ウマバエ(ヒトヒフバエ)は日本にも生息する?寄生時の症状や摘出方法を解説

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ですがどちらの手段を用いるとしても慣れない人が実践するのは非常に危険です。引き抜く方法を見ると簡単そうに感じますが、幼虫の体は簡単に抜け落ちない様に全身を覆う無数のトゲがあり、その上奥で曲がっています。慣れない人が構造を無視して無理に引っ張ると幼虫を潰してしまう可能性が有るのです。

そしてウマバエ(ヒトヒフバエ)の体を潰すと体液が漏れだし血液中に侵入するとアナフィラキシーショックを引き起こしてしまう事も。また例え切開で有っても幼虫の体を良く知らなければウッカリ幼虫ごと切り刻む事にもなりかねませんので、いずれにしてもここは素直に専門家の手に委ねるのが賢明でしょう。

摘出後には傷跡が残る

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幼虫を除去した傷跡は寄生状態に大きく左右され軽ければ虫刺されの痕程度で済む場合も有りますが、群生化されるなどして広範囲に渡って傷付き重症になると最悪の場合皮膚移植が必要になる事も。

また処置後は再感染などを防ぐ為に傷口を確り洗浄して消毒を施す必要が有ります。切開した場合は言うまでもなく、引き抜き治療を行ったとしても生傷には違いありませんので万全を期さなくてはなりません。

ウマバエ(ヒトヒフバエ)を自分の体内で育てた昆虫学者

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世界には寄生虫の研究に際して自らを実験対象として差し出す、有り難くも奇特な学者が度々現れ私達の安全な生活に貢献してくれていたりします。このおぞましいウマバエ(ヒトヒフバエ)で有っても例外ではなく、何人かの猛者が挑戦しています。その中の一人、日本人昆虫研究者の西田賢司さんをご紹介しましょう。

コスタリカの国立公園で寄生

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昆虫学者である西田さんは中米コスタリカ共和国の国立大学で昆虫学を修めた後もそのままコスタリカに留まり、同国の国立公園を探検をしつつ多くの新種発見に貢献しています。そんな研究探検の最中、左手首と臍の横辺りに寄生されました。

初めは中米では珍しくない虫刺されと考えていた西田さんでしたが、傷は治る処か大きくなる一方で気付いてから2週間が過ぎた頃、患部に小さな穴が開き液が滲み出ると共に出入りする何かを発見したのです。それがウマバエ(ヒトヒフバエ)でした。

なぜ体内で飼育をすることにしたのか

わっ! ヘンな虫~探検昆虫学者の珍虫ファイル

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ウマバエ(ヒトヒフバエ)は蚊を媒介者として人に卵を付ける為に成虫を目にする機会は殆ど無く、身を寄せていた大学にも標本すら無い状態でした。中米でのヒツジバエ科による家畜への被害は深刻ですので打って付けの研究素材が手に入ったのなら逃す手は有りません。そんな訳で西田さんは自ら被験者を買って出たのです。

念の為述べておきますが、これは飽くまでも専門家による細心の注意を払った「実験」です。設備の整わない民家で素人が安易に真似をするのは極めて危険な行為となるでしょう。万一口から卵が入る事になれば大変な事になります。

 

飼育の結果は

 

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こうして飼育を始めた西田さんでしたが一か月が経った頃に手首に寄生していた幼虫が死んでしまいました。腹に寄生した方が元気に大きく育っている事から死因を部位が肉薄だったからではと憶測しています。腹の患部は大きく膨らみ幼虫が頭を出す様子が窺え、西田さんは隈なく観察しました。

二か月が過ぎると丸々太った棘だらけの幼虫が患部から転がり出ました。蛹になる為に土に落ちる行動が目の前で行われたのです。ですが落ちた先は土ではなく脱脂綿の上。幼虫は数日間蛹化に挑みましたが遂に蛹になり切る事なく途中で死んでしまいました。我が身で育てた事で情が移ったのか、その様子に西田さんは悲しみを覚えたと記しています。

ウマバエ(ヒトヒフバエ)は日本にいる?

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結論からズバリ入りますが、日本にもウマバエを初めとするヒツジバエ科のウシバエやアカウマバエなどは居ますが、人に寄生するヒトヒフバエは中米から南米など熱帯に生息する昆虫なので日本の寒暖の激しい気候では越冬出来ません。ですが被害報告が全く無い訳では有りません。

日本での寄生例はある?

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厳密には日本での被害とは言えませんが、ウマバエ(ヒトヒフバエ)の生息地へ渡航した旅行者が寄生されて帰国した例が2007年までに34件報告されています。今後も旅行者が増えればその分件数は増えて行くでしょう。

実はすでに日本に生息してる?気になる証言も

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ネット上で海外渡航の経験が無いにも関わらず寄生されたと言うブログ記事が上がってました。ですが写真などの掲載が無く皮膚の中を移動すると言う描写が有るのでウマバエなのかは疑問が残ります。

しかし温暖化によって年々気温が上昇し、本来熱帯を棲みかとするヒアリやサシバエ、デング熱で騒がれたネッタイシマ蚊などが都市部で確認されている例も有りますので、いずれ定着してしまう日が来るかも知れません。

寄生されないための予防方法

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ですが実際に日本で確認されても旅行先が生息地域であっても正しい知識を身に付けておけばいざと言う時に慌てずに済むものです。寄生された時の処置は既に述べましたのでここでは予防法についてご紹介します。

と言ってもそう難しい話ではなく蚊取り線香を焚いたり肌に虫除け剤を塗る一般的な蚊避け対策をする事になります。手が他にないとも言えますが渡航先でも有効な一番確実な対処法です。虫除けに関してはこちらの記事が参考になります。

また生息域に渡航する際にはアイロンを用意する事をお勧めします。何処で卵が付着するか判りませんので衣服へのコマメなアイロンがけが意外と効果的なのです。現地で入手が難しそうなら小型のものを持参するのも良いでしょう。

ウマバエ(ヒトヒフバエ)はペットにも寄生する

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人の場合は予防も処置もそれなりに出来ますがウマバエ(ヒトヒフバエ)を初めとするヒツジバエ科の被害が深刻なのは常に動物の方です。家畜はもとより人と親密に暮らす犬や猫などのペットも例外では無く、寧ろ人より寄生虫の脅威に晒されています。

寄生された時の症状は?

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ペットへのウマバエ(ヒトヒフバエ)の寄生は表皮の傷口からが多く成りますが、本能として毛繕いをしますのでどうしても人より内臓に向かい易く成ります。コマメなブラッシングなどで普段からチェックして傷の有無に加えて媒介者となるダニやノミも見逃さない様にしてあげて下さい。

問題なのは内臓へ寄生された場合です。馬の例が参考になりますが胃腸に寄生された場合は炎症によって食欲低下や不眠、下痢、血便といった症状が現れます。家畜より身近な分体調の異変を察知するチャンスは有りますから何とか重症化する前に気付いてあげたい所です。何かあれば迷わず動物病院で診察して貰いましょう。

ペットからの摘出方法

ペットであっても対処法は人とほぼ同じで動画の様に皮膚蝿蛆症なら酸欠にして抜くか局所麻酔して切開かとなり、消化器蝿蛆症に至ってしまえば全身麻酔の上で開腹しなければなりません。ペットの小さい体には全身麻酔だけでも大きな負担と成りますので、やはり早期発見が重要となるでしょう。

ウマバエはそんなに怖くない?

ウマバエ(ヒトヒフバエ)が本当に怖いのは自力で対処出来ない動物たちで一般的な人への寄生の仕方で有れば毒も無いので早めに適切な処置をすれば然程大した事にはなりません。怖いのは内臓に寄生されてしまった場合に限ります。

本当に怖い寄生虫は他にいる

人や動物に寄生する生物の中には「広東住血線虫」の様に部位を問わず体中に蔓延り、ウマバエより容易く脳内にまで侵入する種も少なくありませんのでウマバエは未だマシな方かも知れません。「広東住血線虫」の話はこちらで詳しく解説されてます。

ウマバエ(ヒトヒフバエ)を含む寄生虫には注意しよう

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生息地域から外れた日本、尚且つ家畜とも縁の薄い都市部で暮らしていると忘れがちなウマバエ(ヒトヒフバエ)ですが、毎年最高気温を更新し海水温度も上昇し続けている今はいつ何時日本に定着するか判りません。

そうならないとしても海外旅行で寄生される可能性は十分有りますので、多少なりともその存在を頭の片隅に置いておいた方が良いかも知れません。そしてただ無闇に恐れずに確立された対処法を即座に思い出せるようにしておきましょう。

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