セシウムさん騒動とは?事件の原因や犯人、番組のその後を解説

2011年に東海テレビの番組『ぴーかんテレビ』が起こした悪質なテロップ事故『セシウムさん騒動』。東日本大震災の被害を受け全力で復興中だった被災地へ、悪意が感じられる映像が流出し大問題へ繋がった『セシウムさん騒動』の詳細を解説します。

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セシウムさん騒動とは?

2011年8月4日におきた“セシウムさん騒動”は、同年3月11日に発生した震災に大きく関わります。まずは事の発端となった動画をご覧ください。

悪質な仮テロップによる放送事故

『ぴーかんテレビ』で商品の紹介中に『セシウムさん』と書かれたテロップが流出した事が世間を騒がせます。秋田県の稲庭うどんの宣伝の最中に突如現れたのは、ブランド米“ひとめぼれ”の当選発表のフリップですが、その欄に入っているのは『セシウムさん』…これは一体何なのか?

世間を騒がせたテロップ

住所欄に『怪しいお米』『汚染されたお米』、名前欄に『セシウムさん』と記載のあるテロップが映し出され、視聴者は大変驚いた事でしょう。途中で中断となった稲庭うどんにとっても、たまったもんじゃない。

ですが、アナウンサーは稲庭うどんの説明を続けている事から、これが流出した事はテレビ局側にとっても、思いもよらぬ出来事であったと分かります。何故こんな倫理観を疑われるミスが起きてしまったのでしょうか?

セシウムさん騒動が起こった原因

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ここで言う『セシウムさん』が意味するのは、ウランの核分裂によって生成される『セシウム137』、放射性物質を含んだアルカリ性金属元素の一つを指します。震災の二次災害、福島の原子力発電所の事故に関連します。

震災からわずか半年、『セシウムさん』などとふざけた映像が映った事に、視聴者や震災の被害者、セシウムさんの話を耳にした人は悲しみや怒りの感情を露わにしました。

原因①スタッフの悪質ないたずらが発端

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当選発表は通常、ADが手書きで書いたボードを映していましたが、“東北の物を買う事も復興支援に繋がる”といった目的で用意した景品は、画面全面に映るように映像を用意する事に。

外部発注し、まず仮データ(セシウムさん)が作られましたが、詳細が決まり次第、手直しする予定でした。作成者自身、“差し替え前提”のデータが流出するとは思いもよらなかった様子。

彼の浅慮によって作られた、『セシウムさん』といった酷い言葉を連ねたフリップ。オンエアしない物だからと、いたずらに扱って良い内容とは言えません。

原因②スタッフの送出回路の理解不足

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セシウムさんのデータが映ってから、23秒間画面に流れ続けました。普通、ミスが起きても即時に切り替える対処がされるのですが、異例の対処の遅さにも原因が追究されました。

対処に時間がかかった理由は、作成者が「送出回路の仕組みを理解出来ていない事」と「誤送防止の対策が出来ていない事」、そして「復旧措置の方法を知らない事」であると判明。

また、仮データでも『セシウムさん』という言葉を選んだ、彼の倫理観が問われます。

倫理とは?

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「倫理」と言うと壮大なイメージを持ってしまいがちですが、簡単に言うと「社会生活を送る上での一般的な決まり事、守るべき秩序を指します。「倫理」には「道徳」も含まれます。

人は各々に善悪を持ち合わせており、それを行動とするのにも善悪の判断が求められます。ここでの判断が欠如したり、間違えると「倫理的におかしい」行動へと繋がるのです。

原因③事前にアシスタントが叱責するも手直ししなかった

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実は彼は、事前に指摘を受けていました。『セシウムさん』から使用できる内容に手直しする様、アシスタントの女性から指示が出ていました。

原因④プロデューサーらに相談しなかった

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『セシウムさん』というあまりにも酷い言葉を連ねていた為、アシスタント女性は上司に相談も報告も出来ず、一部の人間しか存在を認知していませんでした。

規定では作ったデータは事前にプリントし、上司に確認する事が必要なのですが、『セシウムさん』に関する相談も出来ないまま、当日を迎える事となります。

原因⑤再度テロップの作成者に修正指示するも直さなかった

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当日の朝にアシスタント女性は再度データを確認しますが、手直しが出来ておらず再度依頼。しかし、他の仕事の依頼で手いっぱい彼は指示を聞き損ね、『セシウムさん』の文字の手直しは行われなかったのです。

原因⑥プロデューサーらもテロップが来ていない事に気づかず

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確認用の書類が届かないのに上司らが気づかなかった事も、“監督不行き届き”という一つの要因であったと言えましょう。どんな管理をしているんだ!と責められても仕方なし…。

もしちゃんと確認が出来ていれば『セシウムさん』と記載があるデータは、当然使用されないはず。報告さえ行っていたのならば、このミスは防げたのかもしれません。

原因⑦放送中誰も画面を見ていなかった

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セシウムさんが映し出された時、アシスタントらは出演者の見送りをするなど、気を休められるタイミングだった事もあり、誰も画面に注視していない状況でした。また、データを間違って放送用のフォルダに入れた事も影響。

ちゃんと関係者用のフォルダに入れていれば、元より間違って流れる事にはならなかったのだとか。『セシウムさん』が流れている事に気付き、現場の人間は慌てます。

一言で放送事故と言っても、その内容は様々。生放送中に大ケガを負った柳田哲志さんについては、こちらの記事でご紹介しています。

セシウムさん騒動の犯人は誰?その後どうなった?

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セシウムさんなんて酷いデータを作った事、また正確な処理を行っていない事で、作成者はもちろん責任を問われます。『セシウムさん』を作ったのは、どのような人物だったのか?

犯人はテロップ作成に携わる50代男性

『セシウムさん』を作ったのは、テレビ局とは別のテロップ制作会社に勤務する50代の男性。外注ですがテレビ局とは30年以上を共に仕事に携わり、経歴で見ればベテランと称されても不思議じゃない人物でした。

犯人の動機は?

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『セシウムさん』は悪意があると思われる言葉ですが、男性はこれを否定します。テレビ局への怨恨や、テレビ局や会社とのトラブルに起因する訳ではないと。

仮入力として、男性はただただ思いついた言葉を並べただけだ、とインタビューで回答。ですがそのチョイスが『セシウムさん』とは、倫理観を疑われても仕方ないでしょう。

犯人は懲戒解雇処分を受ける

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大きな反響を呼んだ“セシウムさん騒動”の犯人として、男性は自身の所属する会社から解雇を言い渡されます。実はこの男性の仕事に対して、他のスタッフは以前から不満を持ち合わせていました。

仕事のスピードが遅い事、目の前の事しか見えなくなる視野の狭さは、以前より問題視される程。『セシウムさん』の修正を依頼した女性の話も、記憶が無いと回答しています。

セシウムさん騒動後の世間の反応

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『セシウムさん』と並んだ映像を見て、視聴者や景品のお米“ひとめぼれ”に関わる人たちは憤慨します。震災の後は特に重要視された放射能問題の事もあり、『セシウムさん』なんて表記は許されてはいけません。

ネットでも「震災を馬鹿にしている」「2chもドン引きするレベル」と言われます。また「なんjやvipの匿名だからやれるノリ」「犯人はなんj民なの?」なんて感想を抱いた人もいた模様。

放送後には17,000件以上の苦情が殺到

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8月4日の11時過ぎに流出したセシウムさんは、東海三県が配信地区ではあったものの、瞬く間に知れ渡って行きます。同日午後6時には、300件もの問い合わせや苦情が挙がり、掲示板や関連サイトは炎上します。

6日の夜には問い合わせは約10,000件にのぼり、セシウムさんを含む酷い言葉への苦情は、最終的に電話やメール等を合わせ17,000件以上となりました。

岩手県や農家関係者から怒りの声が

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セシウムさんの報道にブランド米・ひとめぼれが付随した為、“ひとめぼれ”を生産を行う、岩手県を始めとする農家からの憤慨の声も相次ぎます。

また、『セシウムさん』と書かれた映像の景品の対象が“岩手県産”だった為、JA岩手の会長からも抗議文を渡されます。

BPO(放送倫理・番組向上機構)による調査

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NHKや日本民間放送連盟と他加盟会員各社の出資、組織した任意団体が『BPO』です。「言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護する立場」であるBPOには、各地の視聴者からテレビ各局への意見が寄せられています。

同年同月には騒動の他に、タレント・島田紳助の引退があり、視聴者より多くの意見が寄せられます。抽象的な意見の他、特定した意見は各局へ通知される仕組みとなっています。

低俗さやモラルに関わる意見や、取材や演出、編成や言葉への意見も集まっています。騒動に関わる意見も、後に通達されていた事でしょう。

セシウムさん騒動の発生原因を探る検証番組を放送

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『セシウムさん』が発起した問題は、謝罪して終わりで済ませられるミスではなく、当事者らへの事実確認が行われます。また、社内・外部から集めた意見も含め、改善策が練られる事に。

関係者らのインタビューを含む検証番組が作られ、同年8月30日に放送。リアルタイムの放送地域は東海三県でしたが、8月30日~9月12日までホームページに動画の掲載を行います。

セシウムさん騒動後の影響!放送した番組は放送打ち切りに

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13年続いた番組は終わりを迎えます。苦情が相次ぎ、セシウムさんの報道後に当事者らは、どのように責任を取ったのでしょうか?

セシウムさん騒動後にスポンサーが次々と降板

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長く続いた番組だった事もあり東海三県の大手企業もスポンサーとなっていましたが、CM提供企業も含め次々と撤退、最終的には全てが降板。また、『セシウムさん』の影響は局内の他の番組にも及びました。

「信頼を得るのにはとても時間がかかるが、失うのは一瞬だ」とは、まさにこの事ではないでしょうか?JA共済を始めとする企業の後ろ盾は、かなり大きいはず。信頼の回復に努めてほしいものです。

降板したスポンサーは?

 

なんと20社のうち17社が降板するという、史上稀にみる続々ぶりにマスコミも反応せずにはいられなかったことでしょう。JA共済を始め、以下の後ろ盾を失いました。

  • メナード化粧品
  • 愛知小型エレベーター製造
  • 名城食品
  • うなぎ屋たむろ
  • 中央出版
  • フジパン
  • AEON
  • 城本クリニック
  • ヤマザキパン
  • 土岐プレミアム・アウトレット
  • ジャズドリーム長島
  • ミキハウス
  • 福寿壮
  • 川上屋
  • CHARDONNAY HOME
  • 愛知縣護國神社

人気番組『ぴーかんテレビ』は8月に放送終了

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スポンサーの降板により番組は事実上継続が不可能となり、『セシウムさん』が世に流出した翌日以降の放送は取り止め、11日をもって終了する旨が発表されました。

以降、しばらく人気アニメで穴埋めをし「番組に明日は来なかった」と言われる事に。最後の福島アナが引きつった顔で謝罪する姿は、多くの人の印象に残ったようです。

東海テレビ・社長が岩手県知事へ謝罪

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報道の翌日、東海テレビの常務・次長は謝罪の為に、岩手県庁や農協へと足を運びました。10日には社長の浅野氏が改めて県庁へ赴き、再度謝罪の言葉を述べます。

岩手県知事の「正確な情報を発信せねばならないマスメディアで、根拠の無い風評被害を助長する行為をした事に猛省を求める」という発言に、社長は「再発の防止に努める、また関係者には相応の処分を下す」と約束。

関係者の処遇はどうなったか?

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社長が約束した、関係者への処分。社長本人による謝罪会見で、『セシウムさん』発起人の解雇を始め、社長自身は3カ月間の“役職手当の50%減給”、関係者はそれぞれ“減給”や“役職降格”といった処分を下す事が発表されます。

セシウムさん騒動で起きた風評被害とは?

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マグニチュード9.0のかつてない規模の災害となった震災は、津波による二次災害で多くの犠牲者を出しました。日本国内だけでなく海外からも注目を集め、日本全国・海外から多額の義援金も集まりました。

大切な人や従来の生活を失った人々が前を向き、復興に向けて動き出す中でおきたセシウムさんの放送は、彼らの心に新たな傷を残しました。

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