スッポンモドキとは?絶滅危惧種だけどペットにできる!?
みなさんはスッポンモドキという生き物を知っていますか?分類としてはカメ目スッポンモドキ科スッポンモドキ属で、この種類のみの独立した分類がされている希少なカメです。
甲羅は最終的に70cmほどまで成長し、体重は20kgを超えるまでになる大型のカメです。
愛らしい特徴を捉えた名前
スッポンモドキとはその名の通りスッポンに似て、それでいてブタのような立派な鼻を持つカメの仲間です。別名や英語名ではその特徴そのままに、ブタバナガメ・Pig-nosed turtleと呼ばれています。
また他にも英語名ではFly river turtleとも呼ばれます。水中を飛ぶように泳ぐと言われていることに由来する名前です。彼らの生息数は多くはなく、絶滅が危ぶまれています。
現在野生に生きる子の輸入はできませんが、飼育する中で孵化した子たちの販売は許可されており、ペットとして迎えることもできます。今回は魅力いっぱいの彼らについて詳しくお伝えしていきます。
スッポンモドキの生態
まずは野生のスッポンモドキの生態をお伝えしていきます。彼らのふるさとはどこで、本来どのようにして暮らしているのでしょうか。
インドネシアやオーストラリアなどに棲んでいる
スッポンモドキはインドネシアやオーストラリア北部、パプアニューギニアの南部に生息しています。ニューギニア島では9月から2月にかけて、オーストラリアでは7月から11月にかけてが産卵シーズンです。
産卵時にメスは夜間、岸から5mほどの距離の砂や泥などを堀り、22cmほどの穴を作ってその中に卵を産みます。
産み付けられた卵の周囲の温度によって、赤ちゃんの性別が決定されます。
野生のスッポンモドキが生まれるのは嵐の夜!
赤ちゃんが卵の中で充分に成長し、いつでも孵化できる状態になった時、孵化の引き金となるのは嵐のような猛烈な大雨なのだそうです。
この特徴は実は他のどのカメも持っていない、とてもユニークなものです。
野生で生まれた赤ちゃんは深夜、生まれた殻を離れて広い世界へと移動していきます。
スッポンモドキは澄んだ水を好む
スッポンモドキは卵を産むとき以外にはまず全くと言っていいほど陸には上がりません。海水に住まないウミガメのようなもので、彼らは泳いで暮らすカメなのです。
主に淡水の湖や沼地など綺麗な澄んだ水に生息しています。時々海水と淡水が混じるような場所にも姿を見せることがあります。
pHにもこだわりが
野生のスッポンモドキが最も快適に過ごせるpHは乾季で8.2pH、雨季では7.5pHほど。飼育する場合には7.0〜7.5pHほどが良いようです。飼育の際にはこの辺りのpHに保ってあげると良さそうです。
彼らは進化の観点から、研究者からはウミガメと陸ガメの間に位置するようなカメであると見られています。
縄張り意識がものすごく強い!
スッポンモドキは他のウミガメ・陸ガメの中でも例を見ないほどに縄張り意識が極端に強いカメです。スッポンモドキを家族に迎えることを考えている方は、同じ水槽に2匹同居させることは絶対に避けるべきでしょう。
また、1人で水槽などにいたならば基本的にシャイでストレスを感じやすい性格だそうです。後ほど飼育環境については詳しくお伝えしていきます。
実はものすごく社会的!
一方で、あまり知られていませんが、野生のスッポンモドキには、季節の変わり目にはすごく社会的なカメになる一面を持っています。
乾季で住処となるエリアの水位が下がる時は、彼らは密集して行動を共にするようになります。
また、雨季になるとメスたちは河口へと連れ立って移動していきます。巣を作るのに最も安全そうな場所をみんなで確認しあいながら協力して探すためです。
飼育下では協力できない?
現在私たちが飼育することのできるスッポンモドキは野生生まれではありませんので、乾季や雨季などの、みんなと力を合わせて生きなければいけない状態を知らないことになります。
また、本能ではわかっているとしても、飼育下ではその必要性がありません。
常に協力時期以外の、一人で生きていてテリトリーを守る意識が高い状態に置かれていることになりますので、飼育下では他の仲間に対して攻撃的になっていると考えられます。
人間には慣れてくれる?
カメは視力もよく知能も高い、人間を見分けて慣れてくれる生き物です。スッポンモドキもあなたの顔を覚えてくれるようになるでしょう。
徐々に手からご飯をあげたり、顔を見てこちらに寄ってきてくれたり、なでることができるようになったりといったことが期待できます。
スッポンモドキのオスとメスとの違い
スッポンモドキはオスの方が長くしっかりとした尻尾を持ちます。また、メスの方が同じ年齢のオスよりと比べた場合多少大きく、甲羅の幅が広く甲高であるようです。
また、野生のオスのテリトリーが3kmほどなのに対して、メスはなんとその倍以上の8kmほどものテリトリーを持つことから、メスの方が活動的であると言われています。
スッポンモドキの寿命は飼育下で17年前後
実はスッポンモドキの正確な寿命は未だわかっていません。野生だと25〜30年ほどで、38年生きた記録もあることから40年は生きられるとされているようです。また、飼育下で17年生きた記録が残っています。
本来彼らが自分も子供を作ることができるようになるまで、オスで16年ほど、メスが18年ほどかかるということですので、飼育下ですとやっと大人になったくらいで天国に行ってしまっていることがわかります。
飼育下の方が安全なため長生きする動物も多い一方、スッポンモドキはそうではないようです。彼らとうまく付き合っていくことはかなり難易度が高めなのかもしれません。
スッポンモドキの敵って?
ワニはスッポンモドキの最大の敵です。また蛇や中型以上のトカゲ、ブタや水牛などもそれぞれ卵を食べたり踏みつけてしまったりするので彼らにとっての有害動物であると言えます。
お昼寝中のスッポンモドキ
眠るときには、スッポンモドキもひとところでじっとお休みします。
それにしても、なんという絶妙なバランス。こちらの水槽はだいぶ同居人も多く騒がしそうですがぐっすりと夢の中のよう。全く動きません…
スッポンモドキとスッポンの共通点と相違点
なにしろ名前がスッポンモドキですので、スッポンモドキはスッポンと比べられる運命にあるようです。
彼らはお互いにどこが違っていてどこが同じなのでしょうか。ここからスッポンモドキとスッポンの共通点と相違点をお伝えします。
スッポンモドキもスッポンも食用にできる
スッポンと同じようにスッポンモドキも、卵も成体も現地の人にとっては食べられるものでした。まだタンパク源が手に入りにくかった頃にはよく利用されていたようです。
スッポンモドキもスッポンも絶滅危惧種
スッポンモドキは現在スッポンと並び絶滅危惧種に指定されています。スッポンモドキの方がスッポンよりも危険度が一歩進んだ度合いに区分けされています。
またスッポンは日本のレッドリストでは情報不足のカテゴリーに入っています。世界にスッポンは数種類いますから、種類にもよるのかもしれません。
スッポンモドキが減ってきている理由
生息が開墾により減ってしまったことや、生きていける綺麗な水が減ってしまってきていることなどの環境破壊によることが大きいと言えます。
それに加えて、食用にするためやペットにする目的などで乱獲・密輸されてしまったこと、家畜に巣を壊されてしまうなど様々な理由からどんどん少なくなってしまったのです。
鼻の使い方が同じ!
あの個性的な鼻を、スッポンモドキは息継ぎの時にカバのように水面からちょこんと鼻だけ出して使います。スッポンも同じで、これは自分を攻撃・捕食しそうな生き物から見つかりにくくするためです。
また、スッポンモドキは水中でも酸素が取り入れられるような粘膜の仕組みを喉に持ち合わせていて、目の前にあるものが食べられるものかどうかを見分けるのにもこの敏感な鼻を使うそうです。
また、世界には便利な鼻でなく枯葉に擬態したような体という個性を身につけた、マタマタというカメもいます。マタマタについて気になった方はこちらをご覧ください。
スッポンモドキは甲羅が硬い、手の形の違いなどがある
やわらかな甲羅を持つスッポンに対して、スッポンモドキの甲羅はレザーのような質感で硬くしっかりと頑丈なものです。
またスッポンは陸にもちょくちょく上がるので歩くのにも適した水かきを持った手をしていますが、スッポンモドキは泳いで暮らしますので、よりそうした生活に適した、完全にヒレと呼べる手をしています。
スッポンモドキは淡水に生きるカメの中で唯一のヒレを持つカメなのです。彼らはこのヒレをパドルのように使って、水中を飛び回ります。
スッポンモドキはどこで販売されている?通販も可能?
絶滅が危惧されている種ではありますが、スッポンモドキは現在でも自宅に迎えようと思えば迎えることができます。その際は大きくなるカメを飼うのだという心構えを決して忘れないようにしましょう。
スッポンモドキは通販で購入可能?
自宅に迎える子との出逢いを探すにあたって、10年ほど前なら通販が主流でした。ですが2013年の動物愛護法改正により、カメを含む爬虫類は対面での販売や説明が義務付けられることとなりました。
購入する前に直接店頭や爬虫類イベントなどで一度その子に会って状態を確認していて、説明も受けていたならば後での発送が可能になることがあります。
スッポンモドキはワシントン条約に触れるので輸入禁止
はるばる異国の生息地からスッポンモドキを輸入することは、絶滅危惧種の彼らを保護するワシントン条約に抵触するので禁じられています。現在流通しているものは、人間が育てる中で繁殖させた子達になっています。
ワシントン条約って?
1973年に採択されて1975年に発行されたワシントン条約。
これは絶滅してしまう恐れがある動物、及び植物を、輸出する国とされる側の国との間で協力して量を制限し、その種類を守っていくための国際的な条約です。
その動植物がもともと棲んでいる・生えている国からそれらを出しすぎないようにするということです。
身近な動植物も実はワシントン条約対象!
ヨーグルトに入れて食べることも多いアロエ。実はアロエもアロエベラのみが対象になっていないだけで、あとの種類はワシントン条約対象の植物です。
その他、トラ、ゴリラ、ゾウやカワウソ、ジャイアントパンダやライオンなど動物園でおなじみの動物たちなども該当しています。
また、サボテンの仲間や、今や100円ショップなどでも見かけるエアープランツの仲間なども種類によっては対象となっています。
繁殖させたスッポンモドキは爬虫類・熱帯魚店で買える
人の手で繁殖させたスッポンモドキたちは爬虫類や熱帯魚などを扱うお店から買い取ることができます。今では流通数が減った貴重な種類ですから、見かけたらそれこそが一期一会と言えるかもしれません。
スッポンモドキの価格はベビーでも1万、アルビノでは200万も
スッポンモドキは保護による輸入の制限が決まる前は非常に安価にやり取りされていたようですが、現在では小さな子でも1万円代はします。
アルビノだとこんな姿!