白暁燕誘拐殺害事件の真実は?白冰冰と梶原一騎の娘を襲った悲劇

2つ目の説は、犯人グループは何者かに依頼されて誘拐事件を起こしたのではないか、という説です。冰冰さんの周りでは目立ったトラブルは起きていませんでしたが、知人である男性が彼女に大きな借金を背負っていた、というのです。

借金をしていた男性の存在

その男性は遊技場を経営しており、その経営が困窮したためにツテを辿って、有名人であり資産を持っているである冰冰さんに金を貸してくれるよう頼んだそうです。金を借りたはいいものの、返す当てもなく冰冰からは返済を迫られ、次第に窮地へ追い込まれていきます。

行き詰った男は、ついに裏社会の住民である犯人グループとコンタクトを取り、誘拐事件を企てます。成功すれば大金が懐に舞い込み、借金返済の当てに鳴るうえ、額によっては経営の立て直しもできる、と考えた末の犯行ではないかという噂があります。しかし、この男については存在の真偽もわかっておらず、あくまでも噂の域を出ないでいます。

白暁燕はなぜ最悪な最期を迎えなければならなかったのか

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金銭と引き換えにするため人質にされた暁燕さん。にも関わらず、犯人グループによって殺害されてしまっているのは何故なのでしょうか?身代金と引き換えにする人質であれば、被害者側の家族に無事を確認させ、金さえ払えば助かると思わせるために生かしておかなければ取引として成立しないように思われます。

また、人質がすでに死亡していることが警察などに知れれば、居場所が特定された際に踏み込まれる確率や乱暴さも高くなります。助けるべき人質がいないため、考慮しなければいけない可能性が少なくなるからです。暁燕さんのケースでは、被害者死亡という最悪の結末を迎え、さらには二次被害まで出てしまったいくつかの原因が考えられます。

原因①身代金受け渡しの失敗

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犯人グループは誘拐に成功しており、母親の冰冰さんへコンタクトを取ることまで成功しています。また、冰冰さん側も、警察への通報は行っていますが、犯人グループが欲求した額の身代金を何とかして集め、用意することができています。

にも関わらず、犯人グループは現場から逃げ去ったでもなく、そもそも指定した受け渡し場所に来なかったのです。取引までの間のやりとりでは、暁燕さんに質問したりと、犯人グループの彼女を取引材料にする気が合ったことがわかります。来なかった理由としては、警察が受け渡し場所を包囲していて警戒されたためだとの指摘があります。

原因②マスコミの過激な報道

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被害者死亡という結末を迎えた原因として、マスコミの過剰な報道競争が大きな理由としてあげられます。実は、最初の受け渡し失敗後にも、2~3回ほどの受け渡し交渉がされていました。しかし、それらはすべて失敗しており、最後にはアジトへの突入という強硬手段が取られています。

この受け渡し失敗の背景には、現場に押し掛けたマスコミがいたことで、カメラに写ることで身元が割れることを犯人側が警戒したためと思われます。また、被害者の母親である冰冰さんの自宅にもマスコミは殺到しています。傷心の中、礼を欠く質問を投げつける記者に冰冰さんが怒りをあらわにする一面もあり、マスコミへの批判が集まりました。

原因③主犯を取り逃がす

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先述の、警察隊による犯人グループのアジトへの突入の際、複数人いた関係者何人かをとらえることはできましたが、肝心の主犯格を取り逃しています。この失敗が、のちにさらなる悲劇を呼ぶこととなっていきます。なんと、その主犯格の男3人は、逃走途中に別の身代金事件や殺人・強姦事件を起こしていたのです。

事件①身代金要求事件

逃走した犯人たちは、逃げ続けるための資金繰りに悩んでいました。そこで、同様の手口で誘拐して家族に身代金を要求することを思いついたのです。被害にあったのは議員と会社経営者の2名で、どちらも身代金の引き渡しに成功し、無事身柄を開放されています。

事件②病院での殺人事件

犯人グループのうち2名は、事件がマスコミによって拡散されたため逃げ続けるのは困難だと考えたのか、自らの顔を整形して再び逃走することを思いつきます。しかし、名前も顔も割れている判り切った犯人に手を貸す奇特な病院はありません。そのため、無理やり脅して手術をさせることにしたのです。

ターゲットとなった病院で無事手術を終えた犯人は、あろうことか執刀した医師とその妻、さらには勤務していた女性看護師までもを手に掛けます。結果的は、被害にあった3人全員が死亡し、女性看護師については強姦された後に殺害されるという、個別に見ても悪辣な事件が発生してしまいました。

原因④街中での銃撃戦

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最終的には、主犯格のうち2名が自ら命を絶つことになるのですが、そのどちらのケースでも警官隊との銃撃戦が発生しています。この銃撃戦では、警察側の特殊部隊が出動するまでの騒動に発展しており、銃撃戦に参加した1名の警察官が命を落としています。市民に被害がなかったことは、不幸中の幸いと言えるでしょう。

白暁燕を失った白冰冰の現在

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一人娘の暁燕さんを非常に可愛がっていた冰冰さん。夫とは離別しており、厳しい芸能界で活動していく中、娘である暁燕さんがどれだけ彼女にとって心の支えとなっていたかは想像に難くありません。愛娘を失った後、台湾のスターだった彼女はどうしているのでしょうか。

冰冰さん自体は、2019年現在でもご存命で、今でも台湾のテレビスターとして歌手や司会者など幅広く活動されています。しかし、タレント活動に加えて、事件の後は人権活動家としても有名になりました。死刑存続の訴えや、犯罪被害者のケアなど、自らの経験を無駄にしないよう懸命に呼びかけているようです。

悲しみをぶつけた手記を出版

燕よ、空へ―慟哭を乗り越えて

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事件から1年ほどのち、冰冰さんは1冊の本を出版されています。本の中では、日本での生活、台湾に移ってからの暁燕さんとの2人きりの生活、そして凄惨な事件が起き一人になってからの心情が冰冰さん自らの視点で語られています。中には、犯人たちについて触れている文章もありますが、決して詰るような言葉ではなく、人柄が表れています。

ドクターストップがかかるまで人工授精を繰り返す

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一人娘を失った後の冰冰さんの悲しみはとても深いものでした。家族を失った彼女は、再び子どもを持ちたいと願います。そのために、人工授精による妊娠治療を試みますが悲しいことにすべて失敗に終わってしまいます。人工授精による妊娠は、何度も容易に行えるほど軽い治療ではありません。

幾度目かの治療の際に、冰冰さんは医師に自分の身体のことを顧みるように忠告されます。つまり、事実上の治療継続不可の宣告でした。冰冰さんは悲しみにくれますが、いつまでもうなだれているわけではありませんでした。自らの経験を活かし、自分のような悲しい人間を出さないように尽力することを決意するのです。

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