冷たい熱帯魚のあらすじとネタバレ!埼玉愛犬家連続殺人事件も解説!

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山崎は経営哲学を学ぼうとたびたび関根の元を訪れていました。ある日一緒に経営しようと誘われますが現実は単なる使い走りという扱いでした。関根は山崎自身や家族の命を脅迫し、凶行に協力させます。山崎はそのころ群馬県の山中で一人暮らしをしており、脅され証拠隠滅のための死体損壊や遺棄の凶行を手伝うことを強要されます。

冷たい熱帯魚の主人公のモデル②自身や家族に被害が及ぶのを恐れた

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そのころ家族と別居して群馬の山中で一人暮らしをしていた山崎は、自身の命はもちろん離れて暮らしていた妻や子供の命までを狙われるような脅迫をうけており、指示に従わざるを得ない状況においこまれていました。

冷たい熱帯魚の主人公のモデル③服役後は実録本を出版している

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一連の凶行に巻き込まれてしまったため、逮捕後検察から持ち掛けられた「司法取引」を反故にされながら懲役3年の刑期を終え出所した後、山崎永幸として「共犯者」、離婚後志摩永幸という名前で「愛犬家殺人」という本を出版しています。

冷たい熱帯魚と埼玉愛犬家連続殺人事件との類似点③犯人像

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劇中でも相当な凶悪な男として描かれましたが、ベースになった関根もフィクションに負けない様々なエピソードを残しています。子供のころの話から女性遍歴、凶行のきっかけから最期までを紹介します。

冷たい熱帯魚の犯人のモデル①ウソつきで女好きの凶悪犯

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見た目はやくざのようにいかつく近寄りがたいものでしたが、ユーモアがあり人を惹きつけるトークのできる男で在日朝鮮人でした。子供のころは嘘ばかりつくことから「ホラ元」とよばれていました。

19歳で一度目の結婚をし、それから5回の結婚と離婚を繰り返し、娘の同級生にまで手を出した男が最後に選んだ女性は風間博子でした。二人は離婚しているのですが、節税のためだったと言われています。

冷たい熱帯魚の犯人のモデル②借金苦から殺人に手を染める

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バブル期にシベリアンハスキーの繁殖で莫大な利益を出しますが、バブルの崩壊とともに莫大な借金を背負うことになります。その打開策として詐欺まがいの方法で犬を販売することになるのですが、それがばれたことで凶行に手を染めるようになります。

冷たい熱帯魚の犯人のモデル③殺人哲学を語っていた

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殺人への哲学ともいえるこだわりがいくつかありましたが、犯した凶行の残虐性と異常性を一番表しているものが「死体(ボディ)を透明にすることが一番大事」です。作中でもこのセリフとこのセリフが示す証拠隠滅の方法が使われています。

冷たい熱帯魚の犯人のモデルの実際の犯人は病死

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作中では社本に殺害されますが現実では異なります。死刑判決後東京留置所に拘束されていましたが、201611月頃から体調を崩し、病院で治療を受けていましたが、刑は執行されることなく2017327日早朝、同留置所において病死しました。

関根元にも通じる異常性癖を持つ殺人者小林遼に関する記事はこちら。新潟で犯した少女殺人事件の真相と過去に犯した凶行の有無、小林遼の生い立ちや育った官僚に影響があったのか詳しく解説しています。

冷たい熱帯魚と埼玉愛犬家連続殺人事件の異なる点

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今更言うことでもありませんが、いくら現実の凶行を元にしているといってもこれはフィクションです。当然現実に起こった凶行に脚色を施して、現実に起こされた凶行よりドラマチックに描かれています。

冷たい熱帯魚のオリジナル点①第一の事件との相違点

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第一の凶行は作中では村田のビジネスパートナーだった吉田ですが、現実には投資のために関根元から犬を買った顧客が犠牲者となっています。仕掛けた詐欺がばれたことでトラブルとなり、毒殺した後に亡骸を解体して燃やし、灰を山中に撒きました。

一般では一連の凶行の動機は「犬の売買をめぐる金銭トラブル」と言われていますが、現実に金銭のトラブルが凶行の原因となったのはこの事案だけです。そして山崎はこの凶行の最中に脅迫され、協力者になっていきます。

冷たい熱帯魚のオリジナル点②第二・三の事件との相違点

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劇中では第二、第三の犠牲者は村田を切り捨てようとした弁護士とその助手でしたが、現実の犠牲者は、暴力団の組員とその運転手でした。彼らは関根と顧客が揉めたときに間に入って仲裁を行っていましたが、第一の事案に気付いて強請るようになったため殺しました。

冷たい熱帯魚のオリジナル点③第四の事件との相違点

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作中における第4の凶行は社本の逆上による村田の刺殺ですが、現実では異なります。4番目の犠牲者は埼玉県に住んでいた主婦でした。バブル崩壊後資金繰りに苦労していたためこの犠牲者となる女性に株主になって出資してくれるよう依頼をしていました。

しかし株主話は嘘なのでそのうちバレてしまうと想像し、金を詐取した後殺します。この凶行には、この男の内面がよく出ています。普段は虚勢を張っているが、根は小心で猜疑心が強い。「そのうちばれるだろう」という理由で行った凶行がまさにそれです。

冷たい熱帯魚のオリジナル点④共犯者は自殺しない

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劇中では殺人鬼を殺した後、妻も殺して自殺する主人公となっていますが、現実の凶行では山崎は生き残っています。彼は逮捕されて3年間服役した後、出所して一連の凶行の顛末を書いた本を出版しています。

冷たい熱帯魚を通して監督が伝えたかったこと

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劇中では主人公の娘・美津子を除いて、主要登場人物全員が死んでしまいます。このような救いようのない、残酷で残虐なシナリオを通して、監督・園子温は何をつたえようとしているのでしょうか。

「生半可に愛に救いを求めるな」

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ハッピーエンドを望まれるフィクションであれば、絶望的なストーリーであっても最後は愛や希望で「まんざら捨てたものではないな」で終わることが半ば義務付けられています。しかし劇中にはその愛や希望が一切描かれていません。

大人になりきれなかった社本はその愛や希望にすがった結果破滅してしまい、ハッピーエンドとは程遠い終わり方をしています。これはストーリーを通じて、「いい大人なのだから愛や希望に頼らず自分でなんとかしろ。さもないとこうなるぞ」というメッセージなのでしょう。

冷たい熱帯魚以外の家賃3部作とは

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園子温の撮った中で、現実の凶行をベースに撮られた「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」」の3つを指して「家賃三部作」と呼ばれています。「冷たい熱帯魚」はその三部作の中でも凶悪なことで有名です。

冷たい熱帯魚以外の家賃3部作①東電OL殺人事件がベース「恋の罪」

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「恋の罪」は1997年に起こった「東電OL殺人事件」がベースになっています。東電で幹部を務めるエリートOLが夜は渋谷のラブホテル街で1回数千円で売春を行い、最後は売春場所としてしようしていたボロアパートで殺されるというものです。

「恋の罪」では、この昼間はエリート社員としてバリバリ働いているOLが、夜には売春婦として働く女性という部分を取り入れています。謎を追うミステリーものというわけではなく、話に登場する3人の女性を中心にそれぞれの生き方が描かれています。

冷たい熱帯魚以外の家賃3部作②震災に影響を受けた「ヒミズ」

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「ヒミズ」は元々は古谷実さんの漫画を原作に撮られていたのですが、製作期間中に起こった東北大震災がきっかけで大きく変化していきます。原作「ヒミズ」は、社会の外縁にいることを義務付けられてしまったかのような若者達の絶望のストーリーです。

原作は「普通に生きること」を目標に掲げ、生きようとする若者が、それでも「普通に生きられない」苦悩の中で苦しんで死んでいくというストーリーなのですが、あの大震災を経たことで、ストーリーのラストは最後には希望に向かって歩いていくというものに変わっています。

冷たい熱帯魚以外にも実際の事件がベースとなった映画とは?

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家賃三部作に限らず、現実に起こった凶行をベースに撮られたストーリーは探してみると結構色々あるものです。フィクションの中でしか起こらないような凶行が現実に起こってしまっているということなのでしょうか。

実際の事件が元となった映画①凶悪

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「凶悪」は2013年に公開されています。「上申書殺人事件」といわれる現実に起こった凶行がベースとなっています。死刑囚・須藤が週刊誌記者を獄中に呼び出してインタビューを受けます。「まだ世に明るみになっていない事件が3つある」

インタビューをした週刊誌記者は正義感から調査しはじめるが、死刑囚須藤が罪を告白した理由は、協力者であった「先生」と呼ばれる男を告発するためではなく、自身の延命のためだった。というストーリーです。

実際の事件が元となった映画②コンクリート

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「コンクリート」は2004年に公開されています。「女子高生コンクリート詰め殺人事件」をモチーフとして撮影されています。「十七歳悪の履歴書」という犯行側の視点で描かれた小説を元に撮られているのですが、この撮影には、犠牲者の親族や関係者に一切承諾をとっていませんでした。

話はやくざの下請けに成り下がっていた主人公が、うっぷん晴らしのために女子高生を誘拐し、その女子高生に対して監禁、集団レイプ、暴行の末殺してしまい、死体をコンクリートに詰めて捨てようとしたという、現実の凶行に沿ったものとなっています。

実際の事件が元となった映画③バッシング

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「バッシング」は2005年の公開です。2004年に発生した「イラク日本人人質事件」をモチーフにしています。中東の武装集団に人質にされたのち日本に帰国した記者への日本中からのバッシングと家族との繋がりを描いています。

冷たい熱帯魚の挿入曲

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音楽のストーリーに占める重要性は、完成度の良し悪しにしっかり影響を与えるほどに大きなものです。その点劇中においては、原田智英氏が担当し、監督の意図を正しく理解して音をつけているため、非常に魅力的なスコアがそろっています。

「スケーターズ・ワルツ」

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フランス人作曲家エミール・ワルトトイフェルによるワルツで日本での人気が高く、英国へ発注された日本限定ポピュラー名曲集CDに含まれたこともあります。パリの森林公園「ブリュゴーニュの森」にあったスケート場に着想を得て1882年に作曲されています。

哀切な曲が流れる中で、場違いともいえるようなこの曲が流れています。これは社本の妄想シーンのテーマとして使われていて、映像のプラネタリウムの青い地球とともに現実逃避のむなしさを表現しています。

交響曲第1番「巨人」第3楽章

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マーラー作曲によるこの曲は、演奏時間が比較的短めなこと、曲想が若々しく親しみやすいことなどの理由から演奏・録音の機会も多い曲なのですが劇中でも荘厳に、悲劇的に鳴り響いています。社本の無理やり凶行に加担させられた内面の葛藤を表現しているのでしょう。

撮影ロケ地

ネガティブな印象の多いので、そのロケ地はほとんどが非公開となっています。現実の凶行は埼玉県でおこっていますが、ストーリーの舞台は「静岡県富士見市」という架空の町が設定されています。それでもロケ地のいくつかは公表されています。

アマゾンゴールド

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劇中で村田が経営していた熱帯魚屋は茨城県水戸市にあります。「水戸熱帯魚センター」がそれです。外観は本当に普通のお店で、劇中とは大きく印象が異なります。劇中ではものすごく大きな建物の印象を受けますが、実物はそれ程大きく感じません。それでも普通の熱帯魚屋に比べれば大きいですが。

社本熱帯魚店

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劇中で社本が経営していた熱帯魚屋は、東京都中野区にある「アクアランド・まっかちん」がそうです。社本が娘と彼氏を殴るシーンや村田夫婦が車に乗って現れるシーンなど撮影されています。車の通りがほとんどない道なので、ロケもしやすかったのでしょう。

冷たい熱帯魚は実際の事件がベースのR-18映画!

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「家賃三部作」の一つで、現実の凶行をベースに撮られたエロ・グロが大丈夫なのであれば、非常に見どころの多い傑作となっています。普通であれば、ストーリーの中に希望を盛り込んで観客に「観てよかった」と終わらすところを、あえて希望を描かないことで観客に「自分で生きていくこと」を突き付けてきます。

大人は愛だの希望だの無くても生きていけます。生きるということに自分で意義を見出せない、大人になりきれていない大人にこそ是非これを見ていただいて、生きるということを考えて欲しい映画です。

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