はじめに
自分で釣り上げた魚を自宅で捌き、美味しく食べたい!と思っていても、“釣った魚を捌くのはハードルが高い”と思っている方や、“実際に締め方の違いってよく分からない”と思っている方に、さまざまな締め方の方法やそれに適している魚をご紹介いたします。
魚を締めるとは
魚を”締める”とは、“殺す”と同じ意味を持ちます。魚を締め、さまざまな工程を踏むことで鮮度を保ち、美味しく食すことができます。締めるということには大きく分けて2種類あり、活き締めは詳細を後述していますが、生きている魚を即殺すること。野締めとは、釣り上げたまま魚を放置し、死を迎えた状態のもです。
なぜ魚を締めるのか
生きたままの魚が鮮度のよい魚ではない
釣り上げた魚を、バケツやクーラーボックスなどの狭い容器の中にそのまま入れておくと、暴れて身に傷がつき、血が滲むことで血生臭さが残ってしまいます。また狭く海水の少ない環境に魚が強いストレスを感じ、旨み成分が分解されてしまいます。
そして、魚の鮮度が落ちると細菌が繁殖しやすくなり、これが生臭さの原因になります。それらの理由で、魚にストレスを与えず新鮮さを保つには、“釣り上げたらすぐ締める”ということが重要になります。
死後硬直を遅らせる
魚の死後硬直は、1時間〜数時間で起こります。死後硬直することで、魚の旨み成分の素となるATP(アデノシン三リン酸)が分解され筋肉(身)が固くなり、鮮度も落ちていきます。さらに、ATPは魚が暴れたりストレスを感じることでも極端に消費されてしまいます。すみやかに魚を締めることでそれらの問題を解消し、鮮度を保ちます。
活き締めとは?
活き締め(いきじめ・いきしめ)活け締めなどといい、釣り上げた魚を即締める(絶命させる)ことです。この締め方はおもに中型・またはそれ以上の魚に適している方法です。
全体的な工程
即死させる→血管を破る→血抜き→保冷保管という流れです。即絶命させることで身が硬直し固くなるのを防ぎます。そして血管を切り血を抜き、身に血が回らないようにした状態で水気が少なく涼しいところで保管をします。
活き締めのやり方
活き締めは魚の種類や大きさによって多少の異なりがありますが、今回は一般的な活き締めの方法をご紹介します。
一般的な方法
魚のエラ蓋の少し上のあたりからナイフや包丁などを入れ、一番太い骨を断ち切ります。延髄を切断することで魚を即死させます。きちんと魚が締まると、締めた直後に魚の口が開くことがポイントです。スパイクやアイスピックを使用する方法もありますが、ナイフや包丁などの刃物のほうが、そのまま血抜きの工程に入りやすいのでおすすめです。
ポイント・注意点
魚に包丁を刺し込んでからも、大きく暴れ回ることがあります。この時、魚が暴れないよう強い力で無理に押さえてしまうと、内臓を圧迫し衰弱することにより血抜きがうまく行えなくなるので要注意です。さらに暴れることで身が傷つき、ATPも大量に消費されてしまいます。そこで、魚の目をタオルなどで覆い隠すと大人しくなります。
血抜きとは?
血抜きという言葉のとおり、魚の全身に流れている血液を体外へ放出させることです。血抜きを行うことで、魚の身に血が回らなくなり、食する時の血生臭さを回避できます。さらに、血液はとても腐敗が早いため血抜きを行わないと鮮度が落ち、生臭くなってしまいます。
血抜きのやり方
一般的な方法
まず魚のエラ蓋の内側の薄い膜を包丁やハサミなどで切り、開きます。そして脊椎骨(背骨)のすぐ下に沿うように通っている一番太い血管を切断します。血管を切断すると一気に血が流れ出すので、水の入ったバケツにつけるか、ストリンガーなどで一度海水に戻し、泳がせながら血抜きを行ってもよいです。
ポイント・注意点
血抜きに不慣れな場合は、魚を締めてから取り掛かかるとよいです。生きた状態で血抜きを行うと魚が暴れまわり、そこらじゅうに血が飛び散ってしまいます。また、血管を切断し容器に入れている際も、魚によっては数分暴れまわり血が飛び散り、さらにATPが大量に消費されてしまうことがあるので注意しておくとよいです。
ポイント・注意点2
血抜きは魚を締めてから、完全に心停止するまでに取り掛かることが重要です。心臓が動いている間に行うと、心臓のポンプ機能を利用し、自然に血抜きをすることができます。心臓が完全に停止してしまうと、ある程度の血液は抜くことができても、細い血管や毛細血管などに血液が残り、きちんと血抜きされません。それが血生臭さ・生臭さの原因となってしまいますので気をつけましょう。
神経締めとは?
これはワイヤーなどを使い、脳から信号を送る延髄・脊髄を破壊し鮮度を保つ方法です。神経を破壊することにより、脳からの“死にました”という信号を送れないようにします。つまり、人の手で魚を脳死状態にするということです。神経締めを行うことで、活き締めよりもさらに死後硬直を遅らせ、より美味しく食すことができるのです。
神経締めのやり方
魚の種類によって多少方法が異なりますが、この締め方はおもに大型の魚に適しています。中型以下の魚やヒラメなどには神経締めが逆効果になることもありますので注意しましょう。
一般的な方法
魚の目と目の間、眉間のあたりにスパイクを打ち脳を破壊します。その穴から背骨の上を沿うようにしてある神経へとワイヤーや串を刺し入れていきます。ワイヤーは優しく入れていき、魚が痙攣を起こしたら一気に差し入れます。神経を締めたら血抜きを行い、冷水で予冷しましょう。