ワラスボとは?
細長い胴体は内臓や血管が透けて見えるようで気味が悪く、牙を剥いた大きな口が不気味です。『エイリアン』と比喩されるのも納得できますね。ワラスボとはいったいどんな生物なのでしょうか?正体を探っていきましょう。。
ワラスボって魚なの?
外見はグロテスクでまるでエイリアンのようですが、実はスズキ目ハゼ科のれっきとした魚なのです。とは言っても、腹鰭が吸盤になっている点を除けば、ハゼとは似ても似つきません。ムツゴロウと共に有明海を代表する珍しい魚です。
生息地はどこ?
日本、中国、台湾、朝鮮半島の干潟に生息します。英名はGreen eel goby、学名をOdontamblyopus lacepediiと言います。同属種はインドや東南アジアに分布します。 日本では有明海にのみ生息しています。泥質の干潟に巣穴を掘って潜み、満潮になると海中に泳ぎだします。
なぜワラスボって呼ばれてるの?
漢字では藁素坊/藁苞と書きます。藁苞は稲藁を束ねて食品などを包むようにしたものをいいます。一般には藁苞(わらづと)と呼ばれますが九州や四国の方言では苞(つと)をすぼと言うそうです。干物が藁苞に似ていることから名付けられたようです。
ワラスボの画像を紹介&解説
画像を見ながら解説していきましょう。乾燥したワラスボは干物というよりミイラのようですね。牙を剥いた大きな口で今にも飛びかかってきそうです。目が無いのが余計無気味に見えませんか?
どうしてこんな見た目に?
生まれつきこのような不気味な容姿だったわけではありません。孵化したばかりの仔魚の頃は普通の魚のような大きな丸い目と水平に開いた口を持ち、河口域で浮遊生活を送ります。2cmほどの稚魚になると泥中での生活を始めます。成長とともに目は退化し、頭の上に小さな点が残るのみとなります。また牙が発達し、口が上向きになってきます。
こんな大きな口で何を食べてる?
肉食性なので何でも食べます。潮が満ちると巣穴から出て泳ぎだし、小魚やアゲマキなどの貝類、エビ・小カニなどの甲殻類などを捕食します。特にアゲマキガイにとっては天敵とも言われています。この牙で噛まれたらひとたまりもありませんね。
実は絶滅危惧Ⅱ種
ワラスボは環境省の作成するレッドリストの絶滅危惧II種(絶滅の危険が増大している種)に記載されています。諫早湾の締め切りや埋め立てなどが影響して、ムツゴロウほどではありませんが生息数が激減しています。
ワラスボは食べられる?気になる味は?
地元では家庭でも煮付けや味噌汁の具などにして食べられています。生きているものを調理するので昔から「嫁泣かせ」の食材と言われているそうです。生きたワラスボに触れるのは勇気が要りそうですね。
ワラスボってどんな味?
その見た目からは想像できないほど淡白でクセがなく、上品な味がします。肝は特に濃厚で味わい深く美味しいです。刺身はもちろん煮物、焼き物、揚げ物などどのような調理法でも美味しく食べられる魚です。
ワラスボの干物は絶品?
グロテスクな見た目とは相反して干物の味は絶品です。干物は固いので包丁の背などで叩いてから臭みを取る為に少量の酒を振ります。グリルなどで1~2分炙るか、オーブントースターで5分程加熱すれば出来上がりです。エイヒレのような味わいでお酒のあてに最適です。七味マヨネーズといただいても美味しいです。
干物には炙るほか、揚げ甘辛という地元では古くから親しまれている料理があります。酒、醤油、味噌、砂糖を煮立てたタレに、3cm位に切って油で揚げた干しワラスボを絡めます。このほか、「もくさい」と呼ばれるワラスボの干物を煎じて粉状にしたものは、ご飯にかけたり、まぜておにぎりにして食べると美味しいです。
ワラスボ料理を紹介
生はもちろん、煮てよし、焼いてよし、揚げてよしのワラスボ、どんな料理があるのでしょうか?たくさんあるワラスボ料理のいくつかをご紹介します。ご家庭でも作れそうなメニューはあるでしょうか?
ワラスボ餃子
日本で最も予約が取りにくい会員制餃子レストラン「蔓餃苑(まんぎょえん)」と佐賀県がコラボして2017年期間限定でオープンした「珍魚苑」。ムツゴロウ、ワラスボ、イソギンチャクなど有明海の食材にこだわった珍魚餃子は話題を呼び、期間中の予約の応募は20倍を超えていたそうです。
佐賀県地方創生プロジェクト「佐賀プライズ」がレシピ動画を公開しましたのでご紹介します。ショッキングな見た目とはうらはらに大変美味しいそうです。作り方も簡単そうですので生のワラスボが手に入ったらトライしてみてはいかがでしょうか?
ワラスボ刺身
お刺身はコリコリした食感でクセの無い上品な味です。泥臭さはまったくありません。ふぐのような味とも言われます。ワラスボは生命力が強いらしく、活造りになってもしばらくは口をパクパクさせ、口に当たるものに噛み付いて離しません。
ワラスボ素揚げ
干物を包丁の背などでトントンとたたき、低温の油でカラッと揚げます。レモンと塩でいただきます。炙った干しワラスボとはまた違ったポリポリした食感が楽しめます。見た目のグロさはそのままです。
すぼ酒
軽く炙った干物を適当な大きさに切り蓋付きの器に入れます。熱燗を注いで蓋をし、2~3分待てば香ばしくて美味しいすぼ酒の出来上がりです。ふぐのひれ酒にも負けない美味しさです。これなら簡単にできますね。