こげんたちゃんを襲った残酷な事件(福岡猫虐待事件)!世間を動かしたネットの声

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松原被告は、逮捕後の取り調べにおいて猫の殺害を認めました。そして、9月30日に、福岡地裁において裁判が開始されます。この裁判に際しては、事件への高い注目度に加え、ネットによる呼びかけもあって、数多くの人が傍聴に訪れました。初公判では100人、判決時には60人以上が傍聴したと、新聞は伝えています。

10月21日に下った判決は、動物愛護法違反での有罪です。ただし、多くのウェブサイトにより顔写真や住所などの個人情報が流された松原被告は、すでに社会的制裁を受けているみなされました。これにより、減刑措置が取られ、最終的な刑罰は、懲役6か月・執行猶予3年となります。

「こげんた」とは亡くなってからつけられた名前

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事件の犠牲となった一匹の猫は、本来受けるべきはずもなかった苦痛を与えられ、無残に殺されました。ネット上で事件の一部始終を見守り、事件解決のために活動してきた人々、あるいは、彼らの努力によって事件を知り、その思いに共感した人々にとって、この悲しみは深いものです。

事件は終息しましたが、ネットユーザーの間で、犠牲となった猫への追悼の声は上がり続けました。中でも、いち早く事件にスポットを当て、その成行きと犯人像を追っていた「探偵ファイル」というサイトは、身寄りのなかったこの猫のためにペット葬を執り行いました。「こげんた」という名前はこの時に付けられます。

僧侶による戒名

探偵ファイルの調査によって、犠牲となった猫が名前のない野良猫であることがわかります。サイトの運営者は葬儀をあげる際、僧侶に猫の戒名をつけてもらいました。それが、「こげんた」という名前です。この名前は後に続く他の追悼サイトでも使われ、定着するに至りました。

こげんたちゃん事件後、松原被告は今!

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松原潤被告は有罪の判決を受けつつも、執行猶予を与えられました。その非道な行いと併せて、名前や顔写真、住所などの個人情報が不特定多数の人間に公開された彼は、実社会でその後、どのような人生を送ったのでしょうか。

実家に引き戻された被告

福岡で事件を起こした松原被告は、その後広島県の実家に引き戻されたとのことです。裁判が終了した後、探偵ファイルは松原被告と連絡を取り、ネットで謝罪するように促しました。その答えは「前向きに考えている」というものだったそうですが、その後しばらく松原被告に関する情報は途絶えました。

それから後、思わぬ形で彼の近況が伝えられます。事件から7年余り経った2009年9月13日、広島市の住宅で爆発が起こり、34歳の男性が重傷を負いました。この男性は、自宅でなんらかの薬品を熱するか火をつけるかして、事故を起こしました。この男性こそが、こげんたちゃん事件の松原被告であると言われています。

今も続く社会的制裁の痕

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こげんたちゃん事件は、過去の動物虐待事件に類を見ないほど、多くの人に衝撃を与え、人々の犯人に対する怒りも大きいものでした。それ故に、この事件は闇に沈むことなく、その後も類似の事件が起こるたび、度々取沙汰されています。

そして、こげんたちゃん事件が取り上げられる度に、同時に上げられるのが、犯人の情報です。松原潤の名前と顔写真は、彼の犯した非道な行いと併せて、現在もネット上で晒され続けています。彼の生い立ちや実家の住所、家族の名前までもです。彼に対する制裁は、今なお終わっていないと言われています。

こげんたちゃん関連書籍出版へ

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この事件の特徴の一つは、有志によるウェブサイトが、事件を受けて次々と立ち上がったという点であることは、先に挙げた通りです。そのようなサイトを中心として、情報公開や、署名活動が展開されました。事件を世間に認知してほしい。犯人を正しく罰してほしい。ウェブサイトの多くは、そのような目的の上で作られたことは確かです。

しかし、サイトを立ち上げた人々や、彼らに賛同した人々の思いの根底にあったのは、残虐行為の被害にあった、一匹の猫への哀悼の気持ち、そして、二度とこのような痛ましい事件が起こらないでほしいという願いでした。彼らのそんな思いが集まって出来上がった本があることを、あなたはご存知ですか?

「Dear,こげんたーこの子猫を知っていますか?」

Dear,こげんた―この子猫を知っていますか?

ディルレヴァンガーによる忌まわしい投稿があった日から1か月ほど後、まだ松原被告が書類送検にとどまっていた頃の6月12日に「Dear,こげんた」というサイトが立ち上がりました。事件の広報活動や、犯人の逮捕を求める署名活動の中心となった場所です。このサイトでは、裁判が終わった後も、動物虐待の問題を訴える活動をしています。

そんな「Dear,こげんた」の活動記録、運営者の思い、そしてサイトに数多く寄せられたこげんたちゃんへの追悼文が、本にまとまられて出版されました。それが「Dear,こげんたーこの子猫を知っていますか?」です。「命の意味を考えさせられた」「読み終わった後、心に温かいものが溢れた」読者からはそのような声が上がっています。

犯行の舞台となるインターネット

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現代社会はインターネットの普及により、不特定多数との交流、コミュニティへの参加が可能となり、同時に個人が情報発信や自己表現を簡単に行えるようになりました。こげんたちゃん事件は、そのような社会状況の正の側面と負の側面が一体となった事件です。

ネット上で集った人々が、一致団結して犯人を追い詰め、司法を動かしたという点は、ネット社会の正の側面といえるでしょう。一方で、ネット掲示板は犯人が犯行を披露する舞台ともなってしまいました。こげんたちゃん事件のように、犯罪行為を堂々とネット公開する事件は、度々起こってしまいます。

掲示板での犯行予告

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2ちゃんねるをはじめとする掲示板サイトが、ネットコミュニティとして台頭した2000年代から、これらを使って犯罪を予告するという行為が多発し始めます。多くは予告のみで終わり、脅迫罪や営業妨害罪を問われるにとどまりましたが、中には、犯行を実行に移し、犠牲者が出たり、世間に大きな影響を与えた事件も発生しました。

西鉄バスジャック事件

2000年5月3日、当時17歳の少年がバスジャックを行い、2人が負傷し、1人の女性が殺害された事件です。犯人の少年は事件当日、2ちゃんねるに「佐賀県佐賀市17歳…」というスレッドを立て犯行予告を行いました。その時のハンドルネームから「ネオむぎ茶事件」とも呼ばれています。この事件の詳細はこちらの記事をご覧ください。

秋葉原通り魔事件

2008年6月8日に、東京都秋葉原の歩行者天国で起こった無差別殺傷事件です。この事件では10人が負傷、7人の命が奪われました。犯人である加藤智大被告は事件当日、携帯サイトの掲示板で「秋葉原で人を殺します」というタイトルでスレッドを立て犯行を予告しました。

SNSでの悪ふざけ

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TwitterなどのSNSが普及すると、さらに幅広くネットで情報発信をする人が増えました。犯行予告で取り締まられるケースは、なおも数多く発生しますが、より注目されたのは、犯罪行為や度を越えた悪ふざけをする様子を自ら公開する事件です。Twitterでこのような投稿をすることは、「バカッター」とも呼ばれ、問題となりました。

「バカッター」の事件

2010年代に入って以降、いわゆるバカッターの事件が頻発します。店舗のアイスケースに入った様子を撮影したり、店員に土下座を強要したり、飲食店の食品で遊んだりと、殺人などの重大な犯罪行為こそほとんどありませんが、企業、店舗、個人などに少なからぬ損害を与える事件でした。

投稿者本人も、懲戒や退学、賠償や刑事訴訟など、大きな報いを受けることになります。事件の多くのパターンが、犯罪とは思わず、または大きな騒ぎになるとは思わずに行為に及んだもの、もしくは、個人が特定されることはないだろうと考え、投稿したものだったと言われています。

動物福祉と動物愛護と動物の権利という考え方

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こげんたちゃん事件とは、一匹の猫が虐待され、殺害された事件です。多くの人間がその行いを許されないものと考え、犯人を野放しにしまいと奮起します。その結果この事件は、日本の動物虐待事件としては過去例を見ないほど世間に影響を与えるものとなりました。

こげんたのために立ち上がった人々は、何を守ろうとしたのでしょうか?松原被告という人間には、何が足りなかったのでしょうか?彼の犯した罪は、正しく裁かれたのでしょうか?人間が動物をいつくしむとはどういうことなのか、紐解いていきます。

なぜ動物を思いやるのか?

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人間が動物を思いやる理由をあえて定義するとしたら、「動物福祉」「動物愛護」「動物の権利」という3つの考え方があげられます。いずれの考え方にも共通するのは、動物に苦痛や恐怖を与えるべきではないとするところです。

動物福祉の思想と動物の利用

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動物福祉の考え方とは、人間と動物が共存するにあたり、動物になるべく苦痛やストレスがないようにするべきであるというものです。この考え方は、人間が動物の生き死にや、自由を握ることを否定はしません。実際に人間は、家畜や愛玩動物や実験動物などとして、動物を利用しています。

しかし、動物も生きている間は幸せでいてほしい。殺す必要があるときは苦しまないようにしてあげたい。動物福祉は、そのような思いに基づいた思想です。

日本独自の動物愛護の精神

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動物愛護という思想は、日本で生まれた特殊なものです。動物はかわいがるべきものであり、かわいそうな目にあわせてはいけないというのが、その考え方です。人間の都合で動物を利用したり、殺したりすべきではないという主張が、動物福祉と異なります。このような思想は感情的過ぎるという、批判もまたあります。

動物の権利とは

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動物の権利という概念はさらに革新的です。これは「動物にも人権と同等の権利がある」という考えに基づいた思想です。つまり、「人間ではないからという理由で、動物を飼育したり殺したりすることは許されない。それは、白人ではないからという理由で、黒人を奴隷にしたり殺したりすることと同じ罪である」という考え方です。

動物の命と向き合うこと

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こげんたちゃん事件では、誰の所有物でもない野良猫を虐待したことを、多くの人が重い罪だと考え、犯人が罰せられることを望みました。私たちは様々な状況で動物が殺される現場に立ち会ったり、あるいはその現実を知った時、どのように向き合うべきかを考えます。その一例として、こちらの記事も併せてご覧ください。

日本中が胸を痛めたこげんたちゃん事件

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こげんたちゃん事件は、人間のおぞましい一面を世に知らしめ、多くの人にショックを与えました。しかしその一方で、人や社会が動物の命といかに向き合うべきかを問う出来事だったと言われています。インターネットは惨劇の舞台となりました。しかし同時に、一般の人々の正義の心を力にする場となり、事件を解決に導きました。

一匹の猫の犠牲が、大勢の人間の心を動かし、その思いがネットを介して社会を動かすという結末に至った「こげんたちゃん事件」は、現代社会を象徴する事件だったといえます。

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