサンゴ礁が多くみられるような暖かい地域に多く分布しています。日本の場合、熱帯・亜熱帯ともなる温暖な地域は限られていますが、現在温暖地域以外の海でもイモガイの生息が確認されてきていますので、他地域の海へ出かける方も十分に警戒が必要です!
日本では沖縄周辺
イモガイは、温暖な地域に生息しますので、日本では沖縄周辺を中心に多く生息し、他地域に比べると種類が格段に増えており、沖縄周辺の海域だけでも、約100種類以上のイモガイが生息しています。現地ではイモガイによる被害も報告されており、殺人貝ともいわれています。
温暖化により生息域が拡大
イモガイが生息しているのは沖縄周辺の海域だけではありません。温暖化により、海の温度が上昇したために生息域が拡大し、現在は鹿児島、高知、和歌山、千葉などの海域にも多くの種類が確認されています。生息域は確実に広くなっていっています!「南の海ではないから大丈夫。」などということは決してありません!
イモガイの猛毒は超危険
イモガイの持つ毒は恐ろしい神経毒です。神経毒といえば、フグ毒でよく知られる「テトロドトキシン」や、コブラや海ヘビなどがもつ「へビ毒」などが知られていますが、イモガイの持つ毒はこの「テトロドトキシン」や「ヘビ毒」とほぼ同等で、種類によってはそれ以上に強力な毒をもつ個体がいます。
神経毒を操る
イモガイには、神経毒の毒腺がついた銛をもっています。これは歯舌から進化したしたもので、「毒銛」とよばれています。「矢舌」ともよばれ、まさに銛のように先端は鋭くとがっており、獲物に突き刺した後に抜けてしまわないように逆トゲ(上下二段のかえし)がついているので、確実に獲物に毒を注入することができるのです。
コブラよりも強い毒性
毒をもった生物の代表格といえば、コブラです。なかでもインドコブラは強力な神経毒と毒量を持ち、ニホンマムシの35倍もの強力な毒をもっているといわれています。そして、今回紹介しているイモガイの種類の中には、なんとそのインドコブラの37倍もの強さがある毒をもつ種類もいるのです!
イモガイの毒の仕組み
基本的にイモガイは動きが非常にゆったりとしていて、なめくじのように緩慢な動作しかできません。獲物を捕食する時の行動も、2種類のタイプがおり、「獲物を探して動き回るタイプ」と、「一つの場所で動かず獲物を待ち伏せするタイプ」に分けられます。待ち伏せするタイプは主に岩場に隠れていたり、砂の中に潜っていたりします。
吹き矢のように毒銛を飛ばす
前述の通り、イモガイはゆっくりとした動きしかできないので、すばやい魚などの獲物を追いかける、といったことができません。そこで使用するのが毒銛です。体を早く動かせないかわりに、毒銛を吹き矢のように素早く飛ばすことで獲物を捕食することができ、軍手やウェットスーツならば簡単に突き破ることができてしまいます。
餌をとる時に使う
イモガイが放った毒銛は獲物に刺さると毒が注ぎ、獲物を麻痺させたあとに大きな口で丸呑みして捕食します。自分と同サイズの獲物でも難なく丸呑みすることができます。このように本来、毒銛は獲物を捕食するために使われることが多く、捕食以外で毒銛を使うのは身の危険を感じた時なので、手を出さなければこちらに害はありません。
イモガイによる死亡例も多数
イモガイは、比較的人目につきやすい場所にいることが多く、毒をもつ貝類として知名度もまだ低いほうです。尚且つその殻の鮮やかさ、美しさのために不用意に触れたり、気づかずに踏んでしまったりして外敵として判断され刺されてしまうケースがほとんどです。そして、その毒性の強さから死亡に至ってしまう例が多いのも事実です。
刺されるとしびれ・めまいが起こる
イモガイ類がもつ毒は神経毒で、貝毒「コノトキシン」という名称があります。刺された直後はあまり痛みは感じないので、危険視せずそのまま処置などをしない場合が多いです。しかし、数十分後には患部に激痛が生じ、しびれ・はれ・めまい・発熱・嘔吐といった症状が起こりだし、だんだん危険な状態になっていきます。
最悪の場合死に至ることも
イモガイの中で最も毒性の強い「アンボイナガイ」。あらゆる生物の中で最強といわれるほどの強力な毒をもち、1個体がもっている毒はおよそ人間30人分!刺された場合はさらに血圧や視力の低下・全身まひ・呼吸困難を起こし最悪死に至ります。刺された場合の致死率は6~7割で、数時間で死に至ってしまう可能性があります。
アンボイナガイ以外のイモガイの種類
アンボイナガイはイモガイの種類の中で最強の毒をもっていると紹介しましたが、ほかにも強力な毒性をもつイモガイが多くいます。毒自体は基本的に同じなので、症状や対処法は同じです。今回はそのイモガイの種類の中からもう2種類ほど紹介します。
貝食の中では最強!タガヤサンミナシガイ
タガヤサンミナシガイは、大きさは7~10cm。アンボイナガイとほぼ同等の毒性を持ち、イモガイ科の中で非常に強力な毒性をもつ貝のひとつで、実際に死亡事故が確認されており、非常に危険視されています。主食は貝などの軟体動物で、同じイモガイの仲間でも例外なく捕食してしまいます。