「まぐわい」ってどんな意味?昔から使われるまぐわいの意味や由来とは

好きと嫌いを表す言葉にも、日本独自の趣があります。いわゆる、昔の言葉遣いで言うところの良し、悪しの話です。現在の日本を生きる人に、好き嫌いを尋ねたら、まるでイエス、ノーのクイズのように二択を迫っているかのように錯覚されてしまうかもしれません。

しかし、日本語が定着するまでの時代背景を考えると、よし、よろし、あし、わろしと、いくつかの言葉が使い分けられてきた経緯があり、単純なよしとあしの二つの選択肢であっても、よし=全て良いと言う意味にはならないし。あし=一つも良いところがないと言う意味にもなりません。

しかし、そんな曖昧さと中庸性を併せ持つ古風な日本語の中にあって、まぐわいは特に親密な気持ちの強さを表す言葉として扱われており、それはまさしく、深い愛情のあり様を相手に伝えるための特別な意味を持った言葉として使われていたと考えられます。

語源は目合いという言葉

様々な読み方と呼び方がある日本語の歴史を紐解くきっかけとして、まぐわいは面白い言葉です。ひらがなで書いても、たった四文字の短い単語にすぎませんが、読めるだけでは意味が伝わりません。また、意味を知っていたとしても、それを何と表現すべきかを充分すぎるほどに悩ませてくれます。

それを理解しあっていた男女の間でこそ、意味を成す言葉。まるで、魔法の合言葉のようです。そのたった四文字を表現するために、私たちの祖先は長い時間を費やし、今の私たちまで残してくれたのです。その真髄をもっと深く、探ってみたいと思います。

セックスとの言葉の違い

最近では、カタカナで書かれた外来語が紙面を飾る機会が増えて、ひらがなで表現される言葉よりも、頻繁に目に飛び込んで来るように感じます。特に、セックスという言葉はサ行の子気味良い響きを伴って、タブーとして扱われがちな意味を微塵も感じさせずに、淀むことなく口にできる珍しい言葉と言えます。

その理由の一つが、セックスがその人の性別を表す言葉としての意味を持っていることも強く関係しているのでしょう。これは英文の特徴として、単語の意味は文章での使われ方に依存する傾向が強いために、いくつかの意味を持つ言葉として成立するのですが、日本語として使う場合、単に性交渉の意味で多様されている印象を受けます。

愛している気持ちを加えるとまぐわいになる

性交渉としての側面が強いセックスという外来語に対して、まぐわいは性交渉という意味合いよりも、男女間の愛情を深さを指し示す言葉として使われていたことを考えると、セックスとまぐわいは、似て非なる言葉と言えそうです。

エッチとの違い

エッチという言葉と、まぐわいという言葉の意味するところの違いは極めて単純明快です。まぐわいが、男女の深い情愛を指し示す、心の内側を伝える要素に重きを置く言葉であることに対して、エッチは性的ないやらしさを感じさせる要素を含んでいることを相手に伝えるための言葉と言えます。

つまり、人間の感情を表すまぐわいと異なり、エッチは人物や物事に限らず、例えば、成人向けの酒場や広告、彫刻などの美術品に至るまで、あらゆるジャンルを網羅して使われる言葉という訳です。時として、どちらも性交渉を意味するものとして混同されがちですが、言葉の生成過程で考えると別物と言えます。

エッチという呼び方が生まれた時代背景

エッチという呼び方が、性的な意味を含むいやらしいもの全般を意味する俗語として使われるようになったのは、ここ40年から50年余りのことと言われています。しかし、その語源についてはもう少し古くて、開国後に日本語として使われ始めたローマ字表記にあると考えられています。

日本の著名な歌人の一人である石川啄木のローマ字日記は、日本語をアルファベットを使って、ローマ字に置き換えて書かれた作品ですが、当時の様子が生々しく描かれており、一つの文化性を持っていたことが伺われます。

その文化性の一つに、略称による表記のありかたがあります。例えば、Aさんと呼ぶ場合、本当はア行から始まる苗字の人なのかもしれませんが、ローマ字で表記する際には、英文に倣って、略してAさんと呼んでも差し支えないという大人の遊び心とも言うべき流れがあったようです。

そのため、Hという略称が、いやらしいこと全般の意味へととって代わるという流れが生まれたのです。ちなみに、いくつか候補となる文字列があるものの、HENTAIという文字列の頭文字が由来しているという説が有力です。

愛情がある独特の表現

まぐわいという言葉は、視線の先に映る相手への愛情を伴う言葉です。その繊細さは、指先でそっと触れた後にすら愛おしさを感じる、儚さを尊さを感じる日本らしい独自の愛情表現がこめられた、思いの凝縮された言葉と言えます。それゆえに、外来語で表される性交渉を意味する言葉とは、本質が異なる言葉と言えるのです。

まぐわいという言葉の歴史

まぐわいという言葉の定着はとても古く、少なくとも、今から1,300年くらい前までさかのぼることができると考えられています。大宝律令が定められたのが701年。その後、奈良に都が定められたのが710年であることを考えると、日本であれば奈良時代には知られていたと考えることができそうです。

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