袴田事件って?48年も拘留所にいた人がまさかの冤罪?
袴田事件というものをご存知でしょうか?現在では日本においての過去最大の冤罪とも言われています。そしてこの事件の中心人物となる袴田巌さんは、現在は釈放の身となっています。今回はこの事件について詳しく解説していきます。
袴田事件とは?袴田さんが犯人とされた事件の概要
彼が凶悪犯と呼ばれたのはある事件がきっかけでした。今から53年前に起きた放火殺人事件です。きっかけとなったのはこの事件ですが、事件が起きて死刑という判決が下ったのにも関わらず今なお解決していないこの事件について解説していきます。
袴田事件とは①1996年に静岡で起きた放火殺人事件
まずはことのきっかけとなった放火事件です。この放火により死者が出てしまっているので殺人事件になります。そして容疑者となったのが、今回の中心人物である袴田さんでした。53年前に静岡県の清水市でのことです。容疑は放火・強盗・殺人でした。
袴田事件とは②被害者が勤めていた工場職員の袴田さん逮捕
この事件で被害にあったのは、袴田さんの勤務先である味噌工場の専務の自宅で、屋内には専務含めた家族4名の焼死体が発見されており、唯一生き残ったのが専務の長女だけでした。なぜ生き残れたのかは後述させていただきます。
そして同じ勤務先である工場で働いていた袴田さんが逮捕されてしまいます。これが彼にとっての悪夢の始まりなのです。証拠品としては袴田さんの家にある寝間着から、極少量の血痕が発見されています。このことについても詳しく後述させていただきます。
袴田事件とは③一度は自白するも裁判では無罪を主張
逮捕されてしまった彼は、幾度となく繰り返される取り調べの末、自分がやったと自白しています。しかしいざ裁判が始まると無罪を主張しています。この事実自体を全面的に否定しており、ここから先の裁判すべてで無罪を主張し続けております。なにがあったのでしょうか?
袴田事件とは④事件から14年後に死刑の判決
一度自白している分裁判も混乱することとなり、事件が起きてから14年経過した頃に行われた裁判で死刑が言い渡されます。この事件はまだまだ先がありますが、もちろんこの14年間彼は拘置された状態でした。
袴田事件のその後!無実の証拠が登場?!
この判決が確定してからも 無実を主張し続けるのですが、その主張が実を結ぶかのように流れはかわります。本来死刑が確定した場合、新たな確固たる証拠が出てこない限り、覆ることはないのですがこの「新たな証拠」が出てくることになりました。
袴田事件のその後①2012年に最新のDNA解析
その証拠とはDNAです。そもそもこの事件が起きたのは53年も前です。この当時の鑑定技術は決して高いものとは言えず、まったく信用することのできないものだったのです。そして事件後46年たった2012年に、再びDNA鑑定をした結果、彼とは別のDNAでした。
ちなみに血痕が付着していた場所ですが、血痕が付いていた場所は当時彼がけがをしていた部分で、血がついているのは当たり前とされていました。そして驚きなのは、被害者の血液型(4名のうち1人)と彼の血液型が一致しただけの鑑定結果でした。
袴田事件のその後②死刑囚のまま異例の釈放へ
この最新技術の介入によって、新たな証拠が提出されたことにより死刑判決が取り消されました。このまま釈放となるのですが、扱いとしては変化はありませんでした。この結果は異例として扱われ、前代未聞の結果となってしまいました。
袴田事件のその後③4年もかけて専門家で協議
新たな証拠を提示した静岡地裁なのですが、その証拠に対しても専門家が協議されています。しかもその歳月は4年も費やされており、最新のDNA鑑定の結果が否定されてしまったのです。理由は信用できるものではないからだそうです。
袴田事件のその後④最高裁で静岡地裁の決定取り消しに
新たな証拠によって最高裁の判決を取り消すことに成功した静岡地裁なのですが、この証拠に対して4年物歳月を費やし専門家が協議した結果、地裁の取り消しを取り消されています。つまり現在でも死刑囚という扱いになっているわけです。
事件が起き裁判に裁判を重ね続け死刑が決定し、それでも新たな証拠を提示することによってその決定を覆されたのですが、それすらも取り消されてしまっています。最新の鑑定技術が介入しているのにも関わらず、それを認めてはもらえませんでした。
袴田さんの現在は?まだ釈放中?
そんな彼は現在83歳とかなり高齢で、一般的に言うとおじいさんです。50年以上も世間から隔離されてしまっていたので触法されても社会には簡単にはもどれません。そんな彼は現在どうなったのでしょうか?解説していきますのでご覧ください。
袴田さんの現在①再審決定が取り消されるも死刑囚ながら釈放中の身に
静岡地裁によって勝ち取った再審決定という結果すらも取り消されてしまった彼は、現在も死刑囚の扱いです。しかし釈放はされたままです。もちろんこの結果も前例がなく異例とされています。次の再審をただ待つ身となり、不安が常に付きまとった生活を送っています。
袴田さんの現在②姉と一緒に浜松市に在住
現在の彼の住まいは静岡県の沿岸部にある浜松市に在住しています。約50年タイムワープした感覚の彼は、一人ではとても生きてはいけないので、姉と一緒に暮らしています。しかし83歳と高齢の彼の姉はさらに年配なので今後が心配です。
袴田さんの現在③長期の拘束により精神的に拘禁症状が出ている
約50年の時代をタイムワープしただけではありません。彼は50年近く牢屋の中にいたのです。そして今も死刑囚として自由の身ではありません。これが原因で精神的に拘禁症状が出てしまっています。これは強制的に自由を抑圧された場合に発症します。
これにより、こちらが話したことは理解するものの、まともに話すこともままならず、コミュニケーションをとることが難しくなっています。その他には糖尿病も患っており、決して健康な状態とはいえないものでした。
袴田さんの現在④高齢により体調不良…再審は行われるか?
もちろん健康状態を脅かすのはそれだけじゃありません。端的に高齢だということも体調不良の原因とされています。これらの原因を考慮すれば、再審が間に合うかどうかも怪しいことがわかります。しかし今も死刑囚として扱われているのは心苦しいです。
袴田事件の真相!①なぜ自白した?
ここまで事件のあらすじを見てきた中で、一番最初の疑問が浮上します。一貫して無実と声を上げている彼ですが、取り調べの段階では自白しているのです。この矛盾について考察していきますのでご覧下さい。
袴田事件の自白理由①警察から過酷な取り調べを受けた
冤罪が生まれる原因のひとつとして真っ先に考えられるものがあります。それは警察による取り調べが正規の手順や方法をとらない場合です。公僕である警察がそのようなことをするとは考えにくいかもしれませんが、実際に前例が山ほどあります。
袴田事件の自白理由②取り調べで暴行を受けた?
そしてその正規の方法ではないパターンの一つとして、警察からの暴力が挙げられます。現在では世間の目が厳しくなっていってる傾向にあるので、かなり少なくなっているかも知れませんが、半世紀前までは当然のように行われていました。
残念ながらこれらは事実で、確かにあったことです。もちろんこの事件に関して言えば明確な証拠があるわけではないのですが、年代や自白するまでの歳月、裁判時の無罪主張がこの可能性を否定しきらないものとなっています。
袴田事件の自白理由③命の危機を感じて自白した?
そしてこれらのことがあった場合、もちろん仮定の話として、上記の事実があった場合命の危機を感じるのは当然です。また巧妙な話術を使われた取り調べは神経を消耗することもあるそうなので、自身のことを考えて一旦自白したのではないかと思われます。
袴田さんは体調不良になり、身体に異常が出ていた
そしてこの取調べが原因で、身体に異変が起きていたといいます。それは大きな声を荒げたものや、机をたたく音などでまず耳に異変が起きました。前提として見えない異変はもちろんあって、頭痛やめまいなどもあったそうです。
耳は中耳炎になり、体はむくんでしまったそうです。これらの一番のきっかけとなったのが精神的なストレスと、寝不足によるものだそうです。わざわざ夜寝かさないという嫌がらせの為に、少し離れた部屋で酔っ払った警官が騒いでいたとも話しています。
この事件の取り調べの実態
漫画やドラマで出てくる取り調べのイメージ。つまり読者の皆様がもっている一般的な取り調べのイメージは「お前がやったんだろ!」と大きな声とともに机を叩いて、決まってかつ丼が出てくるものかと思われます。
しかしこの事件の取り調べに関してはまったく違います。記録や袴田さん本人の話をもとに、この事件の取り調べについて実際に行われた内容や時間をまとめてみました。また解説もしていきますのでご覧ください。
取り調べに費やされた時間
まずは時間と回数です。記録に残っているものだけを参照にしているので、実際はこれ以上かもしれません。19日間休まず毎日繰り返され一日に2回以上、この間で合計63回もの取り調べが行われています。1日に3.3回行われたことになります。
また時間に関してはほぼ毎日10時間以上行われており、19日間の合計が約220時間行われていました。これは分単位で表すと13253分というとてつもない数字になります。1日11時間以上行われたこととなり、また最長で16時間20分にも及んだそうです。
本人が語る実際の内容
この拷問に近い取り調べの内容がこれまた悲惨なものでした。実際これだけの時間警察の方と話すだけでも普通は苦痛です。牢屋の中にいる時点で自由は奪われその上その中で限られた自由すらも許されないのです。
その内容は、トイレに行きたいと言えば取調室でさせられたり、大声での恫喝はもちろん、やってもいないことを延々と述べられたりと洗脳に近しいものでした。人間はこれらのことで「やったのかもしれない」という錯覚に陥ったりもするそうです。
現在でもごく稀にある
ネットの普及により、情報の拡散力が大幅に上がった現代では、炎上などを考慮しほとんどこのような取り調べは行われていません。もしも実行してその事実が世間に明るみになれば、警察の威厳がなくなるからです。
しかし、極稀とはいえ現代でも行われていることは確かです。ここまでではないにしろ、恫喝や洗脳の類の取り調べはたまにニュースで流されています。自身の身の潔白を証明したい場合は、何があっても負けないことが大事なのです。
袴田事件の真相!②なぜDNA鑑定が覆った?
死刑が確定され、その事実がひっくり返ったきっかけにもなったDNA鑑定ですが、どうしてこうも簡単に覆ったのでしょうか?その当時のDNA鑑定の内容や、袴田さんでないなら誰が彼を陥れたのかについて解説、一部考察していきます。
袴田事件のDNA鑑定①当時はDNA鑑定がなかった
軽く前述させていただきましたが、約50年前の事件です。当時のDNA鑑定と現代のそれとはまったく別物と考えてもさしつかえがないほど、当時の鑑定技術、方法はずさんなものでした。つまり当時は鑑定技術がなかったと言っても過言ではないようです。
そしてその方法がずさんなこともさることながら、血液型が一致した(4人中1人とだけ一致)だけで犯人と決め付けて逮捕に至ったことにも疑惑の声が上がったそうです。つまり、まるで彼がやったと最初から決まったていたような感じです。
袴田事件のDNA鑑定②弁護団推薦によるDNA鑑定
そして再びDNAを鑑定したのが、弁護団が推薦した専門家で、鑑定に特化した専門家たちでした。その方法はより詳しく鑑定結果を出すために行うもので、血液以外の液体・物質が混入されない方法でした。しかしその方法は信じられないと否定されています。
とにかく徹底的に調べた結果、かれの血液とは一致しない結果がでたのです。ちなみに勤務先の味噌工場の味噌タンクの中から新たに、血液の付着した5点の衣類が出てくるのですが、事件から約1年後に発見されています。
袴田事件のDNA鑑定③警察の捏造の疑いあり?!
新たな証拠が出てきたり、鑑定結果が門前払いになったりと不可解なことが連続しておきます。この証拠もでっちあげたような点がいくつか見られ、下着に血液が付着しているのにズボンからは一切検出されなかったり、サイズが彼には合わなかったそうです。
これらのことからある疑惑が浮上します。それはすべて警察により捏造されたのもではないのか?といったものです。確かに合点がいかないことが多く、タイミングよく新しい証拠がでてきたりと都合がよすぎます。よって警察も怪しいという声も多かったそうです。
袴田事件の真相!③一度は認められたDNA鑑定がまたもや覆った理由は?
前述させていただきましたが、新技術での鑑定も否定されています。ではなぜこの鑑定結果が認めてもらえなかったのでしょうか?覆る場面が多々あるのでややこしいですが、これについて詳しく解説していきますのでご覧ください。
全体の流れとしては、事件が起き袴田さんの衣類に血液が付着、その血液が被害者のものと一致したため逮捕となり死刑が確定します。しかし14年後にDNA鑑定しなおした結果一致しないという結果だったのでそれを指摘したものの、その結果は認めてもらえなかった。とこんな感じです。
袴田事件と東京高裁①DNA鑑定に対する評価
当時のものと比べるとはるかに進化した鑑定技術ですが、残念ながら否定されてしまいました。これは最高裁が別の専門家に頼んで行った鑑定では、別の結果が出てしまったからです。このことに対して、この方法は疑問が残ると話しています。