肺魚とは?その面白い特徴をご紹介
泳ぐには少し不便そうにも見えるヒレに、つぶらな瞳。他の魚と比べれば少し変わった姿をしているかも?ですが、肺魚の『変わったところ』はその見た目だけではないんです。魚なのにどこか魚らしくない、不思議な魅力に包まれた生態をご紹介します。
魚なのに溺れ死ぬことも
幼い頃は両生類のように外鰓を持つ肺魚ですが、成長すると共に呼吸を肺に任せるようになり、水中から酸素を取り込む事が出来なくなってしまいます。エラが無ければ水の中で呼吸する事は叶わず、人間と同じように溺れてしまうのです。
魚なのに鼻がある
魚に鼻?と疑問に思われる方も多い事でしょう。肺魚は水の中でも匂いを感じ取って餌を探す事ができるのです。視力も低く、機敏な動きが苦手な肺魚が餓死をしないのはこの鋭い嗅覚のおかげである言えるでしょう。
魚なのに夏眠する
水中呼吸こそできませんが、肺魚も立派な魚です。乾燥に弱いため乾季が訪れると土の中に潜り、粘膜で身体全体を覆って乾燥を防いで休眠します。他の魚には真似できない芸当です。夏眠を行うのは肺魚の他にはカタツムリがいます。そんなカタツムリについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
雨の日に壁から肺魚が出てきたという話も
泥の中で眠る肺魚に気づかずに自宅の建材として泥を使用。雨を察知した肺魚は水中へ戻る為に泥の中から這い出ますが、そこは人間の住処。突然土壁を突き破って来た肺魚に、人間も、そして肺魚自身も大層驚いたことでしょう。主に幼体の肺魚がこのような事態を引き起こしてしまいます。
胃がないためしっかり咀嚼する
肺魚には胃袋がありません。その為、強靭な顎を使って獲物を咀嚼します。正確には餌を口の中へ入れ、唾液混じりに一度吐き出し、もう一度口の中で噛む。と言ったことを繰り返すのです。もぐもぐと懸命に口を動かす食事姿は必見です。
肺魚の形態はデボン紀にほぼ完成
『魚の時代』と称されるデボン紀は現在から数えると約4億2000万年前という途方もなく遠い時代です。人間という存在はもちろん、哺乳類すら誕生していない遥か昔から姿を変えることなく生き続けている肺魚をダーウィンは「生きた化石」と呼んでいました。
デボン紀に誕生
肺魚が誕生したデボン紀は恐竜が誕生したとされる三畳紀から約2億年ほど前の時代です。この時代に現存する多くの魚の先祖が生まれ、あるいは滅んでいき、進化し、今へと繋がっています。シーラカンスもこの時代の生まれだと言われています。
目が未発達
暗い泥の中で生活する肺魚に必要だったのは視覚ではなく嗅覚でした。今でも肺魚は視覚が未発達で物はあまりよく見えません。視覚は重要な情報源ではありますが、それを補うように別の器官を発達させたのです。肺魚と同じように視覚を頼りにしない生物に興味がある方はこちらもご参照ください。
「生きた化石」と呼ばれる
生きた化石、それも魚とくれば多くの人がシーラカンスを思い浮かべることでしょう。手足のようなヒレが特徴的なシーラカンスや肺魚は肉鰭類(にくきるい)と呼ばれ、魚類が陸上へ上がって爬虫類へと進化する途中の存在だと言われています。
「古代魚」の区分は?
ひとくちに「古代魚」と言っても何を持って「古代魚」とするのか?すぐに答えられる人は少ないと思います。この項ではどのような魚が「古代」に当てはまるのかを解説します。生物としての歴史が長いからと言って古代魚に当てはまる訳ではないのです。
硬骨魚類
きちんと定義が決まっている訳ではない「古代魚」という言葉ですが、古くから存在すると言われるサメはこの「古代魚」には当てはまりません。古代魚というのはあくまでも硬骨魚類であることが条件なのです。その中でも特に古い系統で、尚且つ化石が発掘されていて現在も生きながらえている魚が古代魚と呼ばれます。
古代魚①シーラカンス
肉鰭類であるシーラカンスは肺魚と比較的近い種であると言えるでしょう。絶滅していると思われていただけに、生き残りもほんの僅かです。化石の存在でしか知られていなかったシーラカンスが現存していると知られた時はとても話題になりました。
古代魚②ガー目
二属七種存在するガー目。アリゲーターガーやスポテッドガーなど、観賞魚として名が知れています。ですが現在、成長すると2mを超える種類もいることで飼い主が近くの川へ捨て、その川で繁殖し、生態系を崩すことが問題視されている魚でもあります。
古代魚③アミア・カルヴァ
肺魚が誕生したデボン紀よりも後、恐竜が反映した中生代に生きていたアミア目唯一の生き残りがアミア・カルヴァです。古代魚の括りに属す通り、様々な魚類として古い特徴を持っています。飼育下において生餌を食べる際にワニのようなデスロールを行う事もあります。
古代魚の共通点
古代魚は肺魚を含め、紹介した上記三種の他にもいますが、共通点として「動きが比較的鈍く、大型で、空気呼吸が可能である」という点などが挙げられます。進化過程らしい名残や肉食であるというのも、古代魚の魅力の一つと言えるでしょう。
デボン紀はどんな時代?
肺魚という存在が誕生したのは現在からさかのぼること約4億2000万年前。人類誕生は約500万年前と言われており、肺魚は地球に根付く生命としては人間の大先輩と言えるでしょう。肺魚に関する見識を深めるべく、デボン紀について取り上げます。
魚の時代
現存する多くの魚は「硬骨魚類」として分類されます。骨格の大部分を硬骨と呼ばれる硬い骨で形成した魚のことを指し、サメやエイなどはこれに当てはまりません。そんな硬骨魚類もこのデボン紀に大発展を遂げ、出土する多くの化石によって多様な進化と種類が確認されたために「魚の時代」と呼ばれるのです。
シダ植物も繁栄
デボン紀より前の植物はそもそも水中にしか存在しておらず、満を持して地上進出を果たしたのがこの時代です。魚だけでなく植物も大いなる進化を遂げて現在に至ります。植物の繁栄という事実は動物の繁栄にも大きく関係していることでしょう。
昆虫・サメもこの時代に
現在ではダニやムカデが分類される多足類の昆虫。まだ多くの生き物が水中で暮らしていた中で彼らは陸上への進出開始していました。サメの起源はデボン紀の前であるシルル紀にあると考えられていますが、サメも魚類である以上、この時代に発展したことは確かなのではないでしょうか。
大量絶滅
生物は死を免れる事はできません。地球が紡いできた歴史の中で特に大きな絶滅はデボン紀にも起こりました。新たな時代の幕開けでもあった大量絶滅を肺魚は生き抜き、現在までその存在を繋いでいます。肺魚が誕生した時代の後にも三度の大量絶滅が襲いますが、肺魚はそれらを生き抜いて今も存在し続けているのです。
肺魚の生態・生息域
不思議な特徴が多い印象の肺魚ですが、どのような地域で肺魚は暮らしているのでしょうか。約4億2000万年もの間姿を変えることなく生き続けている肺魚に適した環境とはどのようなものなのか。この項では生態と並べてご紹介します。
アフリカ・オーストラリア等に生息
肺魚が好むのは温暖な気候です。夏眠も熱帯地域特有の乾季を生き抜くために身に着けた生存本能と言えるでしょう。体長は約1m前後。大きなものは2mにまで達する大型の魚であり、体重は当然体長に比例し、主には20kg~40kg前後です。
現地では食用にも
泥の中で夏眠する肺魚は立派な食料です。掘り出した後はその身体に多く含む水分を飛ばすために日干しにします。その他、燻製にするなど様々な調理方法が確立されています。陸地にあげても眠っている限りは生きている肺魚はお弁当としても重宝したとか。ただし、野生の場合は泥臭いためあまり美味しくはありません。