神隠しとは
日本には古来から八百万の神々を信仰する風習があり、特に神道のある山や森で行方不明者が出た時にはそれが山の神や天狗、妖怪の類の仕業だと考えられ神隠しと恐れられました。しかしそれは昔に限った話ではありません。
今でも年間8万人もの人が日本で行方不明になっているのをご存知でしょうか?神隠しは実は私たちの身近なところで起こっているのです。
人が突然消える現象
古来より恐れられてきた神隠しですが、現代においても人が突然消える現象のことをそう呼ぶことも多く、農村や田舎、都心部と場所は関係ありません。実際は事故や事件に巻き込まれたり、家出だったりと行方不明になる原因は様々ありますが、そう呼ばれることで不可思議な出来事が起きたように人は感じます。
神隠しは昔からある
神隠しの始まりは残念ながら詳しくはわかりません。しかし、古くは平安時代に書かれた今昔物語集にも神隠しの話が載っていますので、その時代にはもうすでに神隠しという伝承が人々の間に広まっていたということになります。
神隠しと学者
平安時代にはすでにあった神隠しですが、当時からすでにその不思議な現象について学者の間でも研究対象とされていました。実際に記録が残されているものもありますので、2つご紹介していきます。
平田篤胤
江戸時代の国学者である平田篤胤は、著書『仙境異聞』で寅吉という7歳の少年について言及しています。寅吉は天狗に攫われたとされており、その数年後江戸に戻ってきてその間の天狗との生活を話したことから「天狗小僧」という名で一躍有名になりました。
折口信夫
明治時代の民俗学者である折口信夫は、誰もが知っている浦島太郎伝説を神隠しと関連付けた人物として知られています。乙姫は神の使いとして、竜宮城は神域、浦島太郎伝説は神隠しの話にとても似ているのです。浦島太郎のような伝承は世界各地に伝わっています。
神隠しで有名な場所
神隠しと切っても切れないものが天狗伝承です。一般的に神様の仕業と考えられている神隠しですが、天狗も古神道においては山の神とされており、天狗小僧の寅吉のように天狗が連れて行ったのだと信じられていたものも多くあります。また、他にも鬼や狐などの妖怪の仕業という説もあり、神隠しの伝承は地域の数だけあると言ってもいいでしょう。
青森県「天狗岳」
八ヶ岳連峰に数えられる青森県の天狗岳は、赤い岩肌がむき出しになっている岩峰が天狗の赤い顔を連想させることからその名前がついたとされています。天狗岳は昔からゼンマイが多く採れる場所であり、毎年ゼンマイを採りに行った人が行方不明になることから「神隠しの山」との異名でも呼ばれるようになりました。
岐阜県「天狗山」
岐阜県の天狗山には荒薙教(あらなぎきょう)が開いた神社があり、この境内には数多くの天狗象が祀られています。おそらく、荒薙教では神の使いが天狗であると考えられているので、このように多くの天狗があるのでしょう。特に駐車場に置かれている大天狗象は圧巻の一言です。
千葉県「八幡の藪知らず」
本八幡駅から歩いて5分の所にある藪の通称をこのように呼んでいます。藪の広さや奥行き幅共に18mほどで決して出てこられないほど広いわけではないのですが、何故かそこに入った人が行方不明になることから神隠しの場所としても有名です。今でも足を踏み入れてはいけない場所として、神社以外は立ち入ることが禁止されています。
日本でおこった未解決の神隠し事件8選
日本では毎年約8万人もの行方不明者がでています。そこでは様々な神隠しが起こっており、未だに解明されていないものも多くあります。同じ日本で起こっている原因も真相もわからない神隠し事件、あなたも他人事とは割り切れなくなるのではないでしょうか。
赤城神社の神隠し
群馬県赤城神社に家族でツツジを見に来ていた主婦の行方不明事件です。天気が雨だったこともあり、ツツジは見ずに子どもと一緒に車に残っていた主婦。しかしやはり賽銭だけでもと思い立ち、子供を車に残して一人で神社に向かいそのまま行方不明となりました。場所が神社ということもあり、神隠しの噂が絶えませんでした。
不思議な点
主婦の失踪当時の服装はピンクシャツに黒のスカート、赤色の傘をさしていたと子どもは証言しています。主婦の姿を最後に見たのは車にいた子ども、境内とは違う場所にいる母親の姿を確認しています。目立つ色で時期もゴールデンウイークと参拝客の多い時であったにも関わらず、誰一人目撃者がでていないのは不思議です。
タケノコ堀り行方不明事件
香川県坂出市で5歳の女の子がタケノコ掘りの最中に行方不明になった事件です。タケノコ掘りのイベント中での出来事で、60名ほどの人が参加する中で起こりました。母親と小学3年生の姉とこのイベントに参加した女の子は、もう一本採って来ると言ってそのままイベント終了時になっても帰ってきませんでした。
不思議な点
行方不明になった日から連日100~200人態勢での捜索をしたにも関わらず見つかりませんでした。この捜査では延べ4匹の警察犬も導入されましたが、毎回ある特定の場所で臭いが消えてしまい、そこからの足取りが掴めなくなるということが起こりました。その場所から忽然と臭いが消えた原因は未だに解明されていません。
松岡伸矢くん失踪事件
徳島県の親戚宅に来ていた当時4歳の松岡伸矢くんが、父親の目が離れた40秒ほどの間に行方不明になった事件です。当初警察は山で遭難したのではと考え、3ヵ月に及ぶ付近の捜索を続けましたが見つかりませんでした。
不思議な点
徳島県の親戚宅は近くの家とも離れていますし、100mほど離れた所で農作業をしていた人はその時車はなかったと証言しています。つまり、失踪場所の見晴らしは良かった中での事件でした。加えて捜索中、親戚宅に姉が通っている幼稚園の保護者を名乗る電話がありましたが、実際はその名前の生徒は在籍しておらず、謎の電話とされています。
その後の展開
事件から17年後、事件は急展開します。2018年1月に17年間監禁されていたという男性がショッピングモールで発見されました。そして発見された男性のことをテレビで見た視聴者が、徳島県で失踪した伸矢くんにとてもよく似ている、本人ではないのかと連絡をしたのです。あまりにも似ていることでDNA鑑定が行われる予定になっています。
嵐真由美さん失踪事件
東京都隅田区の嵐真由美さんが友人と会うと家を出たきり行方不明になった事件です。実際は、その友人に真由美さんに会う約束はなく、真由美さんが夫とは違う男性と不倫をしていたことが発覚したので、痴情のもつれで失踪したのではないかと警察は考えています。
不思議な点
この事件がワイドショーで取り上げられた際、真由美さんの父親がインタビューに答えましたが、「洋子のはなしは信じるな」という意味深な張り紙が父親の背後にあるのをテレビでは映されています。洋子というのは真由美さんの姉であり、失踪後には積極的に証言している人物です。その張り紙が意味するもの、それは未だにわかっていません。
石井舞ちゃん行方不明事件
福島県に住む7歳の石井舞ちゃんが、一家が寝ている自宅から行方不明になった事件です。この日家には祖父母をはじめ父親の姪、その恋人、母親の友人の子ども2人が泊まっていました。安全だと思っていた自宅から忽然と姿を消した舞ちゃん。警察犬も導入されましたが玄関で臭いは消えており、車で連れ去られたのではと考えられました。
犯人は姪の恋人?
いつも両親と寝ている舞ちゃんが、たまたま子ども同士で寝ていたこの日に失踪したため、当初この日家にいた大人が容疑者と考えられました。特に姪の恋人は父親との仲もあまり良くなく、その恨みからくる犯行ではとの見方もありましたが、真相はわかっていません。
三重小2女児失踪事件
三重県四日市市に住む小学2年生の女の子が、下校の際に友達と別れたのを最後に行方不明になった事件です。家には飲みかけと思われるホットココアが残されており、女の子のジャンパーや自転車は家に残されたままでした。また、この日女の子はいつも遊ぶ友達との誘いを断っていたという証言があります。
謎の置手紙
女の子が失踪して3年後、自宅の前に手紙が残されていました。その手紙には「ミゆキサンにツイテ ミユキ カアイソウ カアイソウ」という平仮名と片仮名が混じった乱雑な文章が書き殴られていました。誰がどんな目的でその手紙を書いたのかはわかっていません。
坪野鉱泉女性失踪事件
富山県魚津市の心霊スポットで女性2人が行方不明になった事件です。正確には心霊スポットに行くと車で家を出て、心霊スポットのある魚津市にいるというメッセージを友人に送ったのが最後となりました。この心霊スポットはもともと温泉旅館で、一部の間では神隠しスポットとして有名です。
都市伝説
女性2人が向かったであろう心霊スポットにはいくつかの都市伝説があります。「自分の車でいってはいけない」「白い車でいってはいけない」「一人になってはいけない」などがあります。この失踪事件では警察は事件と事故の両面から徹底的に捜索しましたが、結局女性が乗っていた車すら発見されませんでした。
岡山地底湖行方不明事件
岡山県にある日咩坂鍾乳穴 (ひめさかかなちあな)という洞窟の地底湖に入った洞窟探検サークルの学生一人が行方不明になった事件です。この洞窟は奥行きが1600mもあり、入るのに入洞届が必要となっていますが、このサークルはその届を出していませんでした。5人入洞し、地底湖で泳いだのは行方不明になった男性だけです。
不思議な点
地底湖で男性が溺れたという通報があったものの、誰一人として男性が溺れているところを目撃してはいませんでした。それに加えて誰も助けを求める声すら聞いていないと言います。しかし他の4人は男性が溺れたと判断し、救助活動を行わずに全員で洞窟から出てきました。入洞届の件、不可解な状況これが意味するものは何だったのでしょうか。
日本で起こった解決した神隠し事件6選
神隠し事件というと未解決、迷宮入りの事件を連想する人も多いと思いますが、実は解決されている神隠し事件もあります。神隠しの気になる結末とはどのようなものだったのでしょうか。今回はその中でも有名な事件を6つご紹介していきます。
茂原女子高生神隠し事件
千葉県茂原市で学校帰りの女子高生が行方不明になった事件です。駅にある防犯カメラで改札を出る姿が確認されましたが、それ以降の消息がわからなくなっていました。警察は事件、事故、家出の各方面で捜査に当たり、家族は駅前でのビラ配りに尽力しましたが有力な情報は出てきませんでした。
結末
失踪から2ヵ月半が経ったある夏の日、自宅から400m程離れたところにある神社の社に女子高生がうずくまっているのが発見されました。目立ったケガなどはありませんでしたが、体重は激減しており、服装は失踪当時の制服のままでした。その後病院に搬送され、警察から事件の有無を聞かれましたが首を横に振ったといいます。
新潟少女監禁事件
新潟県三条市で当時9歳だった女の子が行方不明になった事件です。少女は小学校からの帰り道に車で誘拐され、9年間もの間誘拐犯の男性の自宅で監禁されていました。そして事件から9年後の2000年、当時28歳だった引きこもりの男性がこの事件の犯人として捕らえられ、その異常な監禁生活がメディアで話題になりました。
結末
少女は男性の部屋から出ることを許されず、同じ家に住む男性の母親にも存在を知られてはいませんでした。しかし、当時男性からの暴力に悩んだ母親が男性に医療保護入院措置をとったことから、少女は部屋に入ってきた市の職員たちによって発見されました。発見された少女は栄養不良に加え、両下肢筋力低下、骨粗鬆症の症状が見られました。
広島一家行方不明事件
広島県世羅町である一家が一夜にして愛犬も含め全員行方不明になった事件です。父親、母親、祖母、長女ともに周りからは何のトラブルも出てこず、父親の車が無かったことから車でどこかに出かけたと考えられました。しかし、それにしては不思議な点が多くありました。
不思議な点①
失踪日は母親の楽しみにしていた社員旅行出発の日であり、時間になっても来ない母親を不審に思った同僚が家を訪ねて事件は発覚しました。家を調べた警察はその様子から一家がサンダルに寝間着姿で出かけたと考え、計画的なものではなく突如何らかの理由から家を出なければならなくなったと判断しました。
不思議な点②
しかし一家にはトラブルに巻きこまれているような話は一切出てこず、しかも長女は婚約中で相手に何も話さず失踪する理由はありませんでした。また家には次の日に着る予定の服や朝食が準備されたままになっており、それがまた一家の失踪に奇妙な違和感を加えています。
結末
失踪から1年後、広島県世羅町にある京丸ダムの湖底から車と共に一家の遺体が発見されました。京丸ダム入り口には車止めがされており、誤って転落した可能性が薄いことなどから父親の家族を巻き込んだ無理心中と判断され、この事件は幕を下ろしました。
群馬県女児失踪事件
群馬県で起こった当時小学5年生の女の子が行方不明になった事件です。父親が女の子を友人の家の近くまで送っていったのを最後に消息がわからなくなりました。友人は女の子が家に来ていないと証言し、車を降りてから友人の家までの間に事件が起こったと考えられました。
結末
失踪から1週間後、近くの雑木林で女の子の遺体が発見され、神隠し事件から殺人事件に変わりました。しかし翌日には犯人が逮捕され、それが父親であったことが判明しました。初めは神隠し事件とされた女の子の失踪でしたが、真相は父親による保険金目当ての殺人で幕を下ろしたのです。
千葉県少女失踪事件
千葉県の市原市で起きた当時7歳の女の子が行方不明になった事件です。失踪後すぐに地元有志で山の捜索がされましたが見つからず、神隠しにあったのではと噂されました。この事件は1979年にテレビ番組で特集され、一躍注目の的となった事件ですが、そのテレビ番組では超能力者が来日協力していました。
結末
テレビ番組で取り上げられたこの失踪事件、超能力者のジェラルド・クロワゼット氏が透視を行い、女の子の行方を追いました。クロワゼット氏は女の子はすでに水死していると言い、地図である場所を示しました。テレビ番組クルーが翌日その場所に駆け付けると、その女の子の遺体が水辺に浮いているのが発見されました。
プチエンジェル事件
2003年に東京都赤坂で起こった小学6年生の女の子4人が行方不明になった事件です。プチエンジェルとは4人を誘拐・監禁していた犯人が経営していた会社の名前であり、児童買春を斡旋していました。4人は犯人と面識があり、マンションを1万円で掃除してほしいと部屋に誘い込まれたようです。
結末
監禁されていた女の子の1人が逃げ出すことに成功し、近くの花屋に助けを求めたことから事件は発覚。警察が部屋に入ると、犯人はリビングでテントを張り、練炭自殺を図っていました。女の子の証言によると犯人は女の子が逃げ出す前に自殺を図っており、物音が聞こえなくなったので逃げ出すことに成功したといいます。
世界で起こった神隠し事件6選
日本だけでなく世界でも神隠しの被害者はでており、国や地域関係なく未解決事件のものも多くあります。人が消える恐怖、時には集団での失踪、原因のわからない事件は世界共通でそこに住む人々を不安に陥れました。その中でも特に有名なものを6つご紹介していきます。
メアリー・セレスト号事件
1872年に起こったアメリカ船の乗組員が航海中に全員行方不明になった事件です。発見したのはイギリス船で、メアリー・セレスト号の様子がはた目から見ても明らかにおかしいと感じ船に乗り込みました。しかし船内には乗客も乗組員も誰もおらず、船長の日記も書きかけのままでした。
不思議な点
船内には食料や飲み物は十分にあり、船自体にも目立った外傷はなく操行可能な状態でしたが、なぜか船全体が水浸しだったと言います。乗員は全部で10名、誰一人として発見されていませんが、船には謎めいた血痕やひっかき傷などがありました。
脚色された情報
時にメアリー・セレス号事件はその謎めいた事件から、嘘の情報がつけたされることがあります。「船内には作りかけの朝食があり、コーヒーはまだ温かかった」「救命ボートは手付かずで置かれていた」などの情報は後からつけたされたものです。ただこの事件は未だに真相は分かっておらず、様々な憶測が飛び交っています。
ジム・トンプソン失踪
1967年、シルク王と呼ばれたジム・トンプソン氏が友人の別荘で行方不明になった事件です。ジム・トンプソン氏はタイ・シルク事業での成功者であり、当時は有名なシルク王の失踪ということで世間でも騒がれ、警察の大規模な捜索も行われました。しかし結局トンプソン氏は今に至るまで見つかっていません。
経緯
トンプソン氏は妻と共に友人夫婦の待つ別荘に向かい、2日目の午後消息を絶ちました。トンプソン氏を除く3人は自室で休憩を取り、氏はデッキにチェアを持っていき日光浴を行っていた痕跡があります。友人がリビングに降りて来た時、チェアにはトンプソン氏の上着や持病の薬が置かれており、長時間の外出ではないだろうと考えられていました。
真相は?
身代金の為の誘拐説、CIAが関与しているとするCIA説、遭難説、トンプソン氏の自発的な失踪、暗殺など、 シルク王の失踪事件では様々な憶測が飛び交っています。しかし現在に至るまでトンプソン氏の生死すらわかってません。