古くから旅館街として成り立っている界隈で、新しく構えることは同じ事業者からの反感を貰うと共に、需要がないと判断した彼女は肩を落とします。ですがピンチを救う出来事が起こったのです。
経営不振から売りに出されている宿泊施設があることを耳にするのです。事件の現場ともなり名前にもなったほど悪い意味で世間へ知れ渡ることになる有名ホテルでした。交渉を始めますが傲慢な性格のオーナーは売る気なしと遮断してしまいます。
資金繰りに困った生方鎌助がカウに融資話を持ちかける
数ある旅館のなかでも、温泉の出ない低レベルの宿だったことから客足は途絶え資金繰りに苦しかったといいます。
これにはオーナーのクセある性格が関連していて、温泉協会に沿った設備とすれば湧き出る温泉を提供してもらえたのですが断って自己流で経営をしたため、お湯は冷めるし設備は不十分という環境の悪さだったようです。
数か月ホテル経営を続けますが、一向に景気が良くならないことで心を病んでしまいます。どうしようもなくなったオーナーは、以前購入したいといってきた女を思い出すのです。
50万を妻に渡してくれたら彼女におかみをやらせてやると話を持ち込みます。当時300万もの大金を蓄えていた彼女からしたら、容易い金額でした。そして刻一刻と悪への道を進んできます。
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小林カウ第一の殺人【ホテル日本閣殺人事件】
何としてでもおかみをやりたい夢を叶えたい女と資金繰りに苦戦し現金が欲しい男、この2人の意向が合致してしまったのです。彼らの悪だくみは事件へと繋がっていくことになります。
夢は希望を与えるものですが、ときとして周りがみえなくなることがうかがえます。自分の未来のため夢を叶えたいという強い願望が簡単に命を消してしまうというエネルギーに変わってしまったのです。
今まで必死に駆け上がってきたサクセスに暗黙が立ち上がるようになってしまったサイコパスな時系列を順番に追っていきたいと思います。
ホテル日本閣経営者の後妻になるため邪魔な前妻ウメを殺害を計画
敏腕社長であった彼女が妻ウメに近づきます。50万で交渉していたにもかかわらず、節約しながらお金を増やしていった練金術をここでも発揮させます。30万にしてほしいと値下げを言い出したのです。
応じなかった妻に対し、正当な金額を払っても妻は納得しないだろうと勝手に判断をし、いなくなったほうが有利に動けると思ったのです。早く夢を叶えたい一心で仕留める計画を密かに始めていくのです。
ホテル日本閣の雑用大貫光吉と共謀してウメを殺害
自分の手を汚さず仕留めようと男を利用することを企みます。ターゲットとなったのは雑務をこなしていた女っ気のない大貫という男を選んだのでした。
報酬を5万と設定し支持を出すのです。サービスとして成功したら抱くと体の交渉も忘れませんでした。気の小さい男は躊躇しますが生方にも励まされ、後には引けなくなってしまうのです。ついに麻の紐で締めあげたのでした。
ウメの遺体をホテルの元ボイラー室の土間に埋める
動かなくなったウメを暗い土の中へ葬りコンクリートで固めました。どこから流れたのか殺されてしまったようだという噂がたちまち拡散されます。
狭い田舎社会では横の繋がりが深く、普段の彼女の素行の悪さも手伝ってか次第には彼女が仕留めたという噂になっていきました。
町の噂を受けウメの遺体を裏の林に埋め直す
悪い噂は本人たちの耳にも入ってきたため、的確な噂が怖くなり再度コンクリートを掘り起こし、場所を変えるのです。手間賃として1万円を雑務係に渡して移動させたのでした。
大貫は精神に異常をきたし周囲にウメ殺害をほのめかしていた
尊い命を奪うことは通常の心では実行に移す前に理性が働き阻止することができます。大貫はこの理性を自分で打ち破って強行したのです。異常をきたすのも無理はないでしょう。
見えない命ではありますが、重くて人を変えてしまうほど影響力のあるものなのです。
小林カウ第二の殺人【ホテル日本閣殺人事件】
それだけでは終わりませんでした。悪は続きます。彼女は自分の不都合な相手は容赦なく消し去ることに目覚めてしまいます。ここでも彼女のワガママで身勝手な性格が災いを起こすこととなるのです。
一体何が起こったのでしょうか?止まらない悪の連鎖をご紹介します。
ウメ殺害後カウは生方鎌助に騙されていたと気づく
200万をつぎ込み増築をしおかみになるために動き出します。あるとき登記所へ出向き書類に目をやると彼女名義になっていたはずの自分の名が欄から消えていて、競売予定となっていたのです。
すべては競売にかけるため、増築をして施設を充実させてから高値で売ろうとしていた生方の、手のひらで転がされていたことに気づくのです。メラメラと燃え上がる怒りが込み上げてきたのです。
生方鎌助の飲み物に塩素を入れて殺害を計画するも失敗
怒り狂った彼女は、姿かたちを消し去ることを決意するのです。ただオーナーを消したとしてもホテルはもう自分の物にはなりません。冷静になれば判別がついたことでしょう。
時すでに遅しではありますが、頭に血が上ってしまった彼女は考える余裕はありませんでした。味噌汁や酒に塩素を入れますが濃度が濃すぎて吐き出してしまい、あっけなく失敗と終わるのです。
大貫光吉と共謀して生方鎌助殺害
次こそは失敗が許されません。相棒である大貫を従え犯行へ及びます。テレビを見ていた団らんの時間に静かに近づき、襲ったのです。彼女が紐で締めあげ大貫は首を包丁でめった刺しにしました。
残虐な仕留め方は、まるで彼女の怒りを表しているかのようでした。容赦なく消したのです。動かなくなった亡骸はホテルの廊下に埋めたのです。
町の噂や新聞でのホテル日本閣夫婦の失踪報道によりカウ逮捕
またもや経営者の姿が見えなくなったことで近所の人たちは騒ぎ立てます。犯行が年の瀬だったため、新年のあいさつに訪れた関係者に対し、彼女は何の慌てるそぶりもなく東京へお金を調達に出かけていると嘘を話すのです。
謎の夫婦失踪問題は、噂は遠方まで届くようになりメディアも聞きつけます。テレビ放映したことで全国ネットで話題になりました。ついに警察が動くことになり逮捕されます。
まわりは巧みに騙せても日本の警察の目はごまかすことができませんでした。あっけなく終結を迎えることとなったのです。
現在の日本閣ホテルは
現在は取り壊されており、空き地になっています。騒動すぐは一躍有名なホテルとなったことから買い手が殺到したようです。
ですが悍ましいトラブルが起こった現地に新たに建築したとしても良いイメージを抱きにくくお客も入らないだろうと判断され、そのまま手入れもされない更地のまま時だけが過ぎていっています。
ホテル日本閣殺人事件の小林カウの裁判
逮捕で世間は彼女の残忍な手口に恐怖を覚えるとともに、どこでも女として生を受けたことを最大限に生かした振る舞いは、大きく取り上げられるのでした。
教育が受けられなかった彼女は、これが生き抜いていくための道具であり世間を知らなかった悲しい時代の背景がありました。
小林カウと共犯の大貫光吉ともに死刑判決
非常に身勝手な残虐な事件であり更生の可能性不可能だと死刑が下されます。特に肩を落とすわけでなく淡々と聞き入っていたといいます。
判決前に行われる取り調べでは、派手な着物纏いばっちりメイクで席に座ったといいます。時折警官へボディタッチをしたり着物をまくり上げたこともあったようです。
こうすれば男は自分の思う通りになると確信しているかのように誘惑を繰り返したのです。指示に忠実に動いた彼女の右腕であった大貫は、全てが終わったら仕留めるつもりだったと供述しています。
外部に情報が洩れるのを防ぐため考えていたといいます。用がなくなれば殺めるとは何とも身勝手なことであります。
中村は証拠不十分で無罪
取り調べで夫の怪死についても問いつけられ、自分が青酸カリを盛って殺したことを認めました。かつての内縁関係だった元警官からもらって、夫には風邪薬だといって飲ませたと語ります。
当の中村は完全否定しており、怪しまれつつも10数年以上前の騒動だったことで証拠不十分となり表に出されることとなり妻子の待つ家路へと帰っていくのでした。