ピパピパってどんなカエル?
初めて聞いた方には、これがカエルの名前である事すら想像がつかないかも知れません。可愛らしい印象の響きとは裏腹に、その容貌はかなり独特です。特に繁殖の際はメスの〝ある部分〟がとんでもない事になる、人によってはトラウマ必須の凄まじいカエルでもあります。
ピパピパは流通名
「ピパピパ」という名は、おもにペットとしての流通名であり、由来は学名の「Pipa pipa」です。単純に「ピパ」と呼ばれることもあり、これは同じピパ属のカエルの総称にも用いられます。両生綱・無尾目・ピパ科に分類され、和名は「コモリガエル」といいます。由来は後ほどご紹介する、驚きの子育て方法にちなんでつけられたものです。
ピパピパの見た目
写真をご覧ください。どこにカエルがいるか分かりますか?真ん中の平べったい朽木か石のような物体がピパピパです。よく見ると、前方向についた三角形の頭部に可愛らしい目がありますね。体長はオスで約15cm、メスで約17cmにもなる大型のカエルです。
体の色は全体的に褐色がかっており、全身にイボ状の小さな突起があります。後脚には広い水かきを持ちますが、前脚には水かきがありません。写真を見てもその特徴が確認できます。その代り、指先に触覚の役割を果たす小さな星形の器官を持っています。
ピパピパの生態
ピパピパはその一生を水の中で過ごし、陸にあがる事はほとんどありません。普段は川の底に「バンザイ」のような格好で潜んでいます。鳥獣戯画にでも登場しそうなユニークで微笑ましい愛らしさは、カエル好きならキュンときてしまうのではないでしょうか。
押し潰されたかのような平べったい体は「擬態」といいます。枯れ葉や岩石に化けて獲物が来るのを待ち構えたり、逆に自分達を捕食する天敵の目を欺くのに役立つのです。移動の時は、後脚の水かきで水を蹴り、前脚で行く手の障害物をどかしながら進みます。
ピパピパの食事方法
水かきの無い前足の指には、前述の通り星型の器官があります。これは虫でいうところの触覚にあたり、小魚や水棲昆虫がここに触れた途端、目にも止まらぬ速さで水と一緒に大きな口へ吸いこみます。その際、前足で口の中に獲物を掻き込むようなおもしろい動作もします。ちなみに、ピパ科のカエルには舌がありません。
ピパピパの生息域
ピパピパは、アマゾン川流域を中心とした南米北部の熱帯域に分布しています。豊かな自然に恵まれたこの土地には餌となる生物も多いですが、同時にピラニアやアマゾンカワイルカなどの肉食性動物が数多く生息しています。その為、奇異な姿や独特すぎる子育て方法をするよう進化したのでしょう。
ピパピパの産卵・保育がすごい!
「ピパピパ」と検索すると、たいてい後に続く検索ワードは「気持ち悪い」です。無理もありません。なぜならピパピパの繁殖は、目を覆いたくなるようなおぞましさなのですから。しかしそれは、豊かで厳しい生息環境の中に種を残していくために編み出された生き物の神秘でもあるのです。
メスのピパピパの背中はスポンジ状に
産卵前、メスの背中は皮膚がスポンジのように柔らかく、そして分厚くなります。メスが卵を産むと、それにオスが精子をかけて受精を行います。ここまでは、他のカエルとさして変わりありません。その次には、なんとその肥厚した皮膚にオスが卵を埋め込むのです!
オスとメスのピパピパダンス
求愛や繁殖の際に、まるでダンスのような動きをする動物は多数存在します。ピパピパも例外ではありません。交尾は水中で行われますが、その際オスはメスを背後からしっかりとハグし、後ろ方向に何度も宙返りをします。そして完全な仰向けの状態になった時、産卵された卵を腹部で受け止め受精させます。
受精と宙返りが終わると、最後にオスはメスの背中にお腹でぎゅうぎゅうと受精卵を押し付け、柔らかくなった皮膚の中に埋め込んでしまうのです。その数、約100個!メスの背中一面に卵のツブツブがびっしりと埋め尽くされている様子だけでも既に鳥肌モノですが…この後、更に凄まじい光景が繰り広げられることになります。
小さなカエルになると飛び出してくる
植え付けられた卵はそのままメスの背中の皮膚組織内で孵化し、幼生つまりオタマジャクシの時期も同じ場所で過ごします。やがて親と同じカエルの姿に成長すると、母親の背中の皮膚を突き破って外に飛び出してきます。「コモリガエル」という和名は、この一連の保育行動からきているのですね。
ピパピパの産卵動画を見るなら心の準備を!
さて、ここまでピパピパについてご紹介して参りましたが、いよいよ衝撃の産卵シーンをご紹介します。かなりグロテスクでショッキングなシーンをお見せすることになりますので、閲覧の際は相応の覚悟を持ってご覧ください。大量のブツブツ、生き物の体に密集した穴、そこから飛び出してくる小さなカエルが登場します。
「蓮コラ」という言葉をご存知でしょうか?一部の間では有名な精神的ブラクラ画像・動画の事です。スプラッタ系統とは違った種類のグロテスクさで多くの人にトラウマを植え付けました。このような密集した小さな物体に対する恐怖心を「トライポフォビア(集合体恐怖症)」といいます。
ここまでの説明と関連記事をご覧になって尚、大丈夫!という自信のある方のみこの先を読み進めて下さい。もう一度繰り返しますが、生き物の皮膚組織に異物(卵)がびっしりと埋め込まれたブツブツ系のグロテスクコンテンツです。閲覧は全て自己責任となっております。
ピパピパの産卵動画①
いざ外の世界へ!赤ちゃんガエル爆誕
動画時間0:36。いきなり最初からスポーン!と赤ちゃんガエルが飛び出します。お母さんガエルの背中の皮膚がモゾモゾうごめき、まだ内部に子供がいることが伺えます。15秒頃に再び別のベビーが飛び立ち、ギャラリーも興奮しています。小さな体で一生懸命泳ぐ姿が可愛いですね。
ピパピパの産卵動画②
モゾモゾ動く!お母さんガエルの背中
動画時間1:26。14秒頃、まだ幼生の子供たちがお母さんガエルの背中の中を動き回っているのがよく分かります。23秒頃は、背中に空いた穴から小さな手足が覗いています。皆一斉に手を伸ばして穴から出ようと頑張り、我先に飛び出す様子は微笑ましくもあり、やはり少しだけゾワッとくるものがありますね。
ピパピパの産卵動画③
情熱的なピパピパダンス、そして無数の卵
動画時間1:12。こちらはオスとメスの包接シーンも含まれています。真珠のような卵がメスの背中を覆い尽くす34秒頃、出演者らの気持ち悪がる様子がひしひしと伝わってきます。やがて先に紹介した通り、背中の皮膚内で動きまわる赤ちゃんガエル、皮膚に空いた穴からのロケット発射と続きます。
もっとじっくり見てみよう、ピパピパの背中
動き回ってよく見えなかったという方に、写真をご用意しました。普段はペタリと扁平な体をしているピパピパですが、保育の時期は肥大したスポンジ状の皮膚が背中いっぱいに広がり、カエルというよりもカッパです。じっくり観察してみると、余った皮膚が背中の面積からはみ出ています。