無実の罪で斬首刑となったアン・ブーリン|強く生きたその生涯をご紹介

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息子の誕生に執念を燃やすヘンリー8世は、失望の連続に次第に妻への思いを薄れさせてしまいます。息子を産めない自分と、離れていく夫。初めは幸せだったはずの彼女の結婚は、たったの3年で終わりに向けて急速に加速していきました。

アンブーリンの侍女ジェーン・シーモアに心移りしたヘンリー8世

ヘンリー8世はアンブーリンの侍女であったジェーン・シーモアに想いを寄せるようになっていました。ジェーンが王から送られた、互いの肖像画入りのネックレスもアンの知るところとなっていました。アンが2度目の流産をしたのは2人の関係を知ってヒステリーを起こしたからだとされています。

また、アンブーリンがヘンリー8世の膝に乗る彼女を目撃してショックを起こしたとする話もあるようです。夫とまさにかつての自分と同じ侍女との関係は、胸が張りさける思いだったことでしょう。

罪を着せられたアンブーリン!反逆罪として斬首刑に

アンブーリンは王の暗殺を図ったとして反逆、姦通、近親相姦、魔術の罪を言い渡され取り調べを受けロンドン塔に送られてしまいます。降って湧いたようなこれらの罪状は、全てヘンリー8世が彼女を排除したかったがための事実無根であったとされています。

アンブーリンはロンドン塔で剣によって首をはねられ1536年5月19日にこの世を去りました。剣によってというのは当時処刑となれば斧が主流だった当時においては稀なことで、彼女自身が懇願したとされています。

アンブーリンの実弟ジョージ・ブーリンなど無実の男性5人も処される

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ヘンリー8世とジェーン・シーモアはアンブーリンが処刑されたその翌日に婚約を発表します。現在の私達からすると血も涙も無いような印象を抱いてしまいますね。アンブーリン処刑の数日前には、アンと関係を持ったとされる5人の男性も処刑されました。その中にはなんとアンの弟ジョージの名前もありました。

息子を流産したばかりの気高いアンブーリンが、なぜ突然、実の弟を含めた多くの男性と不貞を働かなければならなかったというのでしょうか。その実、明確な証拠など何もなかったのだといいます。

アンの最後のスピーチ

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ここにアンの最後の言葉を一部紹介します。「私はここへ死するためにやってきました。私は法によって裁かれ、死を宣告されました。私はそれを受け入れます。私はここで死する運命ですが、どうか国王のために祈ることをお許しください。神が彼と共にあり、彼の世が長く続きますように。私にとって彼は善良で、紳士であった最高の夫でした。」

「私のために咎を受ける者がいたならば、その方達には最良の判決を望みます。どうか皆さん、私のために祈っていてください。神よ、御慈悲を。私の魂はあなたへと委ねましょう。」アンはその生涯に幕を下ろす最期の瞬間まで、王妃として、人としての威厳を保ち続けたのでした。

処刑後アンブーリンの幽霊が出るようになった!?

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処刑され帰らぬ人となってしまったアンブーリン。気高く散っていった彼女ですが、その後幽霊として各地に現れていると言われ始めました。一人娘を遺して逝った未練でしょうか。人々はそこで何を目撃したのでしょう。

ロンドン塔の“トレイターズ・ゲート(反逆者の門)”

ロンドン塔へと続くトレイターズ・ゲート。こちらで彼女を見かけたという情報があります。また彼女はロンドン塔の他にも幼少期を過ごしたヒーヴァー城やロンドン近郊のウィンザー城、ブリックリングホールなどと各地で目撃されていることから、イギリス1の旅する幽霊などと言われることがあるようです。

自らの首を抱えたアンブーリンの幽霊?目撃情報も多数?

19世紀終わりにも、鍵のかかったはずの教会のドアが突然開き、騎士や侍女たちを従えた首がないアンブーリンが出てくるのを見たと証言した人々がいました。世界には他にも首がない幽霊の話が数多く存在していますが、アイルランドや日本国内においては首なしライダーの話が数多く報告されています。気になる方はこちらをご覧ください。

ファッションリーダーとしても知られていたアンブーリン

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実はアンブーリンはファッションリーダーとしての顔を持っていました。言語や立ち居振る舞いに加え、人々を惹きつけてやまなかったそのファッションのセンスを彼女はどのようにして自分のものとしたのでしょうか。

フランスに留学したときに身につけたファッションセンス

アンは幼少期、今でいうベルギーなどにも留学しましたが、ファッションのセンスを開花させるきっかけとなったのは長いフランス留学でした。フランスの先進的なファッションをイギリスにもたらしたのはアンブーリンだったのです。

宮廷ではファッションリーダーとして名を馳せたアンブーリン

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イギリスに帰国して初めてダンスパーティーに現れたその時から、彼女は王だけでなく多くの男性を虜にしたようです。スタイリッシュで見事なフランスの衣服を着て踊る彼女はとても素晴らしかったと記録されています。

アンブーリンはガウンや宝石、ヘッドドレスやダチョウの羽の扇子、高価な乗馬具や家具など贅沢を好みました。彼女を真似てパールを散りばめたガウンを羽織ることは流行の最先端となり、娘のエリザベスの時代が終わるまでその流行は続いたといいます。

アンブーリンが身につけていたネックレスに隠された秘密とは?

アンブーリン個人の肖像画にはほとんどと言っていいほど、その胸元にBという文字とパールが輝くネックレスが描かれています。このBは自分のイニシャルであるブーリン(Boleyn)の意味を持っていました。

テューダー朝時代、個人のイニシャル入りの装飾品を身につけることはとても人気があり、ヘンリー8世も自身のイニシャルのブローチを持っていたと言われています。アンの死後、彼女の持ち物は処分されるか娘のエリザベスのものになるかだったようですが、このネックレスは未だに見つかっておらず、その行方は謎に包まれたままです。

あの有名ブランドもアンブーリンをモチーフにした?

この春有名ファッションブランドBalenciagaは、アンブーリンが身につけていたものとよく似たネックレスを発表しました。この時彼女を思い起こしたファッション関係者は少なくはなく、アンの伝説は生き続けている、と人々は言いました。たとえこの新作ネックレスのBがブランド名BalenciagaのBだったとしても、と。

アンブーリンの登場する映画とは?関連作品について紹介

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波乱含みの生涯を送ったアンブーリン。彼女は現在まで映画の題材として幾度も取り上げられています。ここからいくつかご紹介していきたいと思います。気になる作品があった方はぜひご覧になってみてくださいね。

ヘンリー8世とアンブーリンの愛憎劇『1000日のアン』

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はじめにご紹介する作品は1968年の『1000日のアン』。この作品でアンを演じたジュヌヴィエーブ・ビュジョルドはアカデミー主演女優賞にノミネートされました。ヘンリー8世を演じたのはリチャード・バートン。2人の白熱の演技は必見です。

アンブーリンとその姉妹について描かれる『ブーリン家の姉妹』

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2008年に公開されたこちらの作品は、同名の小説を原作としており、アンブーリンが姉、姉妹であるメアリーが妹として描かれています。先ほどメアリーが先にヘンリー8世の愛人であったとお伝えしましたが、この作品ではメアリーとアン、それぞれのヘンリー8世への愛の形が描かれています。

彼女たちを演じるのはスカーレット・ヨハンソンとナタリー・ポートマン。2大女優の迫真の演技が光る大変見応えのある作品となっています。衣装など美術面も素晴らしく、こちらも要チェックの作品です。

まさかのあの映画に肖像画が?!

実はアンブーリンはある映画にこっそりと登場していました。それはまさかのハリー・ポッターです。彼女の肖像画が魔法学校ホグワーツの壁に飾られているシーンがあるのです。先ほど彼女が処刑された罪状のひとつが魔術であったとお伝えしましたが、そこからきているようですね。イギリスなりの彼女に親しんだユーモアであると言えるでしょう。

アンブーリンに関するオペラがある!

ガエターノ・ドニゼッティ作曲のオペラである『アンナ・ボレーナ(Anna Bolena)』は、アンブーリンと、ヘンリー8世の3番目の妻となったジェーン・シーモアに関する作品です。1830年の12月26日に初演されてからというもの、一時期上演が減った時期はあったものの、現在に至るまで名作として上演され続けています。

アンブーリンの演劇もある!

2010年7月24日に披露されたハワード・ブレントンによる戯曲『Anne Boleyn』。こちらも人気を博して何度も再演されています。また、イギリスのThe Queen Mother Theatreという劇場では、今年の6月17日から22日まで上演されることが決定しています。

6月にイギリスへ行く予定がある方、または今回の記事で彼女に興味を持たれた方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。役者たちによって蘇る、彼女のリアルな魅力を感じられることでしょう。

見限られ斬首刑となった悲しき王妃アンブーリン

今回アンブーリンの生涯を追って見えてきたもの、それは葛藤しながらも力強く生きた、進歩的で魅力溢れる女性の姿でした。それは現在でも彼女の生き方が書に書かれ、映画や演劇として演じられ、様々な場面で注目を集めている所以です。

幽霊としての出没の噂さえも、アンブーリンという大きな存在が皆の記憶から薄れることなく生き続けていることの証明でもあるでしょう。彼女は現在を生きる私たちにとっても尊敬の対象であり、凛とたたずむ美しい花に他ならないのです。

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