カブトガニの血液は人類を救うのか?青い血に秘められた効果とその研究工場に迫る!

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血液採取中に死亡するカブトガニ  

採血量は、体内血液の30%ならば短期間で回復ができ、問題ないとされていますが採血によるストレスなども影響し、血液採取中に3%程度の個体が死んでしまいます。

カブトガニの血液の価値とは? 

カブトガニの血液の取引額  

カブトガニの血液はとても高価なもので、1リットルあたり、約15,000ドル、日本円でおよそ160万円前後の高価格で売買されています。産業規模は1億5千万ドルとされています。

乱獲で減少するカブトガニ  

毎年アメリカで25万匹も捕獲されており、血液採取後は海に戻されるとはいえ、ストレスやダメージにより、海に戻った個体のうち10~20%が命を落とすと言われています。特にメスの個体は負荷が特に大きく、産卵回数が減ることで、繁殖数へ大きな影響があることが明らかになっており、個体数はどんどん減少しています。

餌や肥料にもなるカブトガニ

漁業の餌として古くから使用されており、合成品の開発も進んでいますが、いまだに採血以外に毎年何十万匹も捕獲されていることも減少の理由となっています。また、肥料としても利用されています。

タイやベトナムでカブトガニは食用に

日本では天然記念物に指定されているため食べることはできませんが、ベトナムなど一部の東南アジアでは食べられています。可食部分はほとんどなく、卵が食べられます。かにみそのような食感で、生臭さ味があるため、香草などと食されます。

カブトガニ減少が与える環境への影響

カブトガニの卵を食べる小鳥が激減

コオバシギという小さな鳥は、渡り鳥でカブトガニの卵が好物です。コオバシギにはカブトガニの卵は命綱であるため、カブトガニの減少により、この鳥の個体数は一時期80%減少しました。

カブトガニの捕獲はある程度一部の地域では、制限されるようになったものの乱獲は続けられています。コオバシギ以外にも、卵を食べる生物がおり、生態系においても、カブトガニの減少による影響が見られています。

日本では天然記念物

さて、ここまでお話していたのはアメリカカブトガニでしたが、日本にもカブトガニがおり、現在、日本では天然記念物に指定されています。埋立や、水質汚染などで、住むところを奪い絶滅に追いやろうとしてしまいました。

海岸開発が絶滅危機に追いやった

人の生活環境が豊かになるたびに、5億年も前から静かに暮らしてきたカブトガニの生息環境を、わずか数十年で埋立や干拓、水質汚染などによって破壊し、絶滅の危機に追いやってしまいました。カブトガニ以外にも干潟で暮らす生物たちが絶滅の危機に面しているのです。

世界でここだけ!カブトガニ博物館

笠岡市立カブトガニ博物館

岡山県笠岡湾の大規模な干拓が原因で絶滅の恐れがあったため、カブトガニの繁殖、展示、広報等を目的とした施設として建てられました。天然記念物カブトガニ繁殖地への幼生の放流もおこなっています。世界で唯一のカブトガニ博物館です。上から見るとカブトガニの形の建物もユニークです。

カブトガニが安心できる環境に

笠岡市では、カブトガニの保護や増殖を目的に博物館を建てただけではなく、下水道の整備や環境保全の取り組みにより、水質の向上させ、絶滅の危機から救う活動に取り組んでいます。

rFC(組み換え型ファクターC)がカブトガニを救う!  

rFC(組み換え型ファクターC)はカブトガニ血液の代替試薬

採取した血液の代わりに、合成品の組み換え型ファクターC(recombinant Factor以降rFC)を利用する動きが出てきています。rFCが、流通するようなったのは2003年であるのに関わらず、代替品が積極的に利用されたのは近年のことです。

昆虫を使って培養

昆虫細胞によって作られるrFCは、タンパク質を組み換え培養することにより得られます。カブトガニの血液成分と極めて似た性質を持ち、代替試薬として使用することができます。代替試薬の発見、普及はカブトガニを守ることに直接繋がります。

カブトガニとHIVの関係  

HIVウイルスを抑制するカブトガニの血液の効果  

カブトガニの血液の中のタキプレシンは、毒性がある成分ですが、HIVウィルスが細胞に侵入することを防ぐため、エイズを発症することを防ぐ効果があることがわかり、発症抑制剤が開発されています。

HIVの死亡リスクが激減  

HIVに感染しただけで、すぐさま命を落とすわけではありません。HIVウィルスに免疫システムを破壊され、エイズを発症することで、様々なウィルスや細菌による日和見感染により命を落とすのです。カブトガニの血液成分で、HIVウィルスが細胞に侵入を防ぐことで、エイズの発症を防ぎ、寿命を全うすることができるのです。

太古の生物カブトガニを人間の手で絶滅させるな!

カブトガニを絶滅から守ろう

我々人類が、カブトガニから受けている恩恵は青色の血液より驚いたのではないでしょうか。絶滅から守るには、一人でも多くの人に乱獲により年々数を減らしているカブトガニの実態を知っていただくことがまず第一歩です。

カブトガニが絶滅すれば、人類にも大きな影響を与えます。検査から病気の治療まで役立つカブトガニですが、代替試薬の研究も同時に進み、代替試薬を早急に確立させることで絶滅の危機から守っていかなければなりません。命を搾取するばかりではなく、多くの種と共存していくことは、人類を守ることにも繋がっているのです。

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