卵から生まれたばかりの幼虫は、ほかの種類の幼虫たちと大きさはあまりかわりません。しかし、脱皮を繰り返すうちにだんだんど大きくなっていきます。脱皮をするたびに外見がかなり大胆に変わるので、成長の段階によっては別の種類と見間違ってしまうこともあるかもしれません。
最終的に体長は10cmほどの大きさになるヨナグニサンの幼虫
繭にこもる直前には、体長は10センチほどのビッグサイズに。成虫の体長は5センチほどですが、幼虫の段階では長さも幅も大きいコロコロとした見た目に変わっていきます。大きな体に育つためにはたくさんの栄養がを必要とするはず。もちろんヨナグニサンも例に漏れず、モリモリ葉っぱを食べてぐんぐん成長します。
ヨナグニサンの幼虫の天敵は寄生蜂!草地にいると寄生されやすい?
10センチ近い大きな体を持っていますが、戦闘能力は高くありません。そのため、他の虫の幼虫に卵を植え付けて育てるコマユバチなどに寄生されてしまうこともしばしば。特に草地で生活している幼虫は、高確率で蜂のターゲットになってしまいます。
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ヨナグニサンは短命!どうして長生きできないのか
大きいのだから、外敵も少なく自由に餌場を確保できのびのび長生きしそう、と思う方もいるかと思いますが、実はとっても短命です。セミは長い時間を幼虫として過ごすため、成虫の寿命は非常に短いなど納得できる理由付がありますが、何故ヨナグニサンは長く生きることができないのでしょうか。
ヨナグニサンの寿命は長くても1週間ほど
なんと、その命の猶予はわずか1週間程度しかありません。その間に、パートナーを探して交尾、産卵を行わなければならないという超ハードスケジュールな生き方をしています。個体数も決して多くはないため、異性を選り好みしている余裕はなさそうです。
成虫になると口が退化するため食事ができなくなる
ヨナグニサンが長生きできない理由は、ずばり「食事ができないから」なのです。幼虫から成虫へ育つ過程で口は退化してしまい、繭から出てくることには完全に失われています。そのため、幼虫の頃に蓄えておいた栄養しか消費できません。
蛹から成虫になるだけでも非常にエネルギーを使うため、成虫になる頃にはほとんど体内には栄養が残されていません。非常に近くで撮影された動画に映っている姿の、中でも頭に注目すると、つるっとしていて幼虫の頃あった口部がなくなっているのが判ると思います。
大きさ自慢はヨナグニサンだけじゃない?シンジュサン
ほかにも体格自慢の蛾で日本国内に生息している種類があります。それは、シンジュサンという種類の蛾で、「シンジュ」というのは真珠ではなく、神樹と書きます。これはニワウルシの別名で、名前の通り幼虫はその葉を食べて育ちます。
体長10センチを超えるシンジュサン
シンジュサンは、ヤママユガ科に属する大型の蛾です。翅を広げると15センチほどのサイズになり、蛾の中ではかなり大型の種類になります。翅は薄茶色をベースにしたシンプルなカラーリングですが、黄色い三日月形の模様がアクセントになっています。また、ルーツになっているヤママユガについては、こちらの記事で紹介しています。
幼虫はとってもカラフル!
成虫の姿は非常にシンプルなカラーリングであるシンジュサンですが、幼虫の時代はとってもカラフルです。鮮やかな黄緑色をベースにした体に、先端が水色になっているトゲが生えています。また、足の先っぽは黄色と水色のツートンカラーになっていて、とってもユニークな姿をしています。
ヨナグニサンの飼育はできない?絶滅してしまう可能性も?
小動物よりも大きい虫好姿に魅了された虫好きな方なら飼育して触れ合ってみたい!と思う方もいるはず。しかし、それは叶わぬ夢。実は、ヨナグニサンは準絶滅危惧種にも指定されている貴重な生物なのです。
沖縄県指定の天然記念物となったヨナグニサン
1985年には、国内唯一の生息地である沖縄県で天然記念物に指定されています。そのため、捕獲することはもちろんですが、特別な許可がない限りは飼育することも禁止されています。海外では、地域によっては養蚕や観光名物としての目的で飼育されていることがあります。
見た目の美しさから乱獲?準絶滅危惧種にも指定された
大きさもさることながら、美しい翅の模様を持つヨナグニサンはとっても魅力的です。そのため、昆虫が好きな収集家や、それらをターゲットにした販売を目的とするハンターによって乱獲されてしまいます。地面に落ちたら飛び上がれないなど、残念ながらその捕獲はとっても容易です。
個体数が減っていき、種の存続が危ぶまれたため、環境省が管理するレッドリストに準絶滅危惧種として登録されています。人間のエゴで、その堂々とした姿が見られなくなるのは、何としても阻止したいところです。
ヨナグニサンの標本であればネットで売られている場合も
その姿を楽しみたいという方に朗報ですが、標本としてなら手元に置くことができる可能性もあります。その際は、通販などで出回っている海外産の標本を購入するか、天然記念物やレッドリスト登録前に作成されたものを購入することになります。
ヨナグニサンについて詳しく知りたいならアヤミハビル館へ
希少な存在であるヨナグニサンですが、与那国島にあるアヤミハビル館へ行けばその姿を見ることが出来ます。与那国方言でのヨナグニサンの名を冠するこの施設では、ヨナグニサン以外にも島独特の珍しい動植物を身近に感じることができるでしょう。
ヨナグニサンの生態が見られる!与那国島にあるアヤミハビル館
アヤミハビル館は、与那国空港の近くにある展示施設です。施設内では、生きているヨナグニサンを飼育しており、時期によっては葉っぱをモリモリ食べる元気な幼虫の姿を見ることもできます。入館料も比較的安く、気軽に立ち寄ることができます。
また、施設の近くには散歩コースも用意されており、島の天然の自然を観察することができます。与那国島独特の植物や生き物を見ることができ、島の人々との共生についても知ることができ、とても勉強になります。
アヤミハビル館にはヨナグニサンの繭でできた着物が贈られた
施設内には、ヨナグニサンの繭で編まれた貴重な着物が展示されています。この着物を織るのに、なんとヨナグニサンの繭が1000個以上も使われているそうです。製作にかかった期間はなんと4年。京都に住んでいる職人さんによって作られました。
もちろん日本国内でのヨナグニサンの捕獲は違法ですので、比較的生息数の多い台湾で採集された繭が使われています。1990年代には、ヨナグニサンの繭からテーブルクロスが作られましたが、それ以来の反物制作となるそうです。
モスラのモデルとなったヨナグニサン!美しく貴重な蛾
大きな翅と綺麗な模様を持つヨナグニサン。その堂々とした姿からは想像できないほど、成虫になってからの寿命が非常に短いなど、儚い側面も持っています。キャラクターデザインにも使用されるほど、人々を魅了する悠々とした蛾です。
現在では絶滅が危惧されているほど数を減らしており、その姿を見る機会は少ないかもしれません。いつの未来か、与那国島の美しい自然の中で飛び回る姿が、より気軽にみられるようになると良いですね。