イワナの特徴や生態をチェック!実はこんなに種類がいた!

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はじめに

イワナはサケ目サケ科の淡水魚で、釣りの対象魚として広く知られています。淡水魚の中では最も高度の高いところに住む魚で、ほとんどの種類は一生をその河川で過ごします。世界的には30種近くが知られています。イワナの仲間は北海道から本州まで分布していますが、種類については生物学的な分類がはっきりしていません。同じ淡水魚のヤマメよりも冷たい水を好み、両者が同じ河川に住んでいる場合には上流域をイワナが、その下流域にヤマメが住むというように生息温度による棲み分けが見られることが知られています。

イワナの種類、生息地と分布

イワナには外見上いくつかの種類名が付けられていますが、生物学的にはその分類が確立していません。一般的には二つの種類に分けられています。イワナという種名の魚は北海道から本州南部、九州にかけて分布し、地域によっていくつかの亜種又は変種に分けられています。イワナよりもさらに北方型のオショロコマは日本では北海道だけに分布します。イワナにきわめて近年で、その中にイワナの名を持つ亜種がいます。

イワナ

イワナにはアメマス、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴギという四つの亜種が知られています。アメマスはエゾイワナとも呼ばれ北海道から東北に分布、背面及び側部に白斑があります。ニッコウイワナは本州に広く分布する亜種で一部北海道にも広がり、アメマス同様に白斑がありますが、側線部に黄色~橙色の斑点があります。色彩の変異が多く、時にアメマスとの区別は困難です。ヤマトイワナは中部地方の太平洋側から山岳地帯に生息し、白斑が不鮮明で紅色斑が白斑より目立つことが特長です。ゴギは中国地方に産するもので、頭部に虫食い模様があり着色斑が大きいことで区別されています。ヤマトイワナとゴギはそれぞれイワナの亜種とする見解と色彩型とする見解があり、決着していません。なお、ゴギは環境省の汽水・淡水魚類レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類に記載されています。

オショロコマ

イワナのさらに寒冷地に適応した種類で、日本国内では北海道のみに生息します。イワナに比べ白斑がなく、体側に黄色、橙色、紅色の斑点が散在することで識別できます。特に繁殖期の婚姻色で腹部が朱色になることが特徴的。国内からはオショロコマとミヤベイワナの二亜種が知られています。オショロコマは日本だけでなく、太平洋北部から北極海にかけて広く分布する亜種でカラフトイワナとも呼ばれます。これに対し、ミヤベイワナは然別湖周辺のみに生息する日本固有亜種です。ミヤベイワナはオショロコマが火山噴火により陸地に封じられてしまった亜種で、オショロコマに比べて尾びれと胸びれが大きく、繁殖期のオスは背中が盛り上がって口が「鼻曲がり」になり、カラフトマスのような形状になります。オショロコマとミヤベイワナは共に環境省の汽水・淡水魚類レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。

キリクチ

キリクチは紀伊半島に生息するイワナで、一般的にはヤマトイワナの地域的な個体群と考えられています。国際自然保護連合(IUCN)はこの魚を独立した種として扱っており、単独で絶滅危惧種としてレッドリストに載せています。世界で最も南に住むイワナの個体群で、十津川水系の二地域・三支流のみに産しますが、個体数が極めて少なく、奈良県の天然記念物に指定されています。同地域に生息するニッコウイワナと同じ領域に住んでおり、体側には橙色半があり白斑がなく口吻が短いといった特長で見分けられますが、近年の生息環境の破壊やニッコウイワナとの交雑のために個体数が激減してると考えられます。

カワマス(ブルックトラウト)

カワマスは北アメリカ東部が原産のイワナで日本にはフライフィッシングのためのゲームフィッシュとして移入されました。上高地の梓川で放流された固体は、イワナとの交雑によりイワナの純粋種が減少していることが報告されています。

レイクトラウト

カワマスと同じく北アメリカ原産のイワナで五大湖周辺に生息しています。日本にはゲームフィッシュとして中禅寺湖に移入されました。

イワナの交雑種

日本国内に産するサケ類で産卵時期や場所がイワナと重複する種類では、自然環境化で交雑種が生じることがあります。代表的なものとしてイワナとカワマスの雑種が知られており、ジャガートラウトの名で管理された釣り場で放流されています。

イワナはヤマメと交雑して雑種を作ることが知られています。この雑種はカワサバと呼ばれ、両方の種類の模様が混ざったさまざまな個体が現れます。もともとこの両種は生息場所で棲み分けているとされていましたが、環境条件の変化によりヤマメが生息域を広げたことで両種の産卵地域が重なって交雑が起こったと考えられています。

イワナの近縁種

渓流に生息するイワナの近縁種としてヤマメとアマゴがいます。両種は互いに亜種関係にあるサケ科の魚類で分布域が分かれており、ヤマメは北海道と本州の神奈川以北の太平洋側及び日本海側全域、アマゴは静岡以南の本州太平洋側から四国、九州の瀬戸内海側に分布します。ヤマメは体側に沿ってはっきりした暗い青緑色の楕円形の斑紋(パーマーク)が7~11並び、全身に黒色斑があります。アマゴはヤマメ同様にパーマークと黒色版がありますが、その上に朱色の斑点が散らばっています。共に一生を河川で送る陸封型と、ある時期に海に降りる降海型の二つの生活型があり、ヤマメの降海型をサクラマス、アマゴの降海型をサツキマスと呼びます。体側にイワナには白斑がヤマメ・アマゴでは黒斑があること、及びパーマークの有無で見分けられます。イワナのいる河川ではヤマメ、アマゴがイワナよりも下流の中・上流域に生息し、種間で生息環境を分けていますが、イワナのいない川ではヤマメ・アマゴ共に源流域まで生息範囲を広げます。

イワナの生態

イワナの一生

イワナは日本国内では最も標高の高いところに生息する山地性の淡水魚で、代表的な渓流魚です。夏の水温が15℃を越えない寒冷な水域を好み、一般的には一生を淡水で過ごします。生息地の川の支流で10月頃に産卵し、卵は50日ほどで孵化します。稚魚は岩の間など流れの緩い川の浅瀬で過ごし、初夏には流れの速い川の中心に泳ぎ出します。多くの個体は2年魚以降でオスの場合体調15センチ、メスの場合17センチほどになると性的に成熟し、そのあとは毎年継続して繁殖できます。野生状態では6年ほど生きると思われ、最大80センチほどになります。繁殖化では30年生きた記録があります。

イワナの産卵習性

イワナの産卵時期は9月~11月です。この時期、オスは体側面にピンク色の婚姻色が見られるようになり、口吻は変形した「鼻曲がり」の状態になっています。産卵に先立って、イワナの雌雄はまず産卵場所の近くの集団お見合い場といわれる領域に集まりペアを組みます。ペアとなるオスを見つけたメスは産卵場所へ移動し、場所を決めて産卵床を掘ります。産卵場所として選ばれるのは生息地の川の支流で川幅の狭い場所の、砂礫地の流れの緩やかな水底です。産卵場所を決めたメスはペアのオスが腹部をつつくのに呼応して卵を産み、オスはその直後に放精します。産卵の前にペアであることを確認するためにオスとメスが腹部をこすり合わせるような行動をすることが知られています。卵は直径5mmほどの黄色い沈性卵で水底に沈み、一ヶ所に100粒足らずが産み付けられます。メスは数回にわたって場所を変えて産卵を繰り返すので、全ての卵が産み落とされるまでオスはメスの周辺にいます。他のオスに体当たりをしたり噛み付いたり、攻撃的になる時期です。産卵時期は地域ごとに水温の変化に従って行われるものと思われ、北方になるほど産卵が早くなる傾向があります。イワナの繁殖の最盛期はその地方のブナやミズナラなどの紅葉の時期に重なることが知られています。卵は0~50日ほどで孵化しますが、仔魚はそのまま砂礫の間にとどまって冬を越し春の融雪を待って仔魚は水中に泳ぎ出します。稚魚となったイワナは、岩の下の隠れ場所や流れのないよどみなどに移動します。

イワナの特長

イワナの食性

イワナは肉食性の淡水魚で、ほとんどなんでも食べる悪食。動物プランクトン、水生昆虫や他の種類の魚、カエルや蛇、樹上から水中に落ちた虫やねずみなど、およそ動物性のものであればかまわず口にします。主な餌は昆虫類でカワゲラ、トビケラなどの水生昆虫、及び空中を飛ぶトンボ、カゲロウなどで、産卵などのために着水する瞬間をとらえて水中から捕食する習性があります。春には水性生物を餌とする割合が高く、夏、秋には陸生生物の比率が高まると言われています。空中イワナは共食いをすることも知られています。

イワナの行動

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