巨大かつ高速で泳ぐシロナガスクジラを捕らえることは難しく、鯨油目当ての捕鯨もさほど活発に行われてはいませんでした。しかし皮肉にも人類の技術の進歩により捕鯨が可能になると同時に数を減らしていきました。
原因②同じ餌を食べるミンククジラに餌を奪われる
乱獲されたシロナガスクジラが減ると、同じくヒゲクジラでオキアミを主食とするミンククジラが数を増やしていきました。シロナガスクジラという巨大な生き物に邪魔されることなく、食事をすることができるようになったからです。
数を増やしたミンククジラが食事を行うことで、当然シロナガスクジラの取り分は減ってしまいます。餌が食べられなければ生きていくことも子孫を残すことも満足にできません。こうしてまた、シロナガスクジラは数を減らします。
個体数の変遷
近年、シロナガスクジラの捕鯨が禁止されていることもあり、徐々にその数は増えていると言います。それでも捕鯨以前に確認されていた30万頭には程遠く、回復にはまだまだ長い月日がかかることでしょう。
Contents
ヒゲクジラとハクジラの違いは?
「クジラ」と言っても、「ヒゲクジラ」と「ハクジラ」が存在しているのはご存知でしょうか?シロナガスクジラは「ヒゲクジラ」に属し、「ハクジラ」にはマッコウクジラやシャチが属します。それぞれ口元の特徴を表しているのですが、より詳細に紹介します。
プランクトンが主食の「ヒゲクジラ」
目元まで裂けた口と腹部に走る何本もの畝。そして歯の代わりに生えているのが鯨髭です。ヒゲクジラは大きな口で海水ごとプランクトンを飲み込むと、ヒゲをろ過装置のように使い、プランクトンを漉して食べるのです。
知能が高い「ハクジラ」
「ハクジラ」に分類されるのはマッコウクジラやシャチ、イルカなどです。ヒゲクジラとは違う特徴として、彼らは「エコーロケーション」という、超音波を発してそれを受け取り周囲を把握する技能を持っています。ヒゲクジラと比べても知能は高いとされています。「ハクジラ」についても知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
大きなシロナガスクジラにも天敵はいる?
弱肉強食の自然界において身体が小さい生物ほど捕食されやすい位置にいます。しかし、天敵はシロナガスクジラが地球上最大だとしてもきちんと存在します。この項ではそんな天敵をご紹介します。
天敵①シャチ
『海のギャング』と名高いシャチ。シャチの中にも魚を主食にするものや同じ海棲哺乳類を主食にするものと色々いるのですが、後者はシロナガスクジラの天敵となり得ます。単独行動をする個体もいますが、基本的に群れを成して抜群のコンビネーションを発揮するシャチは時にシロナガスクジラにも牙をむきます。
シャチは舌を食べる
シャチと比べてシロナガスクジラは圧倒的に大きい存在であるため、シャチがシロナガスクジラを襲うことはめったにないのですが、それでも天敵として存在している以上襲う時もあります。シャチはクジラの舌が好物であるそう。他の部位に比べて柔らかく美味しいものであるのかもしれません。
天敵②人間
シロナガスクジラが絶滅危惧種になってしまった一端を担うどころか原因となっている人間は正しく天敵と言えるでしょう。膂力や泳力では到底シロナガスクジラに及ぶはずもありませんが、人間の恐るべきはその知能と貪欲さでしょうか。
鯨油を手に入れるために、より速い船を。より確実にあの巨体を仕留められる武器を。人間は工夫を持って技術を磨き、作り上げてしまいました。捕鯨が規制されるまでの間に一体どれだけのシロナガスクジラを捕らえたのでしょうか。
サメはシロナガスクジラを襲う?
フィクションではとても狂暴に描かれ、時には人間を襲ったというニュースが流れるサメですが、そのイメージに反してシロナガスクジラを襲うことはありません。そもそも襲える程の体躯や力を持っていないからです。
哺乳類として丈夫な骨に覆われたシロナガスクジラの身体に比べ、魚類の中でも古い部類に位置するサメの身体はとても柔らかく、大切な臓器を守るものも大してないので、尾びれで叩かれようものならひとたまりもないのです。
ミンククジラやイワシクジラはオキアミを取り合う点で天敵
直接危害を加えることはなくともオキアミを主食にしているという点で、ヒゲクジラは常に対抗していると言えるでしょう。住む海域が異なれば多少は問題なくとも、シロナガスクジラは季節に合わせて世界中の海域に姿を現します。餌の取り合いになることも仕方がないと言えるでしょう。
何故クジラを獲るのか?
捕鯨に規制がかかる以前、世界中の人間がシロナガスクジラのみならず数々の、そして多くのクジラを捕らえました。何故人間はクジラを捕らえるのか?この項ではその理由について記載したいと思います。
鯨肉目当てではない
日本では鯨肉目当ての捕鯨も行われていましたが、諸外国は違います。日本でも鯨肉を実際に食べた事がある人は比較的少ないのではないでしょうか。ゲテモノというほどではありませんが、スーパーに並ぶ魚介類とは違い、そこまで需要があるわけではないのも事実です。鯨肉はあくまでも副産物なのです。
目的は鯨油
捕鯨の目的はクジラが保有する油にありました。ハクジラとヒゲクジラで成分が違うために用途は分けられ、燃料や食品にも使用されていました。現在では石油や植物性油脂を使用した代替品の登場により、鯨油を使った商品はほとんど見る事はありません。
マッコウクジラの油
全長の三分の一を占める巨大な頭部が特徴のマッコウクジラ。その頭には大量の鯨油が詰まっており、マッコウクジラの高い潜水能力を助けています。というのも、マッコウクジラの頭部に詰まった油は温度変化によって凝固し、マッコウクジラが潜水する際には呼吸で冷やし固め、海水よりも比重を大きくすることにより潜水するのです。
シロナガスクジラはどこで見られる?
ここまで記事を読んでくださった方の中には「やはり実際にシロナガスクジラの大きさをこの目で確かめたい!」と思われる方もいるのではないでしょうか。この項ではどこへ行けばシロナガスクジラのことをより知ることができるのかを紹介します。
生体展示は行われていない!
世界中、どこの水族館でもシロナガスクジラの生態展示は行われていません。やはり20m以上にもなるあの巨体がネックなのでしょう。水族館のプールの中を泳ぐシロナガスクジラを見られる日は来るのでしょうか。
骨格標本は展示されている!
シロナガスクジラを飼育して展示する、ということは叶っていませんが、その大きさを実感できる骨格標本の展示を行っている水族館は日本にもあります。興味がある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
山口県下関市「しものせき市立水族館 海響館」
現在シロナガスクジラの骨格標本を展示している水族館です。骨格だけでもシロナガスクジラの迫力は実感できるというもの。その他、たくさんの海に住む生き物を展示しているので飽きる事なく楽しめる施設なのではないでしょうか。
和歌山県太地町「くじらの博物館」
クジラについて知りたい方はこの博物館を訪れるのが一番です。現在シロナガスクジラの骨格標本は貸し出しているので展示していませんが、クジラに関する資料が多く揃っています。イルカとも触れ合える楽しい場所です!
ホエールウォッチングで見る!
やはりシロナガスクジラを生で見たいという方はホエールウォッチングに行くのが一番なのではないでしょうか。メキシコやスリランカではシロナガスクジラのホエールウォッチングが行われているので、この機会に海外まで足を伸ばしてみてはいかがでしょう。
クジラに詳しくなろう!
ホエールウォッチングを楽しむにしても、水族館へ行くにしても、やはり知識がある方が楽しめることと思います。この項では、シロナガスクジラへの理解をより深めたい方にオススメの書籍をご紹介します!
クジラの図鑑をご紹介!
イラストや写真でシロナガスクジラのみならず、他のヒゲクジラ科やハクジラ科の海棲哺乳類を紹介する図鑑。それぞれの似たようでいて全く違う特徴をきちんと把握するならば、やはり図鑑は外せないでしょう。
クジラ・イルカ大百科
ヒゲクジラとハクジラの違い、人間との関わり、生息地などを美しい写真と共に解説した珠玉の一冊です。この記事で紹介するシロナガスクジラのみならず、イルカやシャチに関する知識も深めることができます。
その美しく壮大な姿が写真集に
多くの生物図鑑ではシロナガスクジラの姿は未だイラストで掲載されています。それほどまでにシロナガスクジラの撮影は困難なのです。それでもシロナガスクジラの雄大な姿を見たいという方は写真集をお手にとってみてはいかがでしょうか。
WHAELS!クジラ!大写真集
この記事で紹介したシロナガスクジラと同じ分類のヒゲクジラであるザトウクジラの写真をまとめた貴重な一冊!北半球と南半球、そのどちらに生息するかによって姿を変えるザトウクジラは必見です!
世界最大の動物シロナガスクジラ
地球上最大の動物であるシロナガスクジラ。その規格外な大きさ故に未だ解明されていないことも多い生き物ではありますが、だからこそ魅力がたっぷりあります。その存在は一見の価値アリです。ホエールウォッチングでその大きさを間近に感じたり、図鑑でその生態をより深く知ってみてはいかがでしょうか。