オオミズアオとは
オオミズアオとは、ヤママユガ科に属する蛾の一種です。大振りなサイズでありながら一般的な蛾の不快イメージとは一線を画し、むしろ作り物のように繊細で思わず近づいて見入ってしまうほど美しい姿をしていることが特徴です。
淡い緑の色の翅とモフモフとした体毛を持つ
オオミズアオは多色系の鮮やかな色彩を持つ蝶ともまた違った見た目です。翅の色は全体に淡い緑色を帯び、独特の色合いは宝石の翡翠に例えられることもあります。また、体は真っ白なフェルトのように濃密な毛で覆われていることも特徴で、昆虫とは思えない風合いが人気のヒミツにもなっています。
美しい見た目から密かな人気を誇る
独特の風貌は見た者をハッとさせ、思わず見入ってしまうほどミステリアスな雰囲気を称えています。スマホを使っていつでも簡単に写真や動画が撮影できるようになった現在ではSNSを通じて人気が拡散しており、「オオミズアオ綺麗」とか「モフモフ」などのハッシュタグで検索することもできます。
オオミズアオは絶滅危惧種ではない
初見では、不快というより珍しさの方が先に来るオオミズアオ。実は都会でもその姿に遭遇できるチャンスがあることも知られています。中にはこの種の見た目だけに注目して絶滅危惧種とする情報もありますが、蛾の仲間では個体数も多いのが現状で、種の保存が危ぶまれているとまでは言えません。
オオミズアオの生態とは?名前の由来は?
さてここからは、オオミズアオの生態や不思議な名前の由来について詳しく解説していきたいと思います。ぜひ一度その姿に出会ってみたいという方のために予備知識となり得る情報を集めてみました。
生息地は北海道から九州まで!極東アジアにも生息
オオミズアオは沖縄を除く日本全土に生息している種で、日本以外では中国大陸や朝鮮半島など東アジアの一部でみられることもわかっています。またこの種は、平野部だけでなく比較的標高の高い場所でも生きられるたくましさを備えています。
大きさは?翅を広げると10cm超えも
オオミズアオの姿に圧倒される理由のひとつは成虫の翅を広げたときのサイズでしょう。活動的な蝶と違い昼間は葉陰などにじっと止まっていますが、一般に10㎝前後の個体が多く蛾の仲間の中でも存在感があります。
名前の由来とは?学名は女神の名前?
学名はActias aliena、和名では大水青です。当初は「Actias artemis」の学名でしたが、2007年以降純日本産のオオミズアオを示す種として訂正されています。ちなみにartemis(アルテミス)はギリシャ神話に登場する月の女神のひとりで、夜行性と妖艶な魅力を持つ蛾の姿にリンクしたものと推察されます。
ここを見れば一目瞭然!オオミズアオの雄と雌
自然界に生きる動物や昆虫たちは、雄と雌で全く違った印象を与える種類も珍しくありません。では、そもそも姿かたちが特異なオオミズアオではどんな違があるのでしょうか?ここではその見分け方のポイントをご紹介します。
雄のオオミズアオ
蛾の触角は髪をとかす櫛のような形をしていますが、中でもオオミズアオの雄の触角は象徴的で葉っぱの葉脈か羽毛に例えられるほど立派で美しい形になっています。また後翅の下が尾っぽのように長く突き出ており、雌に比べ翅全体の色合いが淡い点も見分けのポイントとなります。
雌のオオミズアオ
一方の雌は触角の幅が狭く後ろ翅の尾も短いなど雄に比べ明らかに控え目ですが、成虫の翅の色は雄より濃い緑色をしているのが特徴です。また、運よく産卵期に遭遇した場合は産卵管の膨らみの程度によって雌であると判別できます。
オオミズアオの幼虫について紹介!毒性はある?
あまたの昆虫好きにとって、好奇心を掻き立てられるのは成虫の姿だけではないでしょう。ここではオオミズアオの幼虫の見た目や気になる毒性の有無、さらには発見しやすい時期についても触れていきます。
幼虫はトゲトゲとした見た目のイモムシ
ペールグリーンの美しい成虫からは想像できない姿をしているのが幼虫です。ギザギザした体の節はアロエかサボテンを彷彿とさせるもので、毛ムシよりイモムシに近いとは言えビッグサイズで結構目立ちます。また成長の過程が体の色の変化でわかることも特徴です。
毒の心配は不要
体の節のとがった部分にはそれぞれトゲのような毛が密集して生えていますが、一般的な蛾の幼虫のように毒性を持つものではありません。しかし、過去には毛に触れたことでかぶれたり発疹が出たなどの報告例もありますので肌がデリケートな方はむやみに触れない方がいいでしょう。
幼虫はいつ見られる?時期や場所を紹介
オオミズアオの幼虫は4月頃から8月にかけて観察することができます。幼虫が好む種類の樹木の葉を狙って探せば意外と容易に発見でき、わざわざ野山へ出かけなくても街中に植えられた木々で遭遇できる可能性は十分にあります。
オオミズアオが卵から成虫になるまで!寿命はどれくらい?
雄と雌の交尾によって繁殖するオオミズアオですが、卵から美しい成虫になるまでにはどのくらいの期間を要するのでしょうか?またここでは、成虫の個体が短命だと言われる理由についても解説します。
卵は10日ほどで孵化
オオミズアオは一度の産卵で数十個の卵を産みます。直径2mmほどの大きさで、ひとつひとつにウズラの卵にも似た模様が付いています。孵化までの時間はおよそ10日ほどですが、中には無精卵が含まれていることもあります。
2齢ほどで緑色に!終齢幼虫になると7cmほどの大きさに
孵化した後の幼虫の体は黒褐色から濃いオレンジと色を変え、2回目の脱皮をする頃には鮮やかな緑色になります。また蛹になる前の段階で最も大きく成長する終齢期では成人男性の手指に匹敵する長さに達します。
体の色に茶色が混じってきたら蛹に?繭を作り羽化に備える
幼虫の体が緑から茶色に変化するといよいよ蛹の時期を迎える合図です。蛹はやがて繭を作り羽化に備えますが、そのタイミングは蛹のみぞ知るといったところで詳しく解明されていません。ただし、ひとたび蛹になるとそのまま越冬することが可能で、状況により羽化までの時間は半年以上から1年近くかかるものと推定できます。