その不幸とは火災でした。その火災をきっかけに、男性は一気に狂気の坂道を転がり落ちていきます。最初は、あんなに大切にしていた動物たち、そして次いでは大切にしていた猫、そして最後は愛する……。
エドガーアランポーの代表作⑤アッシャー家の崩壊
アッシャー家の崩壊も、代表作のモルグ街の殺人等と同様に、主人公の視点によって物語が綴られていきます。また、この小説の幻想的な世界観は、後のゴシックホラーへ多大な影響を与えたと言われて負います。
主人公はある日、旧友であるアッシャーから一通の手紙を受け取ります。中には、妹と2人で大きな屋敷に隠遁しておりアッシャー家特有の病によって精神を病み、その治療の手助けをしてほしい旨が書かれていました。
最初のうちは、音楽を楽しんだり、読書を共にしたり穏やかに過ごす3人。しかし、旧友の妹の死と、主人公が一冊の本を読み聞かせ始めたことをきっかけに様々な怪奇現象が発生するのでした。
エドガーアランポーは小説以外にも詩や書評を多く残した
怪奇小説や幻想小説以外にも、エドガーは様々な分野で文才を発揮しています。雑誌の編集者を務めていたこともあり、目的によって文体を変えることを得意としたようでストレートな批評文は読者にも好評でした。
また、エドガーアランポーは数々の美しい詩を残しており、それらを編集した詩集の出版にも精力的に活動していました。詩においては、エドガーは文法や内容の整合性よりも「美」を意識して創作していたようです。
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エドガーアランポーと江戸川乱歩の関係とは?
「D坂の殺人事件」や「少年探偵団」など、大人向け幻想怪奇小説から子供向け小説まで手広く執筆した奇才である江戸川乱歩。日本人である彼も、如実にはるか異国の人であるエドガーアランポーの影響を受けています。
江戸川乱歩のペンネーム自体も名前をもじったものであることから、その影響力は容易に察することができます。作品としては、処女作である「二銭銅貨」で顕著に「黄金虫」の影響をうかがい知ることができます。
エドガーアランポーは近代ミステリーの開祖!日本での影響作品は?
日本の文学史に名を残す数々の文豪たち。彼らが広く世に知られるきっかけとなった作品群には、探偵小説などの大衆向けのものだけではなく幻想小説や怪奇小説と呼ばれるグロテスクな作品も多く見られます。
それらの祖とも呼ばれるエドガーアランポーですが、はるか遠くの島国である日本においても探偵小説のみならず詩の分野までにおいて、世界観や技法のオマージュが見られる作品が年代問わず広く見られます。
日本では小説だけではなく「名探偵コナン」などの人気漫画も
小説分野だけではなく、モルグ街の殺人に登場する名探偵・デュパンのイメージを色濃く受けた探偵像が登場する漫画作品も日本には多く存在しています。名探偵コナンや、金田一少年の事件簿が有名でしょう。
名探偵コナンの主人公である工藤新一が使用している偽名「江戸川コナン」という名前も、江戸川乱歩、遡るとエドガーアランポーの名前を由来にしています。作中には、数々の探偵たちが登場し活躍します。
難事件を解決し黒幕である黒の組織の正体へ迫るストーリーが魅力な作品ですが、ネットでは人気キャラクター・服部平次や黒の組織のボスの話題で盛り上がっているようです。こちらの記事で詳しく紹介しています。
エドガーアランポーが生み出した世界初の名探偵
世界で初めて探偵小説に登場する「名探偵」のキャラクター像を確立したエドガーアランポー。その世界初の名探偵は「モルグ街の殺人」に登場します。あのシャーロックホームズのモデルになったともいわれています。
その名もシュバリエ・オーギュスト・デュパン
名門貴族の出であり、かつては騎士を務めていた、という経歴を持つエリートです。彼は現地での調査から事件の真相を解明するだけでなく、事件の概要を聞いただけで真相をピタリと言い当てることができます。
しかし、それは超能力ではなく、彼の明晰な頭脳による論理的な推察の結果なのです。現場に行かなくとも、安楽椅子に座っているだけで謎を解き明かすことができるという事で「安楽椅子探偵」とも呼ばれています。
エドガーアランポーの影響を受けた作家は多い!音楽界への影響も
エドガーアランポーの生み出す幻想的な世界観に魅せられたのは、何も文学の世界に携わる人々にとどまりません。また、生み出された作品だけではなく怪奇な死を遂げた彼の人生像も人気を博しています。
そんな有志達が、彼の作品をオマージュした新たな名作を生みだしたり、彼の波乱万丈な人生もモデルにして新たな作品を作り上げるなど、エドガーアランポーは死後も数々の人を魅了し続けているようです。
エドガーアランポーの影響を受けた人物たち
エドガーアランポーは、モルグ街の殺人を代表作とする探偵小説分野だけではなく、アッシャー家の崩壊など幻想小説と呼ばれるゴシックホラーや、黄金虫などの冒険小説分野に於いてもヴァンガードと称されます。
探偵小説でいえば、シャーロックホームズの生みの親であるコナン・ドイル、ゴシックホラーにでは日本の谷崎潤一郎、冒険小説においてはタイムマシンで知られるウェルズなど、多くの分野でリスペクトが見られます。
エドガーアランポーの作品を元にした音楽作品も
エドガーアランポーの持つ幻想的な世界観は、音楽界でも広く受け入れられています。エドガーの作品をモデルにした曲はもちろん、中にはエドガーアランポー本人をモデルにした曲も作られています。
有名なロックミュージシャン、マリリン・マンソンは中でも熱烈なファンであり、エドガーをモデルにした曲のみならず絵画も描いているようです。また、エドガーから名前をもらったPoeというバンドも存在します。
日本の有名アーティストである宇多田ヒカルもエドガーアランポーをモデルにした「クレムリン・ダスク」という曲を作っています。アメリカや日本のみならず、ヨーロッパ諸国でも多大な影響を与えているようです。
エドガーアランポーの作品や本人を元にした文学作品も!
また、文学分野でもエドガーアランポーの影響を受けて作品を執筆した作家がいます。とはいっても、今まで紹介したような幻想的な世界観や、怪奇な事件が起こる探偵小説を書いた、というような内容ではありません。
影響を受けて作られた作品ではないならば、一体どんな作品なのかと言いますと、なんとエドガー本人の人生をモデルにしたドキュメンタリーや、エドガー本人と登場させるようなパロディ作品なのです。
エドガーの晩年の人生をなぞるドキュメンタリ作品「推理作家ポー」という映画が母国・アメリカで制作されていることから、作品だけではなく、エドガー本人も非常に魅力あふれる人物であったことが伺い知れます。
エドガーアランポーはタイムトラベラー?事件や宇宙の真理を先読みした?!
早々に肉親を失い、大学は中退。また、軍とはそりが合わずに脱退し、せっかくつかんだ再婚のチャンスを逃すなど、本人の人生を追うだけでもかなり面白い伝奇小説が作れそうなエドガーアランポー。
しかし、彼はただ非凡で平穏な人生を送った一人の人間というだけではなく、なにか特殊な能力を持っていたのではないかという、まるでフィクションの登場人物のような嫌疑まで掛けられていた怪人物だったのです。
エドガーアランポーの小説と実際に起きた難破事件が酷似?!
エドガーアランポーが唯一手掛けた長編作品である「ナンタケット島のアーサー・ゴードン・ピムの物語」というタイトルが課された、難破船でのサバイバルをテーマとして扱う小説作品があります。
難破船に同乗している乗組員たちが、究極の飢えに襲われた結果、尊い仲間の命を犠牲に生き延びるというストーリーなのですが、この小説に酷似した事件が、作品発表から50年近く経った後の世で発生します。
小説と事件の酷似性だけでいえば無い話ではないのですが、なんと実際の事件で犠牲となった乗組員と小説に登場する人物が全くの同姓同名であったというのだから、タイムトラベラーであることが疑われたのも納得です。
エドガーアランポーは脳科学の知識があった?
エドガーアランポーは、幼少期から優秀な頭脳を持っており、特に言語分野でその才覚を発揮しました。しかし、彼が持っていた知識は言語分野だけではなく医療分野にまで及んでいたのです。
現代の医学知識の浸透からいえば、脳への衝撃による人格の変貌はメジャーな知識になっています。しかし、エドガーが生きていた時代には、脳科学の分野はほぼ未知であると言えるほど解明が進んでいませんでした。
にもかかわらず、エドガーは「実業家」という自信の作品において、脳へのダメージを受けた男性の人格が変貌し、のちの人生が苦難溢れるものになるという、明確な知識に基づくかのような描写を行っていました。
エドガーアランポーはビックバン理論を説明していた?!
エドガーアランポーがタイムトラベラーと疑われた原因は、未来の事件の予見や、解明されていない医学知識にとどまらず、なんと宇宙分野にまで及んでいるのです。それは、彼の遺作である「ユリイカ」に由来します。
このユリイカという作品は、文学小説作品とされていますが、内容については非常に論理的に導かれた推察で満たされており、まるで一種の論文のような様相を成しています。
その中で、当時は不可思議とされていた宇宙の銀河系誕生に関する記述が登場するのですが、それが現在定義されているビッグバン理論とほぼ同様の理論展開がされていたため、有識者は非常に驚いたようです。
エドガーアランポーの小説の書き方はビジネス戦略でも役に立つ?!
エドガーアランポーが小説作品、詩、批評などすべての文章を作成する際に念頭に置いていたセオリーがあり、それは現代のビジネス戦略分野に於いての考え方にも応用できるものになっています。
そのセオリーとは「結末を最初に作る」ことで、着地点を明確にすることで物事を帰結的に考えることができ、重要点の見出しや決定を目的から逸らすことなくできるようになるとエドガーは語っていたそうです。
エドガーアランポーは本人も作品もミステリーに満ちている!
エドガーアランポーは、数々の名作だけではなく、彼自身の人生や人物像も未知の謎に満ちており、まるで「歩くミステリー」のような存在でした。若くして命を落としてしまったのは、文学界において手痛い損失です。
犯罪のにおいが漂う死に方をしたエドガーアランポー。彼の死の真相はいまだ解き明かされてはいませんが、それの要素がより、彼の波乱万丈な人生を一つのミステリ小説のように見せている魅力かもしれません。
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