こげんたちゃんを襲った残酷な事件(福岡猫虐待事件)!世間を動かしたネットの声

ネット上で虐待方法を募り実行した画像をあげていくという非常に残酷な事件、こげんたちゃん事件。ネットの声が世間を動かし犯人逮捕へとつながりました。今回はこげんたちゃん事件(別名福岡猫虐待事件)の詳細や当時の世間の声、犯人の今について紹介いたします。

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趣味は、読書、映画鑑賞、漫画、アニメ、動画投稿サイト閲覧、麻雀、チェス、料理、家庭菜園、養蜂、旅行、ドライブ、歴史、民俗研究、ネットオークション、カクテルなどです。日本各地に移り住み、仕事やアルバイトもいろいろとやってきました。
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全国のペット愛好家が胸を痛めた「こげんた事件」

あなたは、動物が好きですか?おそらく多くの人が犬や猫にいとおしさを感じ、人によってはペットとして家族同然に付き合っていると思います。もちろん、中には動物が怖い、苦手、不快に思うような人もいるでしょう。そういう人たちの感覚を否定することはできません。

しかし、人間と違う生き物だからといって、その命を軽んじ、おもちゃのように傷つけることは、どのような人にも許されることではありません。今から十数年前、動物虐待の痛ましさを多くの人に強烈に植え付けた、ある出来事がありました。それが「こげんたちゃん事件」です。

別名「福岡猫虐待事件」

Andrys / Pixabay

「こげんたちゃん事件」は2002年(平成14年)に起こった動物に対する暴力事件です。犠牲になった猫の名前(後につけられた)が「こげんた」であることからこのように呼ばれています。犯行現場が福岡県であったことから、「福岡猫虐待事件」と呼ばれることも多いです。

その他にも、「ディルレヴァンガー事件」「インターネット猫虐待事件」などとも呼ばれ、当時ネットやマスメディアなどで大きく取り上げられました。いかにこの出来事が、世間の注目を集めたかがわかります。

猫の虐待画像をネットに公開

Free-Photos / Pixabay

今回紹介する出来事が他の動物虐待の事件と性格を異にしている点は、危害を与える様子をデジカメで撮影し、その画像をネット上に晒し上げていたところです。その生々しさゆえに、多くの人々に、より強いショックを与えました。

あらゆる人間が、匿名で、不特定多数の人へ向けて物事を発信できる、ネット環境が発展した時代だからこそ行えた、おぞましい所業です。また、その後の顛末も、ネット時代ならではだったと言われています。

こげんた事件の登場人物

Dimhou / Pixabay

痛ましい惨劇の現場には一人の人間と一匹の猫がいました。か弱い生命を痛めつけ、殺害し、その様子をネット上に晒し上げるという暴挙に出た人間。そして、彼の魔の手にかかり、目を覆いたくなるような残虐行為の被害をうけた猫です。

加害者:松原被告

Alexas_Fotos / Pixabay

1975年生まれの男性。今回紹介する事件の犯人です。彼は 広島県呉市の三津田高校を卒業後、 九州大学工学部物質科学工学科に入学し、機能物質化学クラスを専攻します。平成10年度に大学を卒業して 光学機器メーカーに就職しますが、後に辞職。27歳のこの当時は無職でした。

被害者:こげんたちゃん

犯行の犠牲になったのは一歳未満の若い野良猫で、もともと名前はありませんでした。有志によって執り行われた葬儀の際に、戒名として付けられたのがこの名前です。背中が黒くお腹が白い色をしており、右側の目がしらにある縞模様が特徴的です。ネットに上げられた画像を鑑定した獣医師によって、死亡が確認されました。

心無い人間に捕らえられる一週間ほど前から、現場周辺のゴミ捨て場付近で見かけられるようになったと、近隣の住民は話しています。元は人に飼われていたとのことで、人に対する警戒心は薄かったと考えられています。

こげんた事件はなぜ起きた?

Andrys / Pixabay

「反響が大きすぎてびっくりしている」逮捕された被告は、その後このように供述しました。彼の行ったことは、本人にとっては単なる悪ふざけのつもりだったのかもしれませんが、世間の多くの人間にとっては狂気の沙汰であり、非人道的な行いでした。そんな、彼の起こした事件の全容を、今一度追っていきます。

2ちゃんのたった1つのスレ

Free-Photos / Pixabay

ことの発端は02年の5月6日、夜の11時過ぎのことです。電子匿名掲示板サイト「2ちゃんねる(現、5ちゃんねる)」のペット大嫌い板という名の掲示板に、「おい!おまえら」とのタイトルでスレッドが立てられました。

スレッドを立てたのは「ディルレヴァンガー」というハンドルネームを使う松原被告でした。彼はそこでまず、「キャリアを捕まえたから、画像のアップローダーを教えろ」という旨の書き込みをします。「キャリア」とは猫のことであると、そのすぐ後にわかります。次に彼が見せた画像には、バスタブに閉じ込めた猫が写っていたからです。

ペット大嫌い板

後に「生き物苦手板」と名前を変えるこの場所は、もともとはペット関連の板から、マナーの悪い飼い主への批判を遠ざけるために作られたものでした。生き物が苦手な人や、飼い主のマナーに物申したい人が集まる場でしたが、やがて、生き物に対する暴力行為をほのめかしたり、虐待をしたいという衝動を表現する場へと性格が変わっていきました。

オスカール・ディルレヴァンガー

ネット上で松原被告が使ったハンドルネームの、元となったと思われる実在の人間です。ナチス・ドイツにおける武装親衛隊の将官で、犯罪者を兵隊化した部隊を率いました。暴力的な言動や異常な性癖とそれらに基づく不祥事により、内外から忌み嫌われたと言われています。

虐待方法を募る松原被告

isabellaquintana / Pixabay

スレッドを立ち上げ、捕まえた猫の画像を公開したこの投稿者は、生き物を嫌悪する人間の集う空間で、このあとどのように痛めつけようかと問い始めます。「とりあえず尻尾と4つ足、どれからいく?」「次はどこ?足でも耳でも目でもいいぞ」

そして、この常軌を逸した問いかけに対する答えもまた、おぞましいものでした。「ノコギリ系のほうが苦痛が多いと思うのだが」「切断した部品を食わせてやれ」この時のスレッド内の雰囲気は異常なものになっていました。

虐待の画像を次々と添付!最後の画像は…

suju / Pixabay

煽り立てられた通り、残忍な暴力は実行されました。その実行者である投稿主は一連の様子をデジカメで撮り、それをネット上に上げては、次はどのように痛めつけようかと問いかけることを繰り返します。最初に上げられたのバスタブに入れた猫の写真に続き、公開された画像には以下のようなものが写されていました。

上げられた画像の内容

  • 紐で吊るされている猫。
  • しっぽを切断した後の様子。
  • 耳を切り取った後の様子。
  • バスタブの中でぐったりとしてしまっている猫。
  • 吊るされた猫と、「私は敗北主義者です」とペンで書かれたCD。
  • 横たわる猫と、「世界と斗う黒ムツ諸兄に捧ぐオスカル・ディル」とペンで書かれた紙。

惨劇の夜の終わり

7枚目の画像をネットに投稿した後、この虐待ショーの開催者は、死んでしまった猫を川に捨てに行きました。6日の夜に始まった書き込みは、7日の朝まで続きました。何の罪もない命に対する凄惨な仕打ちは、実に4時間にわたったと言われています。

2ちゃんの特定班が動いた!こげんた事件の犯人を見つけられるか?

Free-Photos / Pixabay

当時、ペット大嫌い板に集い、件のスレッドに書き込みをする人間のほとんどは、投稿者が実行する残虐な行為を面白がり、煽り立てて楽しんでいました。中には、「やめろ」「許されることではない」などとたしなめる意見もありましたが、そのような書き込みの方が荒らし扱いをされるという、異常な状況でした。

しかし、巨大掲示板サイトである2ちゃんの利用者全体から見れば、このような蛮行を許容する人間の方がマイノリティなのは言うまでもありません。2ちゃん内の他のコミュニティに属している人々は、一晩に渡り残虐なショーが行われていたことを知るや、一斉に非難しました。今でいうところの炎上です。

2ちゃんねらー

2ちゃんねるを頻繁に利用する人々は、このように呼ばれていました。2ちゃんは、当時の電子掲示板サイトとしては、日本最大級を誇っていました。その利用者数は事件翌年の2003年時点で700万人以上。彼らは、その人員、人材の多さと、ある種の帰属意識に基づいた結託力により、時として爆発的なマンパワーを発揮します。

普段は、匿名の場ゆえに、羽目を外した言動の多い2ちゃんねらー達ですが、今回の件に関しては、彼らの多くが正義感に突き動かされて行動しました。公開殺害の投稿者は期せずして、巨大コミュニティサイトに集まる大勢の人間を敵に回してしまったのです。

特定班によるログ解析と通報

TheDigitalArtist / Pixabay

2ちゃんねらーの中には、情報収集や解析の技術を持て余している人間が多くいました。特に、ネット上から個人を特定するような情報を抽出する人たちは「特定班」と呼ばれます。特定班は投稿者の書き込みのログや画像を解析し、数日の内にその正体を突き止めました。そして、サイト利用者たちによる通報が殺到することとなるのです。

ついに書類送検へ

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ネットユーザー達のこうした行動により、福岡県警と警視庁が動き出します。その結果、ついに松原潤被告が動物愛護法違反の容疑で書類送検されます。犯行が行われた日から16日後、5月22日のことです。

しかし事実無根を訴える被告…

彼にかけられた容疑は、野良猫を捕まえ、紐で首を縛ったり、ハサミで耳やしっぽを切断するなどして痛めつけたとするものです。しかし、警察の取り調べに際して、被告は「殺さずに逃がした」「ハサミや紐は引っ越しに使うため買った」などと言い逃れをします。

さらに、「かわいく思って連れ帰ったが、浴槽に糞をしてカッとなった」「酔っていた」「目立とうとおもって画像を上げたが、思った以上に反響が大きかった」と弁解のような供述をし、世間からさらなる不信を買っていきました。

大きくなる世間の声!こげんた事件の署名運動まで!

この忌まわしい犯行の実行者を糾弾する熱は、もはや一つの掲示板サイト内にとどまりません。その熱は動物愛護団体や他のウェブサイト、マスメディアにも波及していきます。そして、事件に注目する人々内の多くは、事実無根を訴える被告に対して、必ず相応の報いが与えられなければならないと思い、行動をしました。

署名運動

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当初、警察の対応は書類送検にとどまっており、それ故に犯人とされる人間の顔や名前は公開されませんでした。しかし、ネット上で一部始終を見届けていた人々からは、犯行のむごさと危険性からして、そのような対応は生ぬるいという意見が上がります。

その上「猫は逃がした」と供述し、罪を免れようとする松原被告。しかし、問題の画像を分析した見た人達からは、猫が生きていたとは思えないという声が上がります。このままでは、うやむやの内に事件は終息し、犯人には軽い処罰しか与えられないかもしれません。そう感じた人々の間から、彼を刑事訴追するよう求める署名運動が起こされるのです。

乱立するこげんたちゃんのウェブサイト

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事件の痛ましさを知り、その血も涙もない行為に怒ったネットユーザーの中からは、事件の内容を拡散し、同時に犯人に社会的制裁を与えるようと試みる人が数多く現れます。彼らは次々と、事件に関するウェブサイトを立ち上げていきました。

そのようなウェブサイトは、事件の広報活動や、署名活動の拠点となったり、あるいは未公開だった犯人の個人情報を、特定、共有し、積極的に公表する場となりました。このようにして、松原被告がより厳しく罰せられるよう訴えかけたのです。

マスメディアもこぞって取り上げた!

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ネット上で大きく騒がれるに至った凄惨な公開虐待事件に、テレビや新聞も飛びつきました。「インターネット猫虐待事件」とも呼ばれ、ネット時代特有のセンセーショナルな事件としてニュースで一斉に取り上げられ、ネットユーザー以外の人々からも注目を集めます。

そしてついにこげんたちゃん事件の判決!

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捕まえた野良猫への虐待は、犯人が思った以上に大きく世間を揺るがせました。一匹の猫のみならず、ネットユーザーをはじめとした多くの人間を巻き込んだこの事件は、果たして、どのように結末にたどり着いたのでしょうか。そして、事件を起こした犯人には、どのような刑罰が与えられたのでしょうか。

書類送検を改め逮捕へ

署名運動の結果、福岡県警には逮捕と実刑を求める嘆願書が、併せて3000通以上寄せられるに至ります。それらを受けて、県警は獣医師に依頼し問題の写真を鑑定し、その結果、猫の死亡が確認されました。これにより松原被告の供述が嘘であると発覚し、証拠を隠滅する恐れがあるとして、逮捕となりました。8月7日のことです。

逮捕された松原被告は福岡地検により起訴されます。当時、動物虐待事件で刑事告訴されるケースは、極めて異例でした。地検は起訴の理由について「極めて悪質で、社会的影響も大きい」と説明しています。まさに、事件をうやむやにしたくないと思った人々の、活動の成果です。

社会的制裁を考えた減刑措置

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