基本的にヒグマは臆病で警戒心が強く、人が怖いため人を避けて行動しています。そんなヒグマが人を襲う時は、捕食ではなく防衛が目的です。今回のように自分が漁っていたザックを盗られたことにより、排除しなければ自分の食料が盗られてしまうと判断されてしまったからなのです。
対処を間違えなければ襲われることはほとんどありません。子熊が親とはぐれてしまい、人に保護されるケースもあります。実は軍に保護され、ポーランドで英雄とされたヒグマもいるんです。興味がある方はぜひご覧ください。
福岡大学ワンダーフォーゲル部は食べられた痕跡がない
ヒグマは敵と判断した人を襲いますが、基本的に人の肉は食べません。事実、今回射殺されたヒグマの体内を調べたところ、福岡大学ワンダーフォーゲル同好会の3人を食べた形跡はありませんでした。なので荷物を盗られたことによって危機感を覚え、敵として認識したため排除しようとしただけだったのです。
人肉を覚えたヒグマは食料として人を襲う
ただし!なんらかのきっかけによって、人肉を口にして味を覚えてしまったヒグマは例外として執拗に人を襲うようになります。例として「三毛別羆事件」という事件を参考にします。この事件ではヒグマが女性捕食したため味を覚えてしまい、その後ヒグマは民家に襲いかかり、女性を生きたまま捕食しまうという事件が起きてしまいました。
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ヒグマは最強!ヒグマのパワーを検証
今回の「福岡ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」では、若いとはいえ、18~20歳の男子学生がなすすべもなく襲われてしまったことから、ヒグマはかなりの強さを持っていることが分かります。ここで、そんなヒグマの具体的な身体能力について紹介していきます。
ヒグマが走るスピードは時速50km以上!
まず、その足の速さに焦点をあてていきます。ヒグマが走るスピードはなんと時速50kmであり、最高で時速60kmにもなります。もはや車と同等の速度で走ることができることがわかります。なので、人間がどれだけ必死で走って逃げたとしても、あっという間に追いつかれてしまうのです。
パンチ力は2t以上!
次に、ヒグマのパンチの強さについてですが、その威力はなんと2t以上です!2tといわれても、ピンとこない方が多いかと思われますが、そのパンチ一撃で人間の首がもげて即死します。もしくは数メートルほど吹き飛び体中の骨が粉砕骨折してしまうため、一命をとりとめたとしても再起不能になってしまいます。
泳ぎも木登りも得意
さらに、ヒグマがもっている身体能力として、泳ぎや木登りも得意ということもあげておきます。なので、逃げる時に水辺に逃げる・木に登ってやり過ごすといった方法は完全に無意味です。こちらもあっという間に追いつかれて襲われてしまいます。
ここが怖い!ヒグマの性質
ここまでで、ヒグマの身体能力の高さについてお分かりいただけたと思います。しかし、ヒグマの怖さはそれだけではありません。その性質をしっかりと理解しておかないと、実際に遭遇してしまった場合に「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」のように対処を間違えてしまう可能性があります。
ヒグマは火を怖がらない!
ヒグマはクマの中でも珍しく、火を怖がりません。なので焚火を焚いてクマよけをするという対処法は、ヒグマにとっては全くの無意味です。過去の実験によると、ヒグマは火を怖がらないどころかむしろ火に近寄って行くような動作もみせていますので、火を焚いてもむしろ逆効果になり、ヒグマが寄ってきてしまう可能性があります。
ヒグマの執着心はストーカー以上
ヒグマの執着心は非常に強く、一度狙われたら気がそれることはほとんどなく、とことんまで追いかけられます。事実、今回の「福岡ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」でも、延々と追いかけられています。過去に別のグループのヒグマ事件でも、13時間もの間追われ続けてしまったという記録もあります。
ヒグマに悪天候は関係なし!
ヒグマは天候にも影響されないため、たとえ悪天候でも変わらず行動することができます。「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」でも、濃霧の中追いかけてきていましたし、「三毛別羆事件」では雪の中襲われました。基本ヒグマは冬ごもりをしますが、まれに冬ごもりをしないヒグマもいますので、冬の間でも注意が必要です。
ヒグマの生活【春夏秋冬】
では、ヒグマは普段どのような場所で行動することが多いのでしょうか。ヒグマは雑食で、季節ごとに食べるものが変わるので、それに伴って生息する場所や行動範囲が変わってきます。それを知らずに山に入り、ヒグマのここで、ヒグマの生活についてまとめましたので、紹介していきます。
ヒグマの生活【春】3~5月
春は冬ごもりが終わったあとの、活動期に入ります。冬ごもり中は絶食していたので、柔らかい草(フキ・ミズバショウ・セリ科の草など)やドングリなどを探して食べます。この時期は草を中心に食べているので、山菜取りに出向いた人と目指す場所が同じになってしまいます。なので、山菜取り中にヒグマに遭遇してしまう事故が絶えません。
ヒグマの生活【夏】6~8月
夏は繁殖期です。雄が雌を探して動き回ったり、子供が親離れして行動範囲を広げる時期でもあるので、広範囲にヒグマが生息している時期です。基本的には蟻や、フキなどの草を食べます。木の実などがまだ実ってない時期なので、ヒグマにとって食べるものが少なくなってしまいますので、農作物を荒らすヒグマも出てきています。
ヒグマの生活【秋】9~11月
秋は再びの活動期です。冬ごもりを控えているため、脂肪や栄養を蓄えるためにたくさんの食料を食べます。主にドングリなどの木の実や山ブドウなどの果実類、サケやマスなどの魚類もたべます。この時期は、ブドウ狩りやキノコ狩りに出向いた人との遭遇事故が多発しています。
ヒグマの生活【冬】12~2月
冬はヒグマにとっての餌がなくなるため、冬ごもりをします。冬ごもりは冬眠ともよばれ、穴などにこもり、排せつもせず絶食してすごします。雌は穴の中で出産をし、子グマと冬ごもりします。冬眠とよばれていますが、眠っているわけではなく完全に起きています。冬までに蓄えた脂肪を少しずつ消費しながら冬をすごすのです。
冬でも油断できない!「穴持たず」
基本的にヒグマの多くは冬ごもりをしますが、まれに穴を用意できなかったなどの理由で冬ごもりをせずに冬でも行動しているヒグマがおり、「穴持たず」といわれています。「穴持たず」のヒグマは周りに食料がないため、飢餓状態で凶暴性が増しており、非所に危険です!「三毛別羆事件」を起こしたヒグマも「穴持たず」でした。
ヒグマの対処法その①「まず出会わないことを心掛ける」
ここで、ヒグマに対する対処法をいくつか紹介していきましょう。これらを守ることによって、生存率がかなり上がります。まず初めの対処法として、まずヒグマに出会わないことを心掛けましょう。当たり前のように聞こえますが、ヒグマの性質などをしっかり理解することで遭遇率を減らすことが可能です。
自分がこの場にいることをヒグマに教える
前述したように、ヒグマは基本的に臆病です。なので、人がいると分かっている場所には近寄りません。なので、自分がこの場所にいるとヒグマに知らせるために、口笛を吹く・手をたたくなど定期的に音を出すことが大事です。話し声でも効果がありますので、誰かとすれ違った時に挨拶をするというのもクマ対策として重要なのです。
鈴やラジオはあまり効果がない!?
クマよけの鈴というものがありますが、近年この鈴の音に慣れてしまったヒグマがおり、鈴を身につけていたのにヒグマに襲われてしまったという事故もあります。ラジオは雑音が多いため周りの音と混同されてしまい、音として判断されない可能性があります。私たちも周りの音が聞こえづらく、ヒグマの接近に気づけないリスクもあります。
ヒグマが居そうな場所は避けて行動する
ヒグマが出没しそうな場所を避けましょう。春~冬にかけてのヒグマの行動や食べるものについて前述していますので、そちらを参考にしていただき、その付近には近寄らないことが大切です。特に夏はヒグマの行動範囲がかなり広くなっていますので、食料のありそうな場所は避け、周りに細心の注意を払いながら行動しましょう。
動物の死体を見つけたらすぐに離れる
ヒグマは草や木の実、魚など以外に動物の死体も食べます。シカなどの大きい動物の場合は何回かに分けて食べるためヒグマはその場に留まります。動物の死体を見つけた場合はヒグマが近くにいる可能性が高く、食べかけの場合は既にヒグマの所有物になっている可能性があるので、死体を見つけても近寄らず、すぐさまその場所を離れましょう。
ゴミや食べ物を放置しない
ヒグマは人の食べ物も喜んで食べます。放置されている食べ物を食べてしまい、味を覚えてしまうと再び食べるために人がいる場所にに入り込むことが多くなってしまいます。それによって人に対する警戒心が薄れてしまい、人を恐れなくったヒグマが人を襲ってしまう事件を起こしてしまいます。絶対にゴミや食べ物を放置しないようにしましょう。
テントのそばで食事をしない
ヒグマは食べ物のにおいにも反応します。食事を食べた後の残り香につられて夜中の間にヒグマがテントまで来てしまったという事件もあります。なので絶対にテント内で食事をとってはいけまん。少なくともテントから100m以上離れた場所で食事をし、食べ物のくずやゴミなどが残らないように片付け、速やかにテントに移動しましょう。
ヒグマの対処法その②「もし遭遇してしまったら」
ヒグマに遭遇しないための対処法を紹介しましたが、どれだけヒグマに遭遇しないように対策をしたとしても、残念ながらふいに遭遇してしまうことも少なからずあります。次の対処法として、ヒグマに遭遇してしまった場合にどのような行動をとってはいけないのか、紹介していきます。
まずは冷静になり、大声をださない
最初の対処法として、まずは冷静になることが大切で、決して悲鳴をあげてはいけません。遭遇したことによって私たちは当然驚きますが、ヒグマも同様に驚いています。その時に大声をだされると、ヒグマは不快に感じ、敵として認識されてしまいます。距離が近い場合は目をそらさずに、自分が人であると教えるために話しかけるのも有効です。
絶対に走らない
ヒグマの本能で速く動くもの、とくに自分に背を向けて走るものを獲物と判断し、追いかける習性があります。背を向けるのも危険です!ヒグマの方を向いたまま目をそらさずに、ヒグマに話しかけつつゆっくりと後ずさりして、少しずつ離れましょう。ヒグマを刺激をしないために、両手もゆっくり上げ、敵意がないことを教えましょう。
死んだふりは逆効果
「クマにあったら死んだふりをしよう」という言葉を聞いたことがあると思います。ですが、ヒグマに死んだふりは完全に逆効果です!理由は、ヒグマが死んだ動物を食べる習性があるからです。実際にヒグマの前にマネキンを置き死んだふりの実験した記録もあり、逆に興味をひいてしまい近づかれ、食料だと判断されて襲われてしまうのです。
福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件以外のクマ獣害事件
クマによる悲惨な事件は「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」だけではありません。ヒグマだけではなく他のクマによる事件も起こってしまっています。今回、その中から「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」にならぶ歴史的に悲惨な事件を3つほど紹介します。
国内史上最悪のヒグマ事件「三毛別羆事件」
前述でも少し触れましたが、1915年12月北海道三毛別六線沢にある民家で起きた事件です。「穴持たず」のヒグマは食料を求めて民家を襲撃し、男児が死亡し女性が捕食されてしまったことが始まりです。人の味を覚えたヒグマは別の民家を襲い、なんと2日で6人死亡・3人重傷、そのうち2人は捕食されてしまうという悲惨な事件でした。
実況中継?ペトロパブロフスク羆事件
2011年8月シベリアの東部にあるペトロパブロフスクで起こりました。被害者はキャンプ旅行をしていた2人の親子です。ヒグマは川原で継父の首を一撃で折り、娘はヒグマに追いつかれてしまい捕食されてしまいます。この時、捕食されながら母親に電話で助けを求めており、娘の電話の向こうでヒグマの鼻息や捕食音が聞こえていたといいます。
乗鞍クマ襲撃事故
2009年9月岐阜県高山市にある乗鞍スカイラインのバスターミナルで起こりました。この事件はヒグマではなく、ツキノワグマによって起こされれたものです。被害者は観光客男女9名が重軽傷を負いました。物産展の店員や環境保護センターの職員たちが、素手でクマに殴りかかるなどして気をそらしたため、奇跡的に死者がでませんでした。
背筋も凍る福岡ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件
いかがでしたでしょうか。「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」やヒグマについて詳しく知ることができたと思います。この事件はヒグマに対する知識がなかったために起きてしまった事件です。たとえ小型であっても絶対に侮ってはいけません!北海道の山へ向かう時はこの記事のことを思い出し、しっかりとした準備と心構えをしましょう。