エドガーアランポーとは?1800年代に活躍した小説家!
世界に数ある創作作品。小説や映画など作品形式に限らず、ラブストーリー、コメディ、ドキュメンタリーなど様々なジャンルが存在しています。その中でも異色の存在を放っている「ミステリー」ジャンル。
題材が犯罪であるという、その怪奇ながらも幻想的な不思議な魅力に虜になっているファンの方は多いはず。特にミステリー小説分野では、はるか昔から読書会やファン会合が開かれるなど、根強い人気を保ってきました。
老若男女問わず引き付けてしまうその幻想的なジャンルは如何様にして、そしてどんな怪奇的な人物の手によって創造されたのでしょうか。その希代の小説家の名は「エドガーアランポー」、ミステリーの父であります。
エドガーアランポーは怪奇と幻想を描く革新性の小説家!
アメリカ合衆国が独立国として旗印を揚げた歴史的ターニングポイントから40年が経とうとする1809年。未だ混乱の残る歴史の流れの中、ボストンで類まれなる怪奇な才能を持つエドガーアランポーは誕生します。
優秀な成績で学士を修めた後は、陸軍へ所属するなど在り方を転々としていましたが、自分が紡ぐ物語の力で自らの生活を立てようと執筆活動に取り掛かります。彼の才能はみるみると発揮されました。
30歳の頃には「アッシャー家の崩壊」を世に放ち、その2年後には現代にまで受け継がれる探偵小説の基盤「モルグ街の殺人」を生み出しています。主に西欧諸国で幻想的な世界観が受け、人気は隆盛を誇ります。
エドガーアランポーの波乱万丈な人生とは?
エドガーアランポーは、取り立て裕福な家庭で育ち、両親に才能を認められ伸び伸びと執筆にいそしむことができたような人間ではありません。むしろ、彼の人生は始まった時からすでに波乱を感じさせるものでした。
では、その荒波を縫う厳しい航海のような人生の中で、斯様にして「モルグ街の殺人」のような残忍とも言えるテーマを扱い、怪奇でありながら、どこか蠱惑的な幻想世界を持つ小説群は作られていったのでしょうか。
エドガーアランポーの生い立ち①3歳で両親を亡くした
エドガーアランポーなる人物は、どちらも芸術表現に秀でた才能を持つアクターとアクトレスでした。また、祖父も稀有な人徳と才能の持ち主で、かの独立戦争時には並々ならぬ才覚を発揮し、階級付きへと躍進しました。
そんな才能溢れる肉親に囲まれて、巡業のためにアメリカ各地を転々としながら育ったエドガーアランポーでしたが、安寧な日々はついに訪れませんでした。彼が1歳の時に、突如俳優だった父親が姿を晦まします。
父親が失踪したときに、エドガーアランポーの母親は身重の状態でした。そのため舞台に立つこともできず、貧困に喘ぎながら、当時流行り病で不治とされた結核に掛かり3人の子供を残してこの世を去ってしまいます。
エドガーアランポーの生い立ち②ヴァージニア大学へ入学
かねてより親交のあった商人の家、アラン家にひき取られたエドガーアランポーは、家業のためにイギリスへ渡ったアラン家の人々とともに、ここでも各地を転々としながら幼少期をヨーロッパで過ごします。
エドガーアランポーの文芸の才能はこの時分から発揮されており、特に外国語分野や作詞などで優秀な成績を修めていたようです。その後、成長したエドガーアランポーは、ヴァージニア大学へ入学します。
しかし、在学中に生活苦から賭博に手を出し、多量の負債を抱えた末に退学を余儀なくされます。退学後は、年齢を偽り軍学校へ入隊しますが、周囲や環境との折が合わず、こちらも卒業せずに放校されています。
エドガーアランポーの生い立ち③従妹のヴァージニアと結婚!
軍の世界から身を引いたエドガーアランポーは、詩や短編などライトな書き物をしつつ収入を得るようになっています。執筆を続けるその中で、数々の縁故に恵まれて雑誌の編集者としても迎えられていました。
そんな人生の出世街道を狂わせるのはいつの世も色恋沙汰。エドガーアランポーもその例にもれず、従妹である僅か13歳のうら若き少女であったヴァージニアに心奪われてしまい、必死のアタックの末に結婚します。
結婚年齢にも達していない娘を嫁に出すなど言語道断と断り続ける彼女の母親でしたが、エドガーアランポーの必死の猛攻を受け続けることができなくなり、結果としては折れ2人の結婚を認めざるを得なかったようです。
エドガーアランポーの生い立ち④40歳で死亡
愛する人生のパートナーと連れ添い、モルグ街の殺人など数々の名作を生み出していったエドガーアランポー。しかし、不幸なことに彼の人生は早急に終わりを告げることとなります。転落のきっかけは、妻の死でした。
彼から唯一無二の母親を無常にも奪い去った結核の病魔の手が、妻・ヴァージニアにも襲い掛かったのです。エドガーアランポー仕事も奮わなくなり、治療費と生活費にだんだんと家計は圧迫されていきます。
わずか27歳で命を落とした妻を見送り、その2年後には再び彼を支えてくれる女性と婚約をします。しかし、エドガーアランポーは結婚を控えたまま、酒場で突如謎の死を遂げ人生の幕を降ろすのでした。
エドガーアランポーの家や墓の現在は?
エドガーアランポーの死後、彼の希代な才能や残された作品たちに魅了された有志によって、晩年の生活拠点や墓石がアメリカに残されています。残念な事に、彼が本国で評価されたのはこの世を去った後でした。
エドガーアランポーの晩年の棲み処はNYのブロンクス、彼のレリーフがはめ込まれた立派な墓標は最後の地であるメリーランド州のボルティモアという地に建てられており、彼の人生の終末を感じることができます。
エドガーアランポーはなぜ死んだ?死因については様々な考察がある?
美しい未亡人との再婚を間近にする中、突如、場末の酒場で奇妙な死を遂げたエドガーアランポー。生前からあまり酒癖はよくなかったようで、その酒癖のせいで婚約を白紙に戻されたというエピソードもあります。
しかし、だからこそ反省を生かして新しい妻を迎え、人生のリスタートを切ろうとしていたのではないでしょうか。その矢先に一体何故、えどエドガーアランポーは命を落とすこととなったのでしょうか。
エドガーアランポーは酒場で異常に泥酔していた
再婚の準備と、自分の作品集の出版準備にと忙しく東奔西走していたエドガーアランポー。彼はなぜか、その準備の旅の途中で選挙真っただ中のボルティモアへと立ち寄り、図らずもその地を最期の土地とします。
選挙の投票区内に軒を構える1件の酒屋で、エドガーアランポーは旧知の男性の通報によって酩酊状態になっているところを病院へと搬送されます。しかし、治療の甲斐なく1週間もたたないうちにこの世を去りました。
エドガーアランポーは「クーピング」被害者説
エドガーは病院に運び込まれて数日間の後に死亡しました。にもかかわらず、不可解なことに関連する書類は全て消失してしまっています。死因は脳溢血とされていますが、まことしやかに囁かれている説があります。
それは、選挙投票に関わる「クーピング」という犯罪に巻き込まれたのではないかという推察です。クーピングとは、身分のはっきりしない流れ者や浮浪者、あるいは旅行者に酒を飲ませて無理やり投票させる手口です。
ボルティモアは議会選挙の渦中にあり、旅行者であるエドガーアランポーは格好のターゲットであると言えます。そのため、何杯も無理な飲酒をさせられ急性アルコール中毒を引き起こしたのではないかと言われています。
エドガーアランポーの代表作を紹介!
そんな不可解な非業な死を遂げたエドガーアランポー。彼の人生も苦難と謎にあふれたものでしたが、その境遇が才能の研鑽に磨きをかけたのか、素晴らしい小説作品が死後150年以上たった現代でも愛されています。
近代ミステリの祖と言われるエドガーアランポーによって紡がれた奇妙な物語たち。そんな魅力あふれる作品たちのあらすじを、代表作であり探偵小説の走りである「モルグ街の殺人」から広く紹介していきます。
エドガーアランポーの代表作①モルグ街の殺人
「モルグ街の殺人」は、世界で初めて探偵小説像が作られたファンデーションとなった作品です。作品は一人称視点で語られる形式のもので、読者と作中の語り手をリンクさせて小説に没入しやすくなっています。
物語は、栄華極まるパリのモルグ街で、1件の人間の所業とは思えない猟奇事件が発生するところから始まります。ある紳士と知り合った語り手は、紳士につれられて怪奇事件の現場調査に同行します。
その紳士こそがシャーロックホームズのモデルにもなったシュバリエ・オーギュスト・デュパンであり、現場に残されたある証拠からピタリと犯人を言い当てます。事件の犯人は、誰も想像し得ないものでした。
エドガーアランポーの代表作②黄金虫
「黄金虫」も、モルグ街の殺人と同じ小説形式をとっており、主人公である語り手は読者とリンクしており、彼の知りえる情報は読者の知り得る情報と全く同じものになり、抜け駆けをしないよう考慮されています。
語り手の友人であり、現在は隠居し静かな生活を送っていたルグランという男性が、ある昆虫を入手するところから物語はスタートします。主人公には、その昆虫が奇妙な模様を持つただの虫にしか見えませんでした。
しかし、ルグランはその秘密に気が付き、数週間の後に主人公を呼び出します。なんと、その虫に隠された秘密とは海賊キッドが隠した財宝の在り処だというのです。2人は連れ立って、暗号の示す地へ赴くのでした。
エドガーアランポーの代表作③ウィリアム・ウィルソン
この物語は、モルグ街の殺人などとは毛色の違う、語り手の独白のような形式でストーリーが進んでいきます。語り手は「ウィリアム・ウィルスン」という偽名を名乗り、自分に降りかかった不幸について書き記します。
ウィリアムは、彼の人生においてずっとある人物が伸び付きまとっていると記します。その相手の名は「ウィリアム・ウィルスン」。空恐ろしいことに、名前どころか2人のウィリアムは進路も行動も全てを同じにします。
そのもう一人のウィリアムの執拗な行為によって、語り手のウィリアムの人生は散々なものとなりました。ついに耐え切れなくなった語り手のウィリアムは、ある思い切った行動に出るのでした。
エドガーアランポーの代表作④黒猫
この作品は、今までのミステリ色の濃い作品とは違って、かなりホラー色の強く感じられます。物語の主人公は動物をこよなく愛する一人の男性で、その男性が飼っているうち1匹の猫がストーリーの起点になります。
動物を慈しみ、妻と動物たちと平穏に暮らしていた男性。しかし、男性は次第にアルコールに依存するようになり人が変わってしまいます。そんなアルコールに依存する男性に、更なる不幸が襲いかかります。