海のない内陸部で、今ほど交通が発達していなかった京都において新鮮な魚を調達することは困難でした。そのため、暑い夏の時期でも生きたまま運ぶことのできる、生命力の強いはもの旬が初夏となったとみられています。また、7月に行われる祇園祭の別名を「鱧祭」とも言い、「京都の鱧は山で獲れる」といった言葉もあります。
大阪の場合
京都同様に大阪でも7月の24日、25日に行われれる「天神祭」でも「祭鱧」との別名があるように「天神祭」には欠かせない料理となっており、猛暑を乗り切る為の食材として大阪でもこの時期が旬となっています。大阪の人は「7月まで鱧は買わず、8月になってから買え」という言葉もあるのだとか。
大分の場合
大分の中津では一年を通して手に入る価格の安い大衆魚とされてきました。難しいとされるハモの骨切りも家庭で行い、食卓にハモが並ぶほど身近な魚なのだそうです。中津での旬は、さっぱりとした上品な味わいの「夏」だけでなく、身が引き締まって脂ののい乗りのいい「秋」の2回迎えると言われています。この地域のものは大きく、魚を入れるトロ箱に入れるとひらがなの「つ」の字に見えることから「つのじ鱧」、「真鱧」と呼ばれています。
旬の鱧の味について
2回あるはもの旬にはその時ならではの味わいがあります。夏のものも晩秋ものも両方とも脂が乗っていておいしいのですが、味わいが違うとはどういうことなのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。
夏の鱧の味は?
暖かい気候を好むハモは海水の温度が上がってくると活動が活発になってきます。産卵の準備のために栄養を蓄えて脂がたっぷり乗っていても、身が引き締まった肉質は、歯ごたえもよく、ほのかに甘い、白身らしい淡白であっさりとした味わいと食感が楽しめます。また、雨水を飲んで梅雨を越したハモは格別に美味しいと言われているのだとか。
晩秋の鱧の味は?
食欲が旺盛なはもは、産卵が終わると冬眠の準備に入ります。エサをたくさん食べ、栄養をため込んでいる晩秋のハモは、脂が乗り、濃厚で、奥深い味わいとなります。弾力のある身とシコシコとした食感を楽しむことができるのが特徴です。この時期の呼び方として、「落ち鱧」や「残り鱧」と呼ぶところもあるようですが、脂の乗った体の色が金色に耀いて見えることから、「金鱧」「のぼり鱧」と呼ぶ地域もあるようです。
鱧の選び方
いくら旬が美味しいと言っても新鮮でないものでは台無しです。では、いったいどのようなものを選んで購入すればいいのでしょうか。失敗しない美味しいはも選びの為のポイントをご紹介します。
雄よりも雌がおいしい
一匹のものは目が透き通っていて体が薄いべっ甲色で、ぬるぬるが透明なものを選びます。特に雌が美味しいと言われており雄よりも大きく脂が乗っている為美味しいですが、小さく青みがかった60㎝以下のものが雄は脂が少ないので雌を選びましょう。
鱧の栄養について
食べて美味しいだけでなく、人間の身体に必要な栄養を豊富に持っているのもこの魚の特徴です。よく知られている効果効能としては疲労回復、体力向上、免疫力向上などですが、それだけではなく美容効果や骨粗しょう症の予防にも効果があると知っていましたか?特に知っていただきたい嬉しい栄養をご紹介しましょう。
カルシウム
骨切りをしないと食べることが出来ないくらい小骨の多いハモにはカルシウムが多く含まれています。このカルシウムは骨や歯の元となっていて、カルシウムが不足すると骨が折れやすくなります。また、カルシウムが不足していると神経が安定せずにイライラしたりするので、人の身体には欠かせない栄養素なのです。
コンドロイチン硫酸
老化を防いで、組織の弾力性を維持するのに必要な成分となるコンドロイチン硫酸は鱧の皮や縁側の部分に多く含まれています。この成分はコラーゲンと同様、皮膚や軟骨の弾力を保ってくれて、不足すると肌荒れや関節痛を引き起こすとされています。このコンドロイチンの効果的な摂取方法は食事から取り入れることが効果的とされています。
DHA
はもの脂にはオメガ3系に分類されるDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれていて、このDHAという成分は血中の悪玉コレステロールを下げる作用や、中性脂肪を減らす働きがあります。また、がんの予防や学習能力、記憶力向上といった作用があると言われているのもこの成分です。
鱧のおいしい食鱧のおいしい食べ方とは?
初夏と晩秋のものが美味しいのはおわかりいただけたかと思います。では、次にご紹介するのは、この美味しい旬のはもをおいしく食べる為の食べ方3選です。それぞれちょっとしたコツやおすすめの調味料などもご紹介しますので、参考にしてみてください。
鱧のかば焼き
まず一つ目にご紹介するのはかば焼きです。ふっくらと焼き上げてタレを漬けてつやつやとした照りのついたかば焼きはごはんの上にのせてかば焼き丼として食べたい料理です。そのまま焼くのもいいですが、焼く前に片栗粉を軽くまぶせば、こんがり皮はパリッと焼くことができます。また、食べる時は消化を助けてくれる作用のある山椒をかければ山椒のさわやかな香りが夏の訪れを感じさせてくれます。
鱧の土瓶蒸し
二つ目にご紹介するのは土瓶蒸しです。土瓶蒸しにするのは夏よりも脂の乗った晩秋の方が他の食材に負けることなくしっかりと乗った脂とだし汁が相まって美味しくいただけます。ぎんなんやマツタケを入れればこれもまた季節を感じながらいただける一品となります。すだちを添えて食べる時にお好みで絞れば爽やかな香りがたのしめます。
鱧の湯引き
三つ目にご紹介するのが鱧の湯引きです。はも料理としてパッと浮かぶ料理がこの湯引きという方は多いのではないでしょうか。この湯引きのコツは熱湯に入れ花が咲いたように広がったら湯から上げて、氷水に入れて締めたらすぐに水気をふき取ることです。水分を拭き取ることで身がベチャとするのを防いでくれます。タレは定番のさっぱりとした梅ダレがおすすめですが、わさび醤油やからし酢味噌もおすすめです。
お好みの鱧を召し上がれ
はもの旬と味の違いをご紹介してきましたが、あっさりとした夏はもと脂の乗った濃厚な味わいのある晩秋のはも、どちらがお好みでしょうか。お好みの旬のはもを使った美味しい一品をぜひ味わってみてください。そしてはもを通して季節の訪れを楽しんでいただけたらと思います。
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