更に近づいてみましょう。ぶよぶよの皮膚に所狭しと並んだ卵、そして穴からはみ出る赤ちゃんガエルの姿です。この写真はホルマリン漬けのものなので既に命はありませんが、このブツブツ一つ一つは全て命を宿しています。体じゅうを掻き毟りたくなる光景ですが、ピパピパたちはこうして我が子を外敵から守っているのです。
ピパピパは飼育できるの?
衝撃的な動画や写真が続きましたが、ピパピパの印象はいかがでしょうか。もう名前すら聞きたくないという方もいれば、とても興味が湧いてきた、実物を見てみたい、むしろ可能なら飼育したい!と思う方もいる事でしょう。カエルをペットに出来る事は知られていますが、果たしてピパピパはどうなのでしょうか。
ピパピパは実は人気のカエル
結論から言うと、ピパピパはペットとして飼えます。しかも繁殖方法の気持ち悪さが逆にマニアを喜ばせ、コアなファン層が出来ていたりもするのです。近年ペットとして爬虫類や両生類が注目されてきていますが、どうせ飼うならば普通のカエルではなくピパピパをお迎えしてみてはいかがでしょうか?
ピパピパ飼育に必要な道具
ピパピパは生涯水の中で暮し、体は約15~17cmの大きさになります。その事を踏まえ、なるべく大型の水槽を用意してあげると良いでしょう。最低60cm程度のガラス水槽で、蓋ができるものを。水温は23~27度を目安に観賞魚用のヒーターで調節します。変温動物の彼らの為に、冬場は特に水温管理に気を付けてください。
水をきれいに保つため、観賞魚用の水中フィルターもつけてあげましょう。場合によっては底石や水草をレイアウトして、素敵なアクアリウムを作るのも楽しいですね。ピパピパと同じアマゾン川出身で、水槽をお掃除してくれるプレコという魚もいます。
爬虫類と違い紫外線ライトやバスキングライトの類は必要としませんが、観察・観賞用と水草の成長を促すためには熱帯魚用の蛍光ライトを設置すると良いでしょう。また、水草はピパピパが移動の際に引き抜かれたり、絡まってしまわないようしっかり植え付けるようにしてください。
ピパピパの餌
ピパピパは肉食です。ペットショップなどで手に入る餌用のキンギョや川魚、釣り餌用のイトミミズやアカムシやエビ、またヨーロッパイエコオロギやフタホシコオロギといった昆虫を与えます。個体差にもよりますが、人工飼料に餌付きにくいという特徴があるので、生餌を与える覚悟をしましょう。
ピパピパの餌やり動画
動画時間7:34。給餌は3:25あたりからとなります。いまいち反応が良くないように見えるのは、基本的に動いているものしか餌として認識できないからだと思われます。これはピパピパに限らず、他のカエルや爬虫類も同様です。飼育していくうちに餌の好みが変わる事もしばしばあるので、臨機応変に対応しましょう。
ピパピパ飼育の注意点
ピパピパの飼育は比較的容易で、カエルというよりも観賞魚を飼う要領で飼育すれば特に難しい事はありません。しかし、オス同士は縄張り争いで喧嘩を起こしやすいので、単独飼育あるいはメス同士の多頭飼育をおすすめします。オスメスペアで飼育をする際は、低温処理で繁殖に持ち込める事もありますよ。
水槽内の水はフィルターに頼り切らず、こまめにとりかえて掃除も行いましょう。可能であればphチェック等で水質調査を行い、水質悪化を防ぎます。給餌は毎日する必要はなく、他の爬虫類や両生類同様2,3日に一回のペースで与えます。肥満による突然死を防ぐためにも、過度な餌やりは禁物です。
ピパピパを販売しているところも
ペットとして飼育ができるピパピパですが、その入手方法はどうなのでしょうか。はるばるアマゾン川まで捕獲しに行かずとも、チャンスがあれば日本でも購入することが可能です。イエアメガエルなどのメジャーなペットフロッグよりは出回る数が少ないものの、探せばきっと巡り会えます。
ピパピパはペットショップで購入可
ごくまれに、エキゾチックアニマル専門店などのコアなペットショップにてピパピパが入荷されることがあります。気になるお値段は一匹当たり一万円以内(8,000~9,000)が相場です。お店によってはお値段交渉ができ、飼育方法などの相談ができる場合もあります。
ピパピパはネットショップでも
近場にピパピパを販売しているお店が無いのであれば、ネット通販でお迎えするという手もあります。爬虫類・鳥類・哺乳類に関しては動物愛護法の改正により通信販売が禁止されましたが、今のところ両生類はセーフです。お値段は店頭販売価格と大差ありませんが、ベビー個体だと5,000円台で購入できる場合もあります。
気持ちの悪さとは裏腹に希少で人気の高いカエルですので、販売してもすぐに売れてしまうという事がほとんどです。後悔しないお迎えの為にも、万全の飼育環境を整え鵜の目鷹の目で販売情報をこまめにチェックし、いざその時が来たら即座に行動に移せるよう心構えておくと良いでしょう。
ピパピパだけじゃない!子守りをするカエル
さて、自分の背中の中で子供を育てるピパピパですが、実はもう一匹、似たような方法で保育をするカエルがいます。その名を「ブーランジェ・ バックパック・フロッグ」といい、「世界一過保護なカエル」と言われています。ピパピパと一二を争う子育てのショッキングさは、ネット上でしばしば話題に上るほどです。
背中にすし詰め状態の子ガエルたち
ブーランジェ・ バックパック・フロッグは米コロンビア北部に生息するクリプトバトラクス属のカエルで、ピパピパと異なり背中の上に卵を乗せて孵化させます。どうやらメスはクラッチバッグなるものを持っており、そこに卵を産んで育てるようです。ちなみに、オタマジャクシにならず卵から直接カエルに生まれます。
我が子を背負う親ガエル
ブーランジェ・ バックパック・フロッグやピパピパのように、子供を背に乗せ守る、あるいは運ぶ修正のあるカエルは多数存在します。例えばツノフクロアマガエル等の南米・中米に生息するフクロアマガエル属は、メスの背中の皮膚の下にある袋に卵を入れ、そこから母体と栄養や酸素を交換します。
ツノアマガエル属の一種は皮膚の上に直接卵を産みつけ、ヤドクガエルの中にはオスが生まれたばかりのオタマジャクシを背負って水場まで運ぶものもいます。お父さんガエルのタクシーで運ばれたオタマジャクシたちはそこで立派なカエルに成長し、新たな命をつないでいくのです。
ピパピパの産卵方法は子どものための知恵
いかがでしたか?衝撃的な画像や映像が続き、気分を悪くされた方もいらっしゃるかも知れません。しかし、「気持ち悪い」だけで片付けてしまうのは人間のエゴです。自分たちの子孫をより多く後世に残すため、文字通り我が身を捧げて子供を外敵から守り育てる、醜さも厭わない偉大な母の愛なのです。
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