日本の東北地方でみられ、主に盲目の女性が務めている呪術師のことを「イタコ」といいます。青森県の恐山のイタコが有名なので、何らかの媒体で名前を聞いたことがある人は多いと思います。イタコは、シャーマンのように妖精との交流は行わず、主に死者の霊を口寄せする呪術者のことを指します。
イタコは、口寄せの儀式を行う際には、儀式用の祭壇を用意してその前で特殊な呪文を唱えトランス状態になることで、自身に霊を降ろし、こちらも自分の意識が介在しない状態で伝えさせる方法で降霊を行います。
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祭りは集団でトランス状態になっている?
時節の折や祝い事の際に催されているお祭りは、誰もが一度は参加したことがあるはず。祭りは、身近に味わえる非日常的な行事であり、参加者全員の意思が高揚しているという特殊な場です。普段は物静かな人でも、ついついはしゃぎすぎてしまうという経験をしたかたも多いのではないでしょうか。
”雰囲気に呑まれる”、または”場酔いする”という言葉もある通り、集団での熱狂は一種の催眠的な要素を持っています。その熱狂的な盛り上がりにより、周囲の人間の興奮状態の相乗効果によって、集団的なトランス状態が引き起こされると言われています。
トランス状態の活用例
正しい手順を踏むことで、トランス状態は日常生活の様々なことに活用することが出来ます。最近では認知度も上がり、医療分野やスポーツ分野でも活用例がたくさんあります。リラックスし、集中力を高める必要がある分野ではすでに取り入れられている方法なのです。
トランス状態の活用例①リハビリテーション
活用例の1つとして、医療現場での「リハビリテーション」への活用があります。トランス状態における意識状態は、瞑想や禅を行うことで引き起こされるものによく似ています。そのため、怪我をした患部に意識が行き過ぎて、普通の動きがぎこちなくなってしまうことを防ぎ、より自然な状態でリハビリテーションを行うことができるとされています。
トランス状態の活用例②スポーツ
スポーツでは、その状況に没頭している「フロー状態」と、余計な情報を排除し極限に集中力が高まっている状態である「ゾーン状態」と呼ばれているものがあります。フロー状態は、あくまでも強い集中状態であり、ゾーン状態は余計な思考を絶ったトランス状態になっている状況を指します。
スポーツでは、誰もが強く勝ちたい、名声を上げたい、と強い欲を無意識に抱いてしまいます。ゾーン状態は、そういった欲から解放されて感情的にならず、また雑念に思いを巡らせることのない状態に精神を高めることによって、精神力を鍛えることが目的でもあります。
トランス状態になる方法
例としてあげた、一流のスポーツ選手やシャーマン、イタコになるなどはあまり現実的な方法ではありませんが、実はコツを掴むことで誰でもトランス状態になることができ、日々の生活に取り入れることができます。
トランス状態になる方法①寝る瞬間意識が消えないようにする
人間であれば誰しもが行う睡眠で「眠りに落ちる瞬間」のタイミングを活用すればトランス状態になることができます。つまり、うとうとしている状態です。考え事をしながらうとうとしているときに、不意に言葉に出てしまう経験はほとんどの人にあるのではないでしょうか。
その体の力が抜けて、だんだんと眠りに就いていく瞬間に意識が消えないように頑張ってみましょう。そうすれば、徐々に自分が寝ているのか、それとも起きているのかが曖昧な心地よい状態になります。その状態がトランス状態なのです。
トランス状態になる方法②瞑想する
正しい手順で瞑想を行うことでも、トランス状態になることが可能です。正しい瞑想には、リラックスした状態と高い集中力が必要です。瞑想中に集中しきれずに眠たくなってしまったり、考え事をしてしまうという人は、まず身体の疲れや心配事を取り除くことを優先してみましょう。
瞑想というと、座禅や胡坐を組んで腕を膝に乗せて、というイメージがあると思いますが、姿勢以外にも意識して行うべき手順がいくつか存在します。正しい瞑想のやり方については、別の章で詳しく説明していきます。
これももしかしてトランス状態?
今までは超常的な存在のせいで引き起こされていると考えられていた現象も、実は人間の意識状態が引き起こすトランス状態によるものかもしれません。この章では、2つの現象について人間の脳の働きの変化に関する観点から分析していきます。
もしかしてこれも?①狐憑き
「狐憑き」とは、錯乱した状態の人の精神の乱れが狐に憑りつかれたせいではないか、とされる精神症状の一種です。また、海外にも悪魔憑きと呼ばれる似たような症状がみられます。フィクションではありますが、映画「エクソシスト」の主人公などが、代表的な悪魔憑きのわかりやすい表現ではないでしょうか。
精神病が原因であることもありますが、狐憑きという状態が知識としてある場合、少しでも発症した症状が「自分は狐に憑かれたのではないか」と思わせ、トランス状態が引き起こされ症状を悪化させている可能性もあります。また、狐に関する民間信仰はたくさん存在しています。以下の記事では、「狐の窓」という伝承について詳しく説明しています。
もしかしてこれも?②チャネリング
「チャネリング」とは、人間が通常存在している次元とは別の高次元に存在している高位のものと意識をリンクさせ、それと交流しインスピレーションを受けたりする行為を指します。スピリチュアル的な観点からいうと、勘が非常に冴えていたり、ユニークな閃きをしている状態のことを指します。
また、先述したシャーマンやイタコの交霊術もチャネリングの一種とされています。超越したものと交流する、という点でトランス状態とよく似ています。チャネリングは、訓練することで意識的に行うことが出来ます。以下の記事で、やりかたや活用方法について詳しく解説しています。
健康効果も期待できる!瞑想のやり方
瞑想には、トランス状態以外にも心を落ち着かせて、冷静に物事が考えられるようになるというメリットもあります。落ち着いて状況に対処できずに焦り、余計なストレスを抱くことを防ぐことができます。また、成功体験により自信が沸き、ポジティブ思考に変化することで幸福感を感じられ、穏やかで心身ともに健康な生活を送ることができます。
瞑想のやり方①リラックスできる状況を作る
まずは、自分が一番落ち着けると思う環境を作ります。お香を焚いたり、部屋を暗くするなど、自分にとってベストだと思う状態を用意しましょう。聴覚に関しては、なるべく静かな状態が望ましいです。また、服装もゆったりしたものを選ぶと、よりリラックスした状態になることができます。体を締め付けるような服装は避けましょう。
瞑想のやり方②呼吸法を意識する
リラックスできる環境を作った後は、姿勢をまっすぐ伸ばして胸を開き、楽な姿勢で座ります。必ずしも床に座る必要はなく、椅子に腰かけても良いでしょう。腕は太ももに軽く乗せて置き、顔から下へ向かうように徐々に体の力を抜いていきます。
瞑想において非常に重要なのが「呼吸」です。瞑想中の呼吸は、鼻からゆっくりと息を吸い、再びゆっくりと鼻から息を出すように意識して行います。また、心の中で呼吸をカウントし意識が散ってしまわないようにしましょう。時間の目安としては、1分程度が良いとされています。長く行うより、習慣化することを意識しましょう。
トランス状態を上手に生活に取り入れよう
トランス状態は、人の通常状態である緊張から意識を解き放つ働きがあります。意識して普段の生活にトランス状態を取り入れることが出来れば、常にリラックスし在るがままの自分で生きることが出来ます。
ストレスから解放されて、ナチュラルな自分で生きることができれば、やりたいことやなりたい自分にポジティブに向かっていくことができるでしょう。トランス状態になることは決して難しいことではありませんので、興味のあるかたはぜひ実践して、毎日の生活を実りあるものにチェンジしていきましょう。