世間を賑わせたスタンフォード監獄実験。実験内容をモチーフにした映画がある?

彼は実験の36時間後、泣きながら暴れ始めました。実験参加者の中でも早い段階で精神に錯乱をきたしてしまいました。他のメンバーにも愚痴をこぼしており、「逃げることも、やめることもできない」と主張していました。精神的な苦痛があまりにも大きかったため、彼は早期に実験のメンバーから外されました。

実験後の心境

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ジンバルドー教授は彼のこの時の様子を「急性の情緒不安定」であると評価しました。実験が終わった際、名前を読んであげて状況を説明するとすぐに正気を戻していました。泣き止むと悪夢から目覚めた幼い子供のようだったと報告書の中に書いてあります。

当時を振り返って何を思うか

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色々な被験者が当時のことを思い出すと、「まるで別の人間のやったことのようだ」と語っています。役割や権力を持った”別の自分”が出てきて、変貌してしまう。実験の終わりにそれが無くなったことを認識すると正気すぐ戻れる、というのはこの実験の怖いところだと言えます。

同じような研究ではどのような結果が?

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スタンフォード監獄実験に衝撃を受けたり、正当性を疑問視している他の研究者が同じような実験を行っています。様々な角度から検証を行いましたが最終的に疑問を持つ研究者の方が多いです。では何が違うのか、ということをこのブロックでは見ていきます。

ニューサウスウェールズ大学での実験

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オーストラリアにあるニューサウスウェールズ大学のシドニーロビボンド教授は、監獄体制を3種類用意し実験しました。1つは警備が通常である一般的な監獄、他の2つは囚人が体制に意見することが出来る、いわば個性を発揮できる監獄を用意しました。

実験結果

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実験の結果、個性を発揮できる囚人に対して看守は権力の行使を行いましたが、囚人は素直に従わない場面も有りました。これにより、被験者の見せる行動は、被験者個人の特性や与えられた役割ではなく、監獄体制の「社会組織」と結論づけました。

スタンフォード監獄実験との違い

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人は役割に従い、疑問を持たずに人権をないがしろにするほどに、権力を乱用する。というのがジンバルドーによる研究結果です。これに対し、今取り上げたニューサウルウェールズ大学の実験では、権力ではなく、その組織の方が大事であるという結果になりました。

被験者がこの実験から早く立ち直れた理由

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この実験が終わる時、「今までの実験は架空のことで、囚人番号○○番はもう居ないんだ」と伝えればすぐに立ち直ったと言われています。これは架空の自分が架空の役割を与えられた”だけ”で、大きく精神を揺さぶられていたということです。いわば、その”ラベル”が無くなれば自分の個性が復活するということです。

身近なところでいうと、職場や学校であなたに与えられた責任や役割は単なる”ラベル”でだということです。○○会社の○○係に所属するが故の役割。これが自分の精神に大きく影響していると自覚するべきでしょう。この役割を別人格が担っていると考えれば、今苦境に立たされている人は少し気が楽になるのではないでしょうか?

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その他にも恐ろしい実験が

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人間の闇にスポットを当てた実験は他にもいくつかあります。社会心理学や歴史が好きな方にとっては有名な話なので、既にご存知の方もいるかもしれません。せっかくですのでこのブロックでは恐ろしい実験を3つ取り上げていきます。

ミルグラム実験

元ナチスでユダヤ人を大量に虐殺し、ホロコーストに関与したことで知られるアドルフ・アイヒマンという人物がいます。彼は性格も穏やかでいかにも小市民のような受け答えをする人物でした。誰もが、あのホロコーストで重要なポジションにいたことを疑いました。

ここで心理学者が考察します。ホロコーストの指揮をとった人物は羊の革を被った狼なのか、それともどこにでもいる一般人が特殊な権力を与えられ、命令とあらば恐ろしい残虐な判断を下すのか、ということです。心理学者はとても興味がわき、実験を行いました。

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この実験の内容ですが、教師役の被験者がマイク越しに簡単な出題を出し、生徒がそれに間違えたら被験者がボタンを押して生徒に電気ショックを与え、間違える度に電気ショックの電圧を上げて行くという実験です。(引用:人間は残酷だ…。電気ショックを用いた精神実験『ミルグラム服従実験』の内容がエグすぎる)

 

これに参加した学生のうち、(ショック死もあり得る)400ボルトを超える電気ショックを与えた被験者が、全体の65%になります。これは驚異的な数字です。もちろん電気ショックは実際には流れてなく、教師役と実験者が手を組み、一芝居打って被験者を試していました。

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