このカイロの着け方の手順と注意点についてはお分りいただけたと思いますので、次に消し方を解説したいと思います。通常は注入した燃料がなくなるまで待つ形になるのですが、強制的に燃焼を止める方法をご紹介します。どうしても途中で消さないといけなくなった際の参考にしてください。
ハクキンカイロ カイロちょっとお休み
メーカーから上の写真のような収納袋のような商品が販売されています。消したいときにこの袋の中に入れておくと、触媒の反応に必要な酸素がなくなり燃焼が止まる仕組みです。もしこれがなくてもジップロップなど中を密閉できる袋状のものの中に入れれば同じように消すことは可能です。
ただしこの途中で消す行為をなん度も繰り返すと、本体内部に揮発しにくい成分がたまり故障の原因になることがあります。したがってこの方法を使うのは、どうしても途中で消す必要があるときだけにとどめましょう。
火口を外せば消えるがやけどに要注意
もっと手っ取り早く消したい場合には火口を取り外してしまう方法があります。ただし火口はもちろんカイロ自体も熱くなっていますので、火傷に気をつけて手袋をはめるなどして慎重に行ってください。また外した火口を置く場所も金属製の板や熱に強い材質のところに置くことをお忘れなく。
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ハクキンカイロと合わせて使うと便利なアイテム
カイロ単品でも付属の袋に入れるだけでポケットに入れたりと十分使えるのですが、腰や肩などを重点的に温めたい時や燃料を簡単に持ち運びたい時に活躍してくれる商品もあります。そんなカイロと合わせて使うとさらに便利になる商品をご紹介します。
KOBAYA 暖か朗2
市販のカイロを入れて首の下にある風寒のツボを温めてくれる商品です。このツボを温めると暖かさが身体中に拡がると言われており、この位置に丁度カイロがくるようにポケットが付いています。マフラーのように首に巻いたりスーツでも目立たないようVネック状に付けることも可能なので寒い時期の通学や通勤時で活躍してくれます。
- 材質:ポリエステル(フリース)
- 寸法:80x12cm
- 重量:80g
- その他:ツボ位置カイロポケット付き
ケアフアスト カイロベルト フリー
本体の中央部分にカイロを入れるポケットが付いており、斜めがけしたり腰に巻くことにより背中や肩・腰を温めることができる商品です。固定はマジックベルト方式なので体型や着ける部位に合わせて自由に装着できます。
体に装着したまま作業ができるので、冬場の通勤通学だけでなく冷え性の方が自宅で使用するのにもおすすめです。またカイロだけでなく保冷剤を入れて使うこともできますので、夏の暑い時期に体をクールダウンさせる目的でも使用可能です。
- 商品サイズ:ウエスト約60〜100cmに対応
- 材質:ポリエステル100%(本体)、ナイロン100%(前あて起毛)、ポリエステル100%(前あて)
ZIPPO 携帯用オイル キーホルダー
名前の通り本来はこのライターの補充用オイルを持ち運ぶための商品ですが、カイロの用としても使用できます。内容量は約8mlなので満タンに補充することはできませんが、このタンク分だけでもおよそ8時間の保温が可能なため通勤・通学や外出時の予備としては十分でしょう。
- 本体サイズ:約直径20x70mm
- 容量:約8ml
- その他:キーリング・レバーナスカン付き
ハクキンカイロを上手に使うコツ
触媒燃焼なので発熱はするけど安全に持ち運べ、しかもメーカーの永久保証まで付いているハクキンカイロですが、当然のことながら間違った使い方をしたり最小限のメンテナンスを怠っていると怪我や故障の原因になってしまいます。ここではこの商品を上手に長く愛用するためのポイントを解説します。
火は使わないがやけどには注意
前の章でもご説明した通りこの商品で火を使うのは使用前に化学反応を起こさせる時だけで、使用中に火を使うことはありません。しかし温まるために使うアイテムなので燃料のある間はずっと発熱しており本体は熱くなっています。
使用中は必ず付属の袋に入れて使うようにし、途中で本体の蓋を開けたり火口に触るようなことは絶対にしないでください。特に火口は高温になっているので素手で触るとやけどをする危険があります。
燃料の取り扱いは十分気を付ける
使用する燃料のベンジンは可燃性の液体ですので、注油する際にはまわりに火の気の無い場所で行うようにしてください。ベンジン容器の保管も同様です。また使い方の章でもご説明したとおり点火時の事故を防ぐためにも、注油後は本体に余分なベンジンが残って無いか必ず確認してください。
火口は定期的な交換で不具合防止
交換せずに使い続けた場合、温かさが弱くなったするので定期的に交換することが必要です。頻度は使い方にもよりますが本来の性能を維持するためにメーカーでは1シーズン毎の交換を推奨しています。値段も800円ほどですので快適に使い続けるためにも定期的な交換をおすすめします。
火口
スタンダード、ミニのほかPEACOCKや3Rにも対応する純正の交換部品です。交換に工具は必要ありませんが付いているプラチナ触媒には素手で触れないようにしてください。触媒に手の油脂が付着すると触媒の反応が悪くなり、温まりにくくなったり寿命が短くなったりすることがあるので注意が必要です。
- 商品サイズ:50x40x15mm
- 入り個数:1個
- 材質:火口(真鍮)、触媒(プラチナ/ガラス繊維)
- 適合機種:PEACOCK、3R、mimi、STANDARD
ハクキンカイロで困ったときの対処法
カイロを毎日使用している間には、ちょっと気になる事や思いもかけずトラブルに遭遇してしまうようなこともあるかも知れません。燃料の臭いが気になる・水の中に落としてしまった・温まりが悪い、そんな困った時の対処方法をご紹介しましょう。
オイル臭が気になるとき
もし燃料にホワイトガソリンを使用している場合はメーカー指定のベンジンに切り替えてみてください。ホワイトガソリンは安価ですし、ランタンなどのキャンプ用具の燃料と共有されている方もいるかと思いますが臭いは強めです。
それでも気になるようでしたらZIPPOのオイルを試してみてください。価格的には若干高くなりますが指定ベンジンよりもさらに臭いが少なくなっているのでハクキンカイロでの利用者も多くおすすめです。比較的入手がしやすいのもいいところです。
水没してしまったとき
万が一水の中に落としてしまったら、慌てずにまず火口をカイロから取り外しましょう。取り外した火口をドライヤーを使い少し離したところから風を当てるようにして乾かします。また本体のタンクに入っている綿については、火口を取り付ける入口付近を先ほどと同様に乾燥するまでドライヤーで乾かします。
タンクの中に入っている綿はベンジンが十分浸み込んでいれば問題無いので、入口付近の綿が乾いたら火口を取り付けて発熱するか試してみてください。これでも温かくならない場合は火口を交換し再度試す事になります。
なかなか温まらないとき
この場合①燃料の入れすぎ②綿の位置ずれ③不適切な燃料使用などの原因が考えられます。①のケースでは火口を取り外し注油後と同じ要領で本体を逆さまにして余分な燃料を絞って落としてください。②のケースでは綿の位置をタンクの縁から5mmくらいに合わせてください。頻繁にずれる場合は中の綿の交換が必要です。
最後の③のケースのように指定ベンジン・ZIPPOオイル・ホワイトガソリン以外のものを注入してしまった場合は、中の綿を新しいものに交換した上で上の燃料を入れて試してみてください。一度でも良くない燃料を入れてしまうと綿が傷んでしまい、後から指定のものを入れても正常に動作しないので注意が必要です。
原点はハクキンカイロ!白金触媒式カイロのライバル商品
元々は創業者でもある的場仁市氏によって発明されたこの商品ですが、現在ではOEMも含めていくつかのメーカーが同様の方式を採用した商品を販売しています。これらライバルとも呼べる商品をいくつかご紹介します。
コールマン ポータブルイージーウォーマー ブラウン 170-6853
アウトドア用品の老舗ブランドも燃料式のカイロを販売しています。燃料を満タンにして約24時間燃焼してくれるところも同様ですが、このアイテムの特徴は触媒に熱を加える際にライターやマッチを必要としないところです。
本体には乾電池を入れて使うバッテリーチューブというユニットが付属しており、これを触媒の指定箇所に押し当てると内部コイルが発熱し反応が始まります。普段からタバコを吸わないのでライターやマッチを持っていない方にも便利なアイテムです。
スペック
- サイズ:直径8×1.3cm
- 重量:40g
- 材質:アルミ、スチール、コットン、ポリエステル
- 温度:約70℃
- 発熱持続時間:約18〜24時間
- 付属品:収納ケース、電池式バッテリーチューブ(電池別売)
ZIPPO ハンディウォーマー ZHW-15(ハクキンカイロのOEM商品)
ZIPPOの名前が付いていますがハクキンカイロ社のOEM商品になります。大きさ的にはスタンダードとほぼ同じサイズですが、1回の注油で持続できる時間は半分の12時間ほどとなります。当然の事ながら本体にはZIPPOロゴの刻印が袋にも同ロゴがあしらわれていますので、見た目の格好良さやこのブランドが好きな方にはおすすめです。
スペック
- サイズ:約66x15x100mm
- 重量:約60g
- 材質:真鍮
- 付属品:本体、注油カップ、フリース袋、ZIPPOオイル(133ml)、取扱説明書
- その他:1回の注油(約11g)で約12時間発熱
ポケットウォーマー I-HOT箱入 コンパクト携帯カイロ
見た目もサイズ感も上で紹介したZIPPOのハンディーウォーマーやハクキンカイロのスタンダードとほぼ同じような商品です。1回の注油で最大16時間燃焼するので、朝の通勤から家に帰るまでくらいは十分持ちます。点火し辛い事があるとの声も聞かれますが価格が安いのが特徴で、他の商品の半分くらいで購入が可能です。
スペック
- 商品サイズ:約68x15x102mm
- 持続時間:最大16時間(20cc)
- 材質:本体:本体(スチール/クロムメッキ)、キャリングケース(ポリエステル)
ハクキンカイロは体以外も温める?
今までご紹介してきました使い方は人の体を温めるためのものであったり関連するグッズについてのものでした。しかしこのカイロには人以外のものを温める使い方もあります。過去には意外なものを温める用途で使用されていた事もありますのでご紹介します。
カメラや天体望遠鏡のレンズを温める
キャンプをされる方でしたら朝起きてみると雨も降っていなかったのにテントやタープの表面が濡れていた、という経験をされた事があるかと思います。これは夜になり空気が冷えると空気中の水分の飽和量が減るため余った水分が付着する現象で、いわゆる夜露と呼ばれています。
夜間に夜景や星空を撮影する時にこの夜露の影響でレンズが曇ってしまい、せっかくの写真が台無しになってしまう事があります。これを防ぐための簡単にできる対策として「カイロをレンズに巻く」事があります。レンズやその周辺の空気を温めておく事で余分な水分の発生を抑えるためレンスの結露対策としてとても有効とされています。
過去には航空機のエンジンを温めたことも
戦争中の話ですが飛行機のエンジンを温める保温用として、特大のカイロの注文を受け製作していた時期がありました。寒さの厳しい地方ではエンジンが凍り始動できなくなることおあったためその予防用に使用されていました。航空機の燃料があるので基本的には火気厳禁ですがハクキンカイロの安全性が高く評価された結果でしょう。
ハクキンカイロは変わらないデザインも魅力
メーカーのウェブサイトを見られた方は気づかれたかも知れませんが、ページの下の方にさりげなく「グッドデザイン賞」のロゴマークを見る事ができます。実は2012年にハクキンカイロとして「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しているのです。
この時の審査委員長であった深澤直人氏のメッセージに「長年にわたって人の感覚や行動に沿うようなデザインは美しく、また大きく変わる必要のないデザインには人々の信頼に裏打ちされた美しさがある」とあります。90年という長きにわたり創業当時からほとんど変わる事のないこのカイロのデザインのそういったところが評価されたのでしょう。
日常でもアウトドアでもハクキンカイロはとっても便利!
ここまでハクキンカイロの魅力や使い方などについてご紹介してきました。中には今回の記事を読んで初めてこの商品のことを知ったという方もいるでしょう。発売は古いですが日常使いからアウトドアまで現代でもとても便利に使えるという事もご理解いただけたかと思います。
この商品の魅力は単に触媒燃焼を利用したという技術的なことだけでなく、購入したユーザーが生涯に渡り愛用し続けられるようなバックアップ体制をとっているメーカーの姿勢にもあります。これを機に1世紀近く愛され続けているこのカイロのことを改めて見直していただけたら嬉しいです。
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