「生きた化石」と称されるシーラカンスや肺魚、ラブカなど。魚料理は日本人にとっては身近なものですから、一度古代魚を食べて味を知りたいという人は多くても、実際に食べたことがある人は少ないのではないでしょうか。けれど、決していないわけではないんです。
シーラカンスは『食べられない魚』
現在、シーラカンスはワシントン条約で売買を禁止されていますが、過去にこの魚を食用としていた人々がいます。そう多くは獲れないとは言え、貴重な食糧であったシーラカンスをかつての人々は「ゴンベッサ」と呼んでいました。意味は「食べられない魚」…これだけでもどれだけ不味いかが想像できることと思います。
キャビアの生みの親
正確にはサメに見た目が似ているだけでサメではない、キャビアフィッシュなどとも言われるチョウザメも古代魚の一種です。しかし、シーラカンスと大きく違う点はとても美味しいというところでしょう。「ロイヤルフィッシュ」という二つ名を持つほど、魚卵だけではなく魚肉も美味なんです。
世界一大きい淡水魚の味や如何に
ピラルクはアマゾン川流域に生息する淡水魚です。最大サイズは5mとも言われ、それ故に住民にとっては貴重な食糧でした。祭りの際にはメインディッシュになるほど美味とも言われています。食べるところも多く、美味ともくれば食糧としては最高だったことでしょう。
古代魚の乱獲は禁止
乱獲により数を減らしている古代魚は当然乱獲は禁止されています。美味しかろうが不味かろうが、絶滅は避けなければなりません。「古代魚だから不味い」というのは偏見ですが、古代魚たちがこれからも健やかに生き延びてくれれば、その味を確かめる日も来るかもしれません。
肺魚の主な種類
現在、我々が目にする事のできる肺魚は三属六種に分類されています。「オーストラリアハイギョ」「ミナミアメリカハイギョ」「アフリカハイギョ」それぞれ違った特徴を持つ肺魚たちをご紹介します。
オーストラリアハイギョ
学名はNeoceratodus forsteri(ネオケラトドゥス フォルステリ)。三属六種の中でも唯一ケラトドゥス目に属しています。他の肺魚が二つ持っている浮袋を一つしか持たず、肺呼吸への依存度も低い種類です。最大で1.5mまで成長し、60~100年生きる長生きな魚です。
ミナミアメリカハイギョ
学名はLepidosiren paradoxa(レピドシレン パラドクサ)。三属六種における一属一種の魚です。最大1mに成長しますが、他の肺魚と比べると穏やかな性格で、別種の魚と一緒の水槽で飼うこともできます。寿命は10年程度とオーストラリアハイギョと比べると短いです。
アフリカハイギョ
肺魚は三属六種。その内四種がこのアフリカハイギョに属します。その中の一種であるプロトプテルス・アンフィビウスは最大50cm程度と比較的小さい身体の肺魚で、他の肺魚の半分程度の大きさまでしか成長しません。様々な模様やカラーを持ったプロトプテルス・アネクテンスという個体が存在しています。
肺魚に天敵はいる?
自然界は弱肉強食です。自身よりも弱い者を食らい、血肉として、命を繋いでいきます。肺魚が他の生物にとって天敵となっているように、肺魚にも天敵が存在します。一体どんな生き物が肺魚の天敵となるのでしょうか。
ハシビロコウなどの鳥類
天敵の代表格である「動かない鳥」ことハシビロコウは肺魚が呼吸をするために水面へ上がって来る瞬間を待ち伏せ、その大きなクチバシで肺魚を捕らえて離しません。また、ハシビロコウの他にサンショクウミワシが肺魚を捉えようと目を光らせています。
人間
人間にとっての肺魚は食糧の一つであり、肺魚にとっての人間は自らの命を脅かす天敵です。雨季を待つ間、泥の中に潜む肺魚を掘り出して食べるのは人間くらいなものでしょう。現在は絶滅を防ぐために様々な規制が敷かれています。
肺魚を飼育しよう①餌
貴重な古代魚である肺魚は保護の対象ではありますが、観賞魚として飼育することも可能な上、その変わった特徴から人気があります。肺魚の魅力を真の意味で理解したいと思う方は、やはり家族の一員として迎えてみてはいかがでしょうか。
タニシ、小魚、エビなど
肺魚の顎は「歯版」と呼ばれる歯と顎が合体したものであり、貝殻を砕いてしまえる程頑丈な物です。なのでエビやタニシなどの甲殻類・貝類が主食となり得ます。小魚を与える際にはきちんと捕食できるようにヒレをちぎってから与える必要があります。
胃がないためよく噛んで飲み込む
胃袋が発達していない肺魚は獲物をしっかりと咀嚼します。頑丈な顎を使ってもぐもぐと食事をする様子はどこか人間らしく親近感を覚えることでしょう。唾液を絡ませながら吐き出し、吸い込みながら咀嚼するという器用なことを繰り返し行っています。
肺魚を飼育しよう②注意点
数多くいる観賞魚の中でも飼育しやすいとの評価を得ている肺魚ではありますが、やはり生き物を飼う以上気を付けなければいけないことがいくつかあります。肺魚が心地良い環境を、飼い主は整えなければいけません。
ヒーターは必須
原産地が非常に温暖な国である肺魚にとっての日本はとても寒い国です。なのでヒーターを取り付けて水温を適温にする必要がありますが、ヒーターに触れた肺魚が火傷をしてしまうこともあるので、取り扱いには十分注意が必要です。
空気を吸えるようにしておく
肺魚はエラ呼吸ではなく肺呼吸です。水槽の上部に隙間を残しておかないと瞬く間に窒息してしまいますが、水槽の蓋は固定しておく必要があります。肺魚は力が強く、きちんと固定されていないと押しのけて外に出てしまうのです。
肺魚は危険な魚?
やはり生物である以上、肺魚には危険な側面も。現代まで生き抜いてきたその姿であるからこそ、ついうっかりと我々人間が怪我をしてしまうことがあります。魅力的な生き物である肺魚ですが、その危険性もきちんと理解しておいた方がいいでしょう。
頑丈なアゴ
主食である貝類を食べるために肺魚が用いる方法はシンプルに殻ごと噛み砕くことです。器用に中身だけを食べることはできません。殻を持つ生物自身の身を守る盾である殻を噛み砕くことができる肺魚の顎が人間の指をとらえてしまったら。最悪の場合は指を失ってしまうこともあります。
逃走の危険
肺魚はとても力が強く、驚いた衝撃で水槽から飛び出してしまうこともあります。肺魚自身は肺呼吸という特徴故に水槽の外でも多少生きることは可能ですが、肺魚が飛び出した衝撃で水槽が壊れてしまうこともあります。脱走対策は肺魚と人間、お互いのためにきちんと行わなくてはならないでしょう。
肺魚の値段は?どこで買える?
ここまでこの記事を読んでくださった方の中には「自分も肺魚を飼ってみたい!」と思った方もいることでしょう。現在、肺魚は日本でどの程度の値段で取引をされているのか?それをご紹介します。
5000~数万円
肺魚は種類によっても値段が変わりますが、前項で紹介したオーストラリアハイギョは特に高価で、20~50万が相場であるとも言われています。ミナミアメリカハイギョは比較的安価で5,000以下の場合もありますが、肺魚は人気で入荷してもすぐに売り切れてしまう事が多く、思い切りが大事になってきます。
ペットショップで購入可能
現在は肺魚の人気に伴い、肺魚を取り扱うペットショップも増えています。ペットショップで取り扱っているのはまだまだ小さいベビーであることが多く、これから成長することも考えなくてはなりません。
「生きた化石」肺魚を飼ってみよう
不思議な生態と可愛らしい顔立ち。よく観察することで気づくことのできる魅力に魅了されてしまう人は後を絶ちません。「生きた化石」というロマンを体現する肺魚は身近に置いて飼育することも可能な親しみやすい存在と言えるでしょう。
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