イワナは非常に用心深い生物で、外的の存在を感知すると岩陰などに隠れて数時間は出てきません。間が頭部の真横についており、視野が広い上、嗅覚も鋭く濁った水中でも餌となる生物を探知できます。生息地では複数のイワナがそれぞれ縄張りを構えて生息しており、大型の個体ほど餌がとりやすい場所を縄張りとしています。水際にいる動物を水中から飛び出して捕食する習性があり、空中を飛ぶ昆虫や水辺で餌や水をとる動物もイワナの餌となります。陸上でも短時間であれば活動でき、水から上がってしまった場合には体を跳ねさせて移動し水中へもどることができます。
イワナの生活史と旬
イワナ類は世界的に寒冷な水域を好み、日本のイワナはそのうちで最も温暖な地域に生息することから水温の低い山地の上流水域に分布するものと考えられています。サケ科の魚類は一生のある時期に海に下る生活を送るものが多いのですが、わが国のイワナは一生を陸水で過ごすものが多いのもこのためでしょう。氷河期に生息していたイワナは全て降海型の生活を送っていたと考えられています。その後、氷河時代が終わり、気候が温暖化した結果、内陸の山地の寒冷水に残された岩魚は一生を陸水で送ることになったのでしょう。現在、本州で見られるイワナはほとんど河川で一生を送りましが、北海道のイワナは陸封型と降海型の両方が見られ、千島や樺太のイワナはほとんど全て海へ降りることが知られています。イワナは初夏が脂の乗った美味しい季節、5~6月が旬です。
イワナの釣り方
生き餌を使った餌釣り、ルアーを使ったルアー釣り、および毛ばりを使ったテンカラ釣りなどがある。餌釣りの場合、餌はミミズ、ブドウ虫、カワゲラやイクラなどが使われます。目のいい魚なのでミノーなどを使ったルアー釣りもできます。流れの状態に合わせてシンキングミノー、フローティングミノーを使いますがスプーンやスピナーも有効です。テンカラつりはイワナが小型昆虫を餌とする食性を利用するつり方で、カゲロウに似せた毛ばり(ドライフライ)を使ってキャストを繰り返すことで水中のイワナを釣り上げる方法。ニンフなどのフライを使って水中に毛ばりを浮き流して釣ることもできます。
イワナ釣りの時間帯
イワナ釣りは季節としては春先から秋まで、3月から9月ごろまでが時期になります。雪解け水が流れ出る3月からイワナは活動を開始します。地域によりますが一般的に解禁となる3月ごろは融雪水の水温も低くイワナの活動量も低い。春先から水が緩んでくる5月ごろが最も釣りやすい季節になります。9月以降はイワナが繁殖のために上流の深いところへ上がってしまうので渓流での個体数は減少します。繁殖地は禁漁期になっています。一日の中での時間帯は日の出及び日の入り前後のまずめの時間帯が最適です。警戒心が強い魚なので水面に映る人影で姿を隠してしまうこともあります。雨の日や雨の後で水がやや濁っている状態はイワナの警戒心が弱まり、釣りやすい条件と言えます。
イワナ釣りのタックルと仕掛け
イワナのエサ釣り
渓流釣りの場合は短めの渓流竿にラインと鈎を使い、ミャク釣りにします。4~6mの渓流竿に細いライン(3~5号)と5~8号のヤマメ鈎を外掛けで付けます。オモリの位置は針から30センチくらいのところ。浅瀬の場合は軽いオモリを使いますが、この場合は針から15センチくらいのところがよいでしょう。浮きを使わないので、ラインを見失わないように羽根や毛糸を結んで目印にします。仕掛け全体で竿よりも50センチ短いくらいが使いやすいバランスです。餌が水底を這うように動かしながら仕掛け全体を上流から下流へ流します。このとき、餌が水中や水面に浮いている状態ではなく水底についているようにラインの長さとおもりの重さを調節してください。本流釣りでは全体を長めにし、7~8mの渓流竿にラインとハリスを結びます。天井糸の長さを1メートル強とし、水中糸の長さを調節して仕掛け全体のサイズを決めてください。
イワナのルアー釣り
渓流ではあまり竿を振る広い空間が確保できないことが多いので、竿は短めの5~6フィートのL(ライト)又はUL(ウルトラライト)アクションのものを使います。ラインは2~3lb、水中で目立たない色のものを選びます。ルアーはミノー、スピナー、スプーンがよく用いられますが滝壺などではプラグも有効です。釣るときは下流に立って上流に向けてキャストします。上流から下流に向けて行うとイワナが警戒して餌をとらなくなるので注意。これは他のつり方のときも同じです。川幅の広い中流や対岸に向かってキャストするときなど、釣り人の位置がポイントの上流になる場合はできるだけ遠くからのキャストを心がけましょう。
イワナのテンカラ釣り
毛ばりを使った渓流釣りの方法です。テンカラ用の竿は3~4.4mのものが市販されていますが、渓流で使うには3.4~3.8mまでのものが使いやすいでしょう。テンカラ釣りは何度もキャストを繰り返して釣るので、竿は軽くて使いやすいものを選びます。バックキャストで仕掛けを畳み込む動きをスムーズにするために、渓流竿よりも調子が胴によっている竿を選んでください。テンカラ釣りはおもりを使わずに仕掛け自体の重さでフライをポイントへ飛ばすので、ラインの重さがキャストの決め手になります。適度な重さのレベルラインを用い、ラインの長さが竿の長さになるようにして、その先に1メートルほどのハリスと毛ばりをつけます。釣るときは、毛ばりをポイントに向かってキャストし、毛ばりをポイントに数秒流して引き上げる動作を繰り返します。
イワナの料理法
イワナを料理するに当たって気をつけること
イワナは水中に落ちた虫などを多食べる悪食な魚です。また、イワナに限らず、自然で生活する淡水魚は体内に寄生虫がいることが珍しくありません。寄生虫は内臓にいることが多いので、野生のイワナを食べるときには内臓(わた)や鰓を取り除きます。養殖のイワナの場合は管理されたエサが与えられていますので、ワタを調理することもできます。
釣った岩魚を食べるときは鮮度が落ちないように、イワナの頭を包丁でたたいて野締めにします。また、イワナの体の表面にはややぬめりがあります。このぬめりは特有の臭みの原因になり、調理する際にすべることもありますので、調理する前に一度、体を塩で洗ってこのぬめりを取ってやると調理もしやすく、味わいも淡白なイワナ本来の味わいを楽しめます。
イワナの刺身
釣り上げたイワナは新鮮な状態であれば刺身で食べることができます。あまり大きいものは大味になってしまい、おいしくないので刺身にするイワナは35センチくらいまでのものを使いましょう。頭の後から胸鰭の前にかけて切れこみを入れます。イワナの皮は剥がしにくいので、頭の近くにすこし爪を入れて皮を浮かせ、力を入れて頭のほうから尻尾まで一気に剥ぎ取ってください。皮をはいだイワナを三枚におろし、実の部分を切り身にして盛り付けます。イワナの刺身を握りにしたイワナの寿司は高級料理として人気があります。
イワナの塩焼き
火にかける30分~1時間前に全身に塩を振ります。串を打つときにはイワナの体を波打たせて踊り串にし、串の先端がイワナの尾の付け根に刺さっている状態で止めます。先端が尾を貫通してしまうと焼いている最中に身が縮んで、魚が串の周りを回ってしまい、均一に焼くことが難しくなります。鰭が先に焦げてしまうのを防ぐために、背鰭と尾鰭には化粧塩を振っておきます。焼くときは片側をまず焼き、焼きあがったら反転させてもう片側を焼きます。くるくる回さずに片面ずつ、両面が焼けたら腹側を下にして少し焼き、腹から出る水分を落として火からおろします。釣ったイワナをそのまま野外で塩焼きにする場合、焚き火で焼くときは特にゆっくり時間をかけて火を通します。中まで火が通っていない状態で表面を焦がしてしまうと失敗します。塩焼きにするイワナは泡李大きくないもの、20センチから25センチくらいのものが適当です。
イワナの蒲焼
三枚におろした岩魚を大降りに切り、たれに漬け込んでから生姜とにんにくをあわせて中華鍋で焼きます。焼いた岩魚をそのまま食べてもよいですし、寿司にしたり、丼飯にのせてイワナの蒲焼丼にしても美味しく食べられます。
イワナの骨酒
刺身にするために三枚におろしたイワナの骨の部分を焚き火の上につるして燻します。椀型の容器に移して上から熱い燗酒をかけます。野趣溢れる楽しみ方として人気があります。
まとめ
イワナはヤマメと共に日本を代表するの渓流魚で、日本の複雑で急流のある山岳地形にふさわしい魚といえます。日本中に広く生息していますが水系や環境によって色彩や生活が少しずつ違い、かつては形や色の違いからいくつもの種類に分けられていましたが、現在は世界中のイワナ類の関係が明らかにされてきています。渓流釣りの人気魚として、日本のみならず世界中で釣り人たちの気を引き続けています。釣り方にもイワナの習性や生活を理解した工夫が凝らされ、古来から日本の自然、生活にとけ込んだ魚。これからも日本の風土、国土を代表する魚として愛され続けるでしょう。