すでに3回目の相談となる警察、不安な気持ちを持つのは当然の事でした。しかし今回担当した警察官の大島さんは対応が全く違い話が通じる人でした。ネット犯罪に詳しい大島さんは事件を管轄した所轄にも連絡を入れ犯行グループに彼の名前がないことも調べ上げてくれました。
大島さんから事件と関係ない事が分かった彼は言われた通りにブロク上で「これからも僕の事を殺人犯として扱う事実無根なコメントを残した人は刑事告訴します」と残しました。ここまで言っても、書き込みを続けるようであれば悪意があるとみなされ行動に移せるからです。
ブログの中傷犯を突き止めた
3日後に再度コメントが残され、彼は言われた通り記録に残し確認しました。結果は早く、最初に身元を突き止めた中傷犯は「二度としません」と反省を言葉にするも、3時間で書き込みをしたことがバレ、改めて事件は悪質で根深いものと認めるざるを得なくなります。
方針を変え捜査に乗り出すことになったのは三度目に真摯に受け止めてくれた大島さんがいたからでしょう。のちに彼はしっかりと向き合ってくれる警察官に会うのに9年間かかったと語っています。今となってもその時の警察官には感謝をしているのでしょう。
北芝健に出版を差し止めと謝罪広告を拒否された
警察がきっかけとなり北芝健の事務所と出版社に対して、出版差止めと謝罪を求めました。「文章から読者が特定することは難しいとして、拒否する」上記の回答が来たのが2008年9月の事でした。
当初から謝罪を得るのは無理だと思っていた彼は次の行動に出ていました。もし中傷犯がわかった時は謝罪を求めた内容証明を使い言い訳が出来ないように、根拠がないので事実無根であるということを示す為に起こした行動だったのです。
キクチを連想する記述に関して言及しなかった
後に北芝健はブログで、当時は何も知らずに弁護士を通して回答しただけで、内容証明の中身については著書を否定され経歴詐称の内容があった事を遺憾として反論するなど無責任な発言を残しています。尚、北芝自身もスマイリーキクチと同様に被害に5年苦しんだと告白し事件とは関係ないと遠回しに語りました。
しかし肝心の著書の中の「お笑いコンビを組んで芸能界デビューした元犯人」は誰のことを指して書いたのかは言及しないままでした。真意を知るのは北芝だけですがその部分がネット提示版から感じた受け売りなのか現在も真相は闇の中です。
Contents
スマイリーキクチ中傷被害事件⑦ついに中傷犯19人を検挙
大分、遠回りをする事になった事件もようやく進展し終わりが見えてきます。インターネット犯罪が軽視されていた中で、かなり悲痛な思いを掲げてここまで来たことでしょう。2008年9月から2009年1月までになんと19人にも及ぶ人数が検挙されました。
中傷犯の出身地や年齢はバラバラ
驚くことに検挙された人達に一貫性はありませんでした。北は北海道から大分県まで広い範囲に渡り年齢も性別もバラバラでした。中には未成年の17歳、女の中には妊婦まで含まれているとされ、精神の病に侵されている可能性がある人も見受けられたようです。
犯人の一人には一回目の相談で突き止めた大学の大学職員もいたことが明らかにされています。取り調べを担当した刑事は普通の人と言う印象を受けたのが大半で、犯人同士はおろか実際に彼と接点を持つ人は一人もいませんでした。
正義感で中傷したという人も多かった
中傷犯達の動機は様々でおもしろ半分で書き込んだ1名を除きキクチ犯人説を信じ込んで書いたものが8名いました。しかし、根拠がないことを知らされると段々と根っこの部分を吐き始め、ネットや本に騙されたや私生活の捌け口としての行動と、真の動機も見えてきました。
後に彼も、正義感をかざして書き込む内容ではない、またそれが事実無根と分かるとやっと本当の動機について話し始めたことから「正義感の皮をかぶせて正当化していた」と中傷犯に対しコメントしています。
7人の中傷犯が書類送検
2009年3月までに7人が警察に引き渡されました。その中には殺人事件をいたずらに茶化し、殺人事件の被害者もターゲットにしていたとの事で発端である事件を知っている人は憤りを隠せませんでした。この7人の容疑はいずれも脅迫罪と名誉毀損でした。
スマイリー中傷殺害事件⑧2009年2月5日一斉にメディア報道
ここまできてやっとマスコミや新聞、メディアが彼の事件に注目しました。「誹謗中傷のでの犯人一斉摘発」は警視庁によると今までにないくらい日本では珍しい事でした。まだまだインターネットの非難、中傷には関心がなかった日本ですがその裏には韓国で起きた事件も関連していました。
ネット中傷被害は韓国でも問題視されていた
今回の事件が明るみに出る前に韓国では芸能人が相次いで自殺していること、その原因の一つにネットにおける中傷とであると報じられている出来事がありました。「日本でも起こりうる問題」として取り上げられ大分時間はかかりましたが報道機関で大きく取り上げられました。
現在の韓国でもネット社会でのバッシング問題は深刻化をたどっており、自殺にまで至ってしまうのは韓国の国民性の問題でもあるという意見もあります。完璧主義者で人にどう思われているか気になる国民性、日本も似たような国民性を持つためこれからもっと重要視されることでしょう。
韓国での被害者
2007年1月に歌手のチェ・ユニンさんが首をつって自殺、2月女優のチョン・ダビンさんも自殺。ネット上で書かれた整形手術疑惑などで精神的に参っていたと明かします。2008年9月にタレントのアン・ジェファンさん、10月に女優のチェ・ジンシルさんも相次ぎやはりインターネットの中での中傷事件として注目を集めました。
韓国の芸能人の自殺も後を立ちませんが、日本のアイドルで自殺未遂をしてなんとか命はとりとめたもののその後大変な出来事になることもあります。自殺するほどに追い詰められた結果の事で、当時は波紋を呼びました。興味がある方はこちらの記事もご覧ください。
コンクリ事件とは無関係を証明、中傷書き込みが激減した
この報道で警察が改めて彼と殺人事件は関係ないことを発表し、彼への誹謗中傷は大きく激減しました。この後、マスメディアから取材を受けることはありませんでした。思わぬ形で殺人事件が世の人に知れわたる事になり、事件関係者への配慮と売名の為に行ったと思われるのを嫌ったのです。
スマイリーキクチ中傷被害事件⑨不起訴処分の決定
その後事件に進展は見られなかったが民事訴訟は金額面や時間がかかることで見送り、検察の結果を待つことにしました。2009年11月に事件の進捗状況について確認しても検察側からは耳を疑う言葉が返って来ます。「全員不起訴処分にするつもりです」理由は全員が反省し、すでに彼に謝罪済みと皆が口をそろえて言うとの事。
謝罪を受けていないと彼は誤解を解くため直接面談に向かうも検察側からは心無い言葉しか返ってこず、段々検察に期待はしなくなりました。そして2010年1月に7人すべて不起訴処分が正式に決定したのです。
中傷犯の誰からもスマイリーキクチへの謝罪はなかった
検察側には中傷犯達は「すぐに謝罪する」等と述べておりそれを鵜呑みにした検察は事の重大さに気付いてない様でした。「キクチが否定すればやらなかったと思う」「インターネットを見なければ問題がない」「謝罪がほしければキクチの住所や連絡先を教えて欲しい」など、最初に相談した時と全く同じ様な対応でした。
判決を受けた今現在でも誰からも謝罪がないとしています。摘発されても反省の弁を述べるだけで許されてしまうのであれば一体どこが彼らに対して事の重大さを理解させることが出来るのでしょう。
「できることはやった」検察の決定を受け入れた
判決を受けた段階ではすでに検察に期待をしていなかった彼はすでに割り切っていた事から検察側の決定を受け入れました。「自分の無実を証明するためにできることはやった」と彼は語ります。ここまでの時間をかけて得られたものは彼にしかわかりませんが確実に多くの時間を無駄にしました。
非難中傷されたらどうすればいい?
今回のスマイリーキクチんさんが巻き込まれた事件では全員が不起訴となる結果で終わっています。今はFacebookやLINE、Twitter、Instagramなど情報を共有するツールも増えています。ネット上で投稿する時は匿名だからをたかをくくっている人も多いでしょう。しかし発信元は特定出来るのです。
非難中傷にあった時にやるべきこと
刑事罰として扱われることも現在では多くなってきました。その為にやる事としてまずは規約の確認、もちろん依頼前に証拠として写真やスクリーンショットに撮っておくことも忘れないようにしましょう。その後運営元に削除依頼、個人でうまく対応できない場合には弁護士を頼るのも選択肢の一つです。
刑罰の種類
誹謗中傷などで刑罰に値する罪は「名誉毀損罪」「侮辱罪」「信用毀損罪」があります。SNSで飲食店の異物混入を虚偽で投稿したり病院内に誹謗中傷のビラを配るなど明らかに悪質な例に関しては的確な対応がなされます。しかし逮捕されても全てが起訴を確定するものではないです。
今回の事件のように起訴されると99.9%有罪が確定するのを見越して、それまでに示談を進めるケースも少なくありません。物事の深刻さをどの様に伝えるか、証拠なども持ち合わせることも必要です。いずれにしても警察に相談はしましょう。
スマイリーキクチの現在の活動
10年にも及ぶ見えない相手との戦いを一度は終えたスマイリーキクチは今は何をしているのでしょう。現在の彼は今もなお、活躍していますが芸能界ではなく他の方面での活動にも踏み出していました。事件を通して彼は何を感じこの後の行動に出たのでしょう。
全国で子供たちに自身の体験を伝えている
全国にある学校を飛び回り、今回の事件の事をバネに自分自身の体験伝えることに勢力を注いでいます。「悪口はだめ」「デマは加害者にはならないか」という問題提議を基本とし講演を行っています。
怒りを感じたら「寝かせて」アドバイス
今は色んな情報源が溢れているため小さい子供からインターネットなどで情報を集めることが可能です。しかしそれがフェイクニュースや陰謀説なのかについての真偽の判断がつかないまま問題に対し怒りを感じてしまう時があります。そんな時は一旦「寝かせて」と彼は言います。
今の時代は何でも拡散や共有が出来てしまうから一度冷静になる事の必要性や、事の真偽は一週間経てば明らかになる可能性があるので急がないことが大事だと。そして「インターネットも疑え」知名度の高いサービスでも匿名で書き込みが出来てしまうためウィキペディアにも間違った情報が記載されていた事もあったと語りました。
未だ殺害予告あるも生きてデマと戦う
2017年3月にもHNKに殺害予告があったため生放送の収録が中止になる事態もありました。現在は結婚して子供もいる彼は、今回の事件をデジタルタトゥーと表現し名前を検索するだけで事件の内容などが出てしまうことには諦めていると話します。
講演をしていると「私なら死んでいたと思う」との意見も出るそうです。そのたびに耐性のない子供が誹謗中傷で命を落とすことは合ってはならないことなんだと伝え、幸せに生き続けることが今回の事件への最大の仕返しになると語りました。
スマイリーキクチの著書
今回の長く辛かった事件を体験し彼はこの経験を全国の子供たちにむけて講演することで被害を防ぐことを考えました。もう一つ彼が被害を最小限に食い止める為にしてきた事があります。この事件の詳細を書いた本を出版したのです。
突然、僕は殺人犯にされた
2011年3月に発売された「突然、僕は殺人犯にされた」は今回の10年間誹謗中傷に耐えて戦ってきた日々とそれに向けてどう対処したのか等、報道されていないものも含めて赤裸々に綴った一冊です。ネット中傷で悩んでいる人や、いじめにあっている子供たちや保護者、全ての人に読んでもらいたい本です。
スマイリーキクチは現在も戦い続けている
スマイリーキクチさんは「デマを書く人が加害者になる」と言う意識を持つ事が必要でその重要性を理解し軽視しないで欲しい。改めて加害者にならない方法についても子供たちに伝えるために全国を飛び回っています。
自分の家族を守るため、そしてこれからの子供たちを守るために長い間経験した辛い過去を微塵も恥じることなく人に経験として伝える彼の姿はとても大きく感じます。芸人でも有り、一人の被害者でも有り、一人ネット問題に立ち向かう人物として戦い続ける彼を応援していきたいですね。